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第5話 変身願望! 老魔道士でも少女になって恋がしたい!

 前回のあらすじ。

 死後の黒歴史消去を考えておきましょう。




「なぜ生かした! 殺せ! 私を殺せぇ!!」

「落ち着きましょう! 大丈夫ですから! 誰にも言いませんから!」



 まさか研究していたことが女体化の方法だとは思わなかった。

 研究室のある階がそこまで高くなかったので死ぬ事はなかったが、顔を真っ赤にし暴れるザルクを何とかもとの部屋まで連れてくる。



「殺せぇ! 出なければ殺してやる!」



 目を血走らせ暴れるさまは狂人のそれだ。たしかにこんな事を大真面目にやっていたなんて知られれば自殺モノかもしれない。



「大丈夫です! 俺もそんな妄想した事ありますから!」

「……ホントか? 馬鹿げてる、恥ずかしいなどと言わないのか?」


「はい! 可愛い女の子になってあんなことやこんな事するなんて男なら誰でも考えますよ!」


「えぇ…………」

「それは、え、きも」


 暴れる彼の手を取り強く同意するとすがるような目で見てくる。

 さらに重ねて同調すると落ち着きを取り戻してくれた。

 そのかわり周りの目がとても冷たい。



「誰にも言いませんよ、でも素晴らしい研究だと思います。少なくとも俺は貴方の賛同者です」

「おお……そうか、こんなこと誰にも言えなかった。おなさき頃から今の今まで誰とも相談などできなかった……!」


「え、ちょっとなにこれ? こわいんだけど」

「駄目ですよ! 聞かれたらまた暴れちゃいます!」

「かんどう?」



 ザルクの目を見て話すと、彼は涙を浮かべながら少しずつ語り始めた。

 非常に権威のある家の生まれである彼は幼少の時からある疑問を持っていた。



「私は見ての通り男だが。だが女性に憧れを持っていたのだ」



 可愛い服、華やかな振る舞い、愛らしい姿。その全てが彼の心を癒やすとともに蝕んでいた。

 自らの姿を見るたびに理想との違いに思い悩み。そんな葛藤、疑問を話すことは誰にもできずにいたため、極力人と話すことなく学問と魔術に傾倒していったという。



「それだけでは勿論金も尽きる。そのため他の研究をしそれによって生計を立てているうちに王国抱えの魔道士になっていた」



 しかし国随一の魔道士となっても悲願は達成することができず、研究に没頭するあまり老体を省みない日々が続きとうとう過労で亡くなってしまったみたいだ。



「そんなことで……」

「しっ! 本人は大真面目なのよ!」


「人生をかけてまで叶うことはなかった。友も作らず家族も作らず私は何をしていたのだろうな」


「おちこまないで。」



 ありがとう、お嬢さん。

 そう言う彼の顔には慈愛に満ちた顔に羨望が混ざっている。

 見果てぬ夢。己の理想がベルはすでに手に入れており、彼女に慰められることはとても辛いことなのかもしれない。



「というかさ、マサルなら可能なんじゃない?」

「あ、そういえば何でもできますよね。マサルさん! 叶えてあげましょう!」



 2人がそう言うとザルクはどういう事だと俺の顔を見てくる。


 スキルを確認したところ、どうやら『ロキの変態』という姿形を自由に変えるものがあった。

 つまりは可能であるということだが、王には原因究明を頼まれている。こんなことしてもいいのだろうか?



「できるのか! できるのか! さぁはやく! やらぬのならばもう一度身を投げるぞ!」

「待ってください! 落ち着きましょう!」



 できるとわかった途端老人とは思えない力で俺を掴み揺さぶってくる。

 その形相は先程よりも狂気に満ちていて、自分の命を盾に脅す行為はやらねば、確実にするぞ。という凄みがあった。



「あの、王様から頼まれているんですけど、生きているということでまずあっていただけませんか?」

「そんなことはどうでもいいのだ!! さぁ早く! 今すぐにだぁ!」


「やばいわよ、もうこれ止まんないわよ」

「こ、こわい。」



 もう誰にも彼を止められない、命を落とす程没頭した女体化の夢が目の前にある以上それ以外のものはうつらなかったのだ。

 このまま手は収集がつかないのでまずは夢を叶えてやることにした。



「わかりました。でもその前に希望の姿はありますか? 何でもできますけど」

「ん? 今なんでもと言ったか?」



 そう言うと山積みになった本から1冊の黄ばんだ年季の入った本を取り出し中を見せつけてきた。



 髪は茶色でロング。

 長いまつげに赤と緑の碧眼。

 愛らしくもあどけない顔でいい香りがする。

 年は10代前半の華奢でありながら胸がそこそこある美少女。と書かれてあり、簡単な絵が書き込まれておる。右下に名前はジェネイドがいい!! と書いてあった。



「「「うわぁ……」」」



 さすがに生涯をかけただけあって熱の入れようが凄まじく、口調から交友関係、家族、生まれ、将来の結婚相手から息子、娘、果には孫のことまで書いてあり……



「やばい」

「すごい。」

「なにもいえません」

「えー、じゃあいきますよ」



 何も考えないほうがいいだろう。

 そうに違いない。


 これ以上見ていると闇に引きずり込まれそうなので直ぐに理想の少女にしてあげることにした。






「はい、できましたよ。ついでに服はサービスですから」


「これが、私……」



 ザルク、いやジェネイドは姿見の前に立ち食い入るように新しい自分を見つめている。




「ジェネイドさん、おめでとうございます」

「いいとおもう。」

「夢がかなってよかったですね!」


「それより何て報告すればいいのよ」



 可愛らしくポーズを取り、様々な表情をとり少女の姿を堪能している彼女はよしとして。この次どうすればいいのだろうか? そう考えていると。



「ジェネイドにおまかせですぅ!」


 

 そう言って設定資料集その25の135頁。もし研究が成功し王国で変身に成功した場合を開き自信満々に見せてきた。


****************



「……というわけでして。 これからザルクさんに変わりジェイドちゃんがこれからの王国魔道士を引き継ぐことになりました」


「うーむ、なんとも度し難い出来事ではあるが……夢がかなったのだ。それで良しとしようかのう?」



 本人の希望としてはザルクは死んだことにし、その隠し子であるジェネイドという天才美少女魔道士が跡を継ぐという遺言からその通りにするということに。


 遺言書も抜かりなく用意されており、悲しむ者もいたが愛らしく人当たりのいい彼女のおかげで簡単に受け入れてもらえた。



「わざわざ我に話さぬとも良かったのではないか?」

「王には随分お世話になりましたからね! これからもこのジェネイド、めいいっぱい働きますぅ!」



 かくして事件は思いもよらぬ方法で解決? し、1人の夢に破れた男を救うことができ、随分と寿命を増やすことができたが、更にフラグを作ることになるとは思いもしないのだ。



「お兄ちゃん! ありがとね!」




 最強の男、マサルさん

 

 残り寿命、25年



 王国抱えの魔道士、ザルク


 ジェネイドとして新しい人生を始めた。

 コンプレックスや己の異常性に引け目を完全になくしたため人と積極的に察することができ後に男だらけの研究者の中でひと悶着を起こしす。


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