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【第二章】第十四部分

しばらく沈黙が続いたが、智流美が顔をわずかに上げた。

「じゃ、じゃあ、今度もじゃんけんで決める?」

 エロザはすっくと顔を上げて、しっかりと玲駆の目を見た後に、智流美の顔に視線を合わせた。

「ワタクシハ、先程ジャンケンニ敗北シマシタ。二度ハ、ヤリマセン。今日ノ所ハ勝チヲ譲リマス。一日ニ二度モ負ケタクナイデスカラ。」

 エロザがそう発言すると、岩の地面に穴が開いて、彼女はそこに落ちて行った。

「ウソ?アタシが勝ったの?」

 まさにキツネにつままれたような拍子抜けの表情の智流美。

エロザが消えた後には一枚のメモが残されていた。

『ワタクシハ、次回デート権利ヲ発行スルコトヲ条件ニ、イッタン引キマス。』と書かれていた。

「なによ、これ。自分で勝手に発行したものなんて、無効もいいとこよ。」

洞穴を出ると学校の校庭。どこがどう繋がっているのかはわからない。空には星が出ていた。

いきなり二人きりになり、賞味期限のこともあり、智流美は動揺していた。ふたりきりの場合、ひとりの緊張がもうひとりに伝わるのは魔法ではなく、ごくありふれた現象である。

『ピピピ。』

「きゃあ!」

「うわわわ!美散、落ち着け。携帯が鳴っただけだろう。」

「ほ、ホントだわ。ごめんなさい。」

「学校からのメールだわ。なになに、『今日はテント宿泊を許可する』とのこと。ふむふむ、そういうことね。・・・。えええ~。」

学校と言っても校庭であり、ふたりはベンチに座ってバツの悪いフンイキで過ごしていた。

「こうして星空を眺めるのは子供のとき以来かなあ。」

心なしか目を細めて玲駆が言った。

「そうねえ。」

美散の記憶を共有している智流美は、懐かしさを感じていた。

懐かしさでいっぱいになるふたり。暗い中ではあったが、自分の胸元に玲駆の視線を感じた。制服の胸元がはだけていたのである。

「きゃあ!」

慌てて胸を隠した智流美。しかし智流美はうれしそうだった。玲駆が自分に興味を持ってるということがわかったからである。

「もっと胸があればいいのに、とか思ったんでしょ?」

「い、いや、別にそんなこと、思わないでもないかな。あはは。」

「おもっいきり思考してるじゃないの!バカバカ。」

軽く玲駆の胸を叩いた智流美。力を入れると大変なことになるという理性はしっかりと保っていた。

「こうなったら、今日告白してやるわ。それが美散からのミッションだし。・・・でも仮に受け入れられたら、アタシはいったいどうなるのかしら。あれ?アタシがコクると、得するのは美散よね。うまく行けば、玲駆は美散と付き合うことになる。それでいいんだっけ?じゃあ、そのあとアタシはいったいどうなるんだろう。ま、いいっか。アタシの告白を彫り物背中が、まともに受け止めるかどうかもわからないし。」

智流美は疑問を持ちながらも、告白の決意をして、玲駆の横顔を見た。幸い、夜の学校だから、周りには人はいない。ベンチにふたりだけで座っている状況から、玲駆の横顔に、5秒ほど声という空気をぶつければよい。

「彫り物背中。ちょ、ちょっと話があるんだけど。」


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