第11話 記憶消失 お前はだれだ
前回のあらすじ。
てめーは俺を怒らせた。
「次アホなこと言い出したらホントに灰にしてやるからな?」
「サー! イエッサー!」
下手に死なれても困るので庭の日陰には置いてやることにするが、これ以上何かやらかすのなら容赦なく灰にしてやると脅すと敬礼しながら答えた。
「サー! 発言の許可を求めます!」
「そのテンションもウザいぞ? なんだ、言ってみろ」
「ヴァンパイア種族全体が今食糧難に陥っているので助けてほしいなーって」
「俺には関係ないだろ」
「一族総ての危機なんですって! 魔王様が敗れてから勇者が四天王を討伐しようとアチコチで魔物刈りをしていてろくに食事も取れないんです!」
「いいことじゃないか」
「………。」
ベルがジッとこちらを見つめてくるのが気になるがそんな事はとう仕様もないのだ。
そもそもヴァンパイアなど人間のみを餌として生きる種族はどうしても殺し殺されの関係になってしまう。
こいつらの為に人間を生贄にする訳にはいかないし、助ける義務もない、むしろ人間の俺からしたらいなくなってくれたほうがいい。
「ほらベル、行くぞ」
「…………。」
今から牧場のおじさんの手伝いをしなければいけないのだ、リサを放って行こうとすると、ベルは動こうとせずジッとこちらを見てくる。
「魔王様! 私の味方をしてくれるんですね!」
「………!」
「はぁ、わかったよ、考えておいてやるからまってろ! 今はやる事があるから後でな!」
どうも俺はベルに弱い、考えておいてやるとはいったものの後で適当に誤魔化して帰ってもらえばいいだろう、喜び抱き合う2人を置いておじさんのもとに向かった。
「すまないねマサルくん、うちの息子共は冒険者になんかなって仕事を手伝ってくれないから人手が足りなくて困っちゃうよ」
「いえいえ、俺が手伝いたいだけですから、それに息子さんたちもそのうち家業のほうが大事って気付いてくれますよ」
「そうだといいんだけどねぇ…… ありがと! またよろしく頼むよ」
いい牧場なんだとは思うけど若者からしたら毎日動物の世話をして生きていくのは嫌なんだろうか?
派手な事を夢見て遠くに行ってしまうなんてよくある話だが、俺からしたら仕事が増えてむしろありがたいからいいんだけどな。
「ユリヤか、おーい! 何やってんだー?」
牧場からの帰り道、ユリヤが見知らぬ子供と一緒に周りをキョロキョロと何かを探しているようだったので声をかけてみた。
「あ、マサルさん丁度良かったです。このこが探しものをしているらしくて」
そう言って近づいくるユリヤの手には可愛らしい少年の手が繋がれており、男の子は困ったような顔をしていた。
「おお、そうなのかじゃあお兄ちゃんも一緒に探してやるよ! 何を探してるんだ?」
しゃがんで男の子の目線にあわせて喋る、安心させてやるための手段だ。
しかしこの少年は俺が怖かったのかユリヤの背に隠れてしまった。
「彼イモル君ていう名前なんですけど、怖がりやさんみたいでワタシもやっと話を聞けたところなんです」
「そうなのか、大丈夫だよ俺はおねぇちゃんのお友達だからね、何を探しているんだい?」
「……あっち」
イモルのいう男の子に再び話しかけると路地裏の方を指差した。
「ん? あそこか? 俺見てくるよ!」
何を探しているのかは答えてくれないがあの路地裏の方にあるらしい、きっと人見知りで上手く話せないのだろうから信用さしてやるためにいっちょ一肌脱いでやりますか!
「特になにも見当たらないなぁ……」
日陰になっていて薄暗い路地裏にはいつもと変わった様子はみあたらない。
「ホントにこっちか? 何にも見つからないぞー、あれ?」
さっきまでいたはずの2人がいなくなっていた。
違う場所だったのかもしれない、どこに行ったのだろうとユリヤ達を探していると街の広場にカヤノと一緒にいるのが見えた。
「おーい、勝手においてくなんて酷いぜ」
「すいません、イモル君が急に走り出しちゃって」
「探しものなんですって? 私も丁度仕事終わりだから一緒に手伝うわよ」
相変わらず俺が怖いのか今度はカヤノの背中に隠れてしまった。
「あら、性根の悪さのせいじゃないの? だめよ、子供ってそういうのわかるんだから」
「お前に言われたくねーよ、それで何を探してるんだ? あっちには何もなかったぞ」
「……あっち」
今度は広場の噴水の方を指差したがやはり何を探しているかは言わない男の子に不信感を覚えた。
「何を探してるのか言ってほしいんだけど」
「いいから探してきなさいよ、ここで見ててあげるから」
「ごめんなさい、ずっとくっついてて離れてくれないのでお願いします」
「冷た! ったく、こんな所に何があるっていうんだよ」
言われたままに探してみるもののずぶ濡れになるばかりでなにも見つからない。
そもそも何を探しているかもわからないのに見つかるはずもない。
「おーい! なんにもねーぞ!」
何もなかったと呼びかけたが3人はコチラを一瞥するだけで俺を無視して歩き去ろうとする。
「おい! 俺がずぶ濡れにになってまで探したっていうのに何無視してんだよ!」
「え? ワタシ達ですか?」
「アンタ誰よ? 暑いからって噴水に入ったらそりゃビショビショになるでしょ」
「え?」
2人は俺のことなど知らないと言わんばかりの態度で不審者を見る目で見てくる。
「流石に冗談がすぎるぞ、ソイツの探し物してんのにくだらない真似やめろよ」
「すいません、本当に誰ですか? この街の人じゃないですよね?」
「新手のナンパ? 鬱陶しいからやめてよね」
「まあまあ、2人が可愛いからナンパもしたくなりますよ、でも僕の仲間なんでそういう事はやめてくださいね、じゃあこれで」
まるで意味がわからない。
たちの悪いイタズラかと思ったが2人はまるで俺のことを知らないという、しかもイモルという少年は仲間などと言い、それに特に否定することなく3人で楽しげにどこかに行ってしまった。
俺は呆然として遠ざかっていく背中を見ていることしかできなかった。




