【第二章】第十五部分
「話?いったい何の話だ?」
「は、話って言ったら、ご、ごほん。ごほんじゃない、日本昔話のことよ。」
「日本昔話?こんなところでか?」
「なんでもないわ。むしろ今からするのは世界未来話よ。」
「なんだそりゃ。」
「いいから黙って聞きなさいよ。残された時間があまりないんだから。ア、アタシは彫り物背中のことを、みらい、みらい、あるところにおじいさんと孫娘がいて、おじいさんは山にシバかれに、孫娘はカワイイ系で、ソンタクしていたのよ。」
「サッパリわからない話だな。」
「ちょ、ちょっと待ってよ。今、話の構成を考えてるんだから。」
智流美は自分の頬を叩いて、気合いを入れた。
「よし。じゃあ、ちゃんと言うわよ。アタシは、彫り物背中のことが、す、スキヤの牛丼よ!」
「ここで牛丼の宣伝か?俺はヨシノヤ派だが。」
「違うわよ!アタシは彫り物背中のことが、す、す、すき」
「隙間風ヲ吹カシニ、ヤッテキマシタ!」
「その声は、エロザ⁉どうして戻ってきたのよ。」
そこにエロザがはいってきた。
「イマハ、デート権利ヲ行使シマセン。立札ニ書イテアリマシタヨウニ、ジャマシタイダケデス。コノママデハ風邪ヲヒキマス。ソノ寝袋デハ寒イデス。」
「せっかく用意した寝袋なのよ。重たいのにずっと持ってきたアタシの努力をどうしてくれるのよ。」
智流美のクレームをスルーして、エロザは慣れた手付きでテントを張り始めた。
エロザは、作業しながら、テント張り音頭を歌っていた。
「テント、テント、テントニ針デハ情ケナイ♪」
エロザはチラリと玲駆を見た。
玲駆は申しわけなさそうに、下を向いた。
喪失感を漂わせている玲駆の様子を確認した智流美。
「針なの?針なの?細いの?」
智流美は大いに焦って、連呼し、尾張に迫った。
「針じゃない、ハンマーだ!」
毅然とした態度で主張した尾張。
「良かったあ!」「良かったデス!」
ハイタッチして喜ぶ智流美とエロザ。趣旨が変わっていた。
『ぐぐぐぐぐ。』
「あれ?からだがおかしくなってきたわ。洞窟にいて、しかも今は夜だし。こ、これは賞味期限が来たんだわ!ごめんね。彫り物背中!あんたも一緒にここから逃げるわよ!」
智流美は大慌てで、エロザを引き連れて、瞬く間に学校を飛び出した。
「いったい、何だったんだ今のは。美散のヤツ、からだが大きくなったよう見えたけど、きっと気のせいだよな。」
結局、夜のテント張りは成就しなかった。めでたし、めでたし?
校庭には大きな足跡が残ったが、何の穴なのか、誰にもわからなかった。




