第5話 無限大食! 地元の食べ放題は永久出禁!
前回のあらすじ。
魔王生きてた。
「魔王の幼体?」
魔王は勇者に討ち取られたんじゃなかったのか?
「いったい何が目的よ!」
「……!」
カヤノとベルが謎の構えを取ってお互いを睨み付けながら火花を散らしている。
一瞬何を馬鹿なことを、と思ったがこの雰囲気からして敵対し合う何かであるのは確からしい。
「そういえば昔おじいちゃんに、魔王は死んでもいずれ蘇り幾度となく魔物たちの王として君臨するって聞きたことがありますね」
「へー、そうなのか」
「そうよ! それにしても蘇るのが早やすぎるとは思うけどね! それにしても何でこんなとこにいるのよ、説明しなさい!」
「……!!」
ふわふわした緊張感の中、イキナリでかい男が現れてこの子を押し付けてきたこと、あとめちゃくちゃ食べること、それでユリヤが隠し持っていたエルフの菓子をすべて出したことを話した。
「え!? ちょっと何してるんですか!」
「いや、可愛かったもんで」
「大男って言えば魔王四天王の中に巨人族がいた気がするわ、それに大食いって言ったら今回の魔王は『暴食』みたいね」
「…! ……!!」
ベルにチョークスリーパーをかけながら言うカヤノ、どうやら魔王対女神の試合は女神の勝ちらしい。
タップしギブアップをしたベルは急いで俺の後ろにしがみつき背中越しにカヤノの事を睨みつける。
「ふっ、魔王ごときが女神に勝とうなんて1兆年早いわ!」
「…………。」
「おお、よしよし、怖い人にいじめられたなぁ」
「とても魔王には見えませんね、ところで今回は『暴食』て言うのはどういう意味ですか?」
「魔王は人間の7つの大罪が具現化した存在でその時々よって性質の違う魔王になるのよ、『暴食』の魔王はあらゆる物を食いつくし際限なく力を増す一番厄介な奴よ、最終的に世界を飲み込む存在でね、前任の神はコイツのせいで辞任する事になったのよ!」
辞任て、神にも責任問題やらなんやらに厳しいんだな。
しかしやけに食べると思ったらそんな事情があったのか、話を聞く限り今すぐ倒さなきゃいけない存在だが。
「ワルファの郷のお土産なんですけど、よかったらどうですか?」
「………!」
ユリヤに餌付けをされている彼女の姿はとても恐ろしい魔王には見えない。
どちらかと言えばそれを睨みつけているカヤノの方が恐ろしい顔をしていてよっぽど魔王に相応しく見える。
「あんまり餌をやっちゃ駄目よ! コイツは食べるだけ力を増すんだから! 今に大変なことになるわよ!」
確かにカヤノの言うとおりならいずれ世界の敵になるのだろう、しかしベルという名前をつけて、一緒に食事もした仲だ、どうにもこの子を殺してしまうなんて考えられない。
というか。
『世界の監視』
生き物を殺すと差別なく寿命が減る。
残酷な殺し方、必要とする者が多いほど相応の覚悟をしなければならない。
「ここで倒すとなると俺の寿命じゃ足りない可能性があるんだよなぁ」
彼女は魔王だ、きっと魔族総ての怒りを飼うかもしれない、それに四天王らしき者が俺に預けてきたのは何かしらの理由があるのかもしれない。
「うっ、確かにそれは不味いわね」
「…………。」
「まだ欲しいですか?」
「取り返しがつかないことになる前に俺がちゃんと責任を取るよ、だからベルは置いといてくれないか?」
「う〜ん、マサルの力ならどうなっても負けることはないだろうし……仕方ないわ、その代わりもしもの時は覚悟決めなさい、絶対に蘇らないように封印するからね」
そのつもりだ、と返事をするとカヤノは優しい顔になり、私がいる限りそんな事にはさせないけどね、と柔らかく微笑んでくれた。
「つまりはワタシ達に新しい仲間が出来たってことですよね! よろしくお願いします!」
「そうだな、ベル、お前は俺達の仲間だ、よろしくな!」
「…………!」
「元ニートに封印されてたエルフと美しい女神の私達の仲間になるくらいですもの、魔王くらいでないと勤まらないわね!」
魔王と聞いたとき、一時はどうなるかと思ったが、2人は快く受け入れてくれた。
夜も遅いということでどうにか話もまとまったことだし全員寝ることにした。
明日からは4人のパーティだ。
きっとより賑やかになるだろう、これからも楽しく騒がしい日常が続くだろう、そう思い眠りについた。
だが今はまだ、これから待ち受ける試練のことなど俺達は知る由もなかったのだ。
とても残酷な現実、最強の俺でもどうにもできない。
莫大な食費の事を!
魔王の幼体、ベル
スキル、『捕食』
この世すべてを喰らう『暴食』の魔王。
可愛らしい見た目に反して掛かる食費はまったく可愛くないぞ!




