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清々しい朝です

 幼稚園時代から変わらず、中学生の今も登校するときは三人一緒というのが日課になっている。


もちろん、健太に朝練があるときは別としてだが。


 そして、帰宅時はそれなりに中学生としての付き合いもあり、別行動になりつつある。


 それだけ一緒の時間が多いというのに、帰宅すればパソコンを通して遊んでいるのだから、どこまでも仲の良い三人だ。


 季節は徐々に移り、テレビでは梅雨が明けそうだとか、明けていたとか天気予報のお姉さんが話していた。


 しかし、彼らにとっては梅雨が明けようと暮れようと、そんなことより夏休みが近づいていることの方が大切なのだ。




「今年の夏は、やっぱり海だよなー」




 体育会系の健太は、夏は海と決まっているようだ。




「お前なぁ、そろそろ受験生としての分別を持って図書館とかって選択肢はないのか?」




 と言うのは、決まりきって重吾である。




「オレは、スポーツ推薦だから勉強はいらないのさ」




 これまた、安易な発想で呆れる。




「スポーツ推薦とか言いながら、朝連サボってるのは知ってるぞ。勉強しないと高校にいけないぞ」




 確かな話ではあるが、中学二年生から受験勉強をしているのも凄いことだ。




「重吾。お前みたいのが、嫌われるんだよ」


「オレには、嫌われるような要素が無いと思うが」


「赤ん坊の時から、イケ好かないヤツだと思っていたが、本当にイケ好かないヤツだな」




 とは言うものの、そう言えるのだから素晴らしい関係である。




「それにしても暑いなぁ」


「重吾は勉強と称してクーラーの中にいるから暑さに弱いんだよ」




 いや、確かに暑い。




「オレなんか、毎日運動してるから、このくらいの暑さはなんともない!」




 変なところで威張っている。




「お前は小さい頃からスポーツバカだからなぁ」




 団地の公園には木が生い茂り、小学生が登校のために団子になっている。


 そのそばで、カバンを肩にかけた中学生が二人、朝から話し込んでいるのだ。


 傍から見たら、話し込んでいないでさっさと登校すればよいと思うだろう。




「俺たちも小さい頃は、ああやって蜜芽が来るのを待ってたよなぁ」


「今も相変わらず、我らが姫を待ち続けるナイトということか」


「健太は蜜芽のナイトだったのか?」


「そういうつもりはないが、一応アイツも女だから。そのくらいのことは言ってやらないと、後が怖い」


「アイツは幼稚園時代から、短気で怖かったからなぁ」


「重吾もそう思ってたのか? 気が合うなぁ」




 どうやら、二人とも蜜芽の怖さが身に沁みているようだ。




「それにしても、今日はやたらと遅くないか?」




 重吾が公園の時計に目を向けると、そろそろ登校しないとヤバイ時間帯に差し掛かっている。




「姫はおしゃれの真っ最中か?」



「トイレの真っ最中じゃないのか?」




 姫でもトイレには入るのだから、間違ってはいないだろうが、そこは伏せておいて欲しい。




「しょうがないな、そろそろ行こうか」


「約束に遅れるのは、女性の特権だと父ちゃんが言ってたな」


「健太のところは、おばさんが強いからなぁ」




 重吾の言う通りで、健太の父は母に頭が上がらないようだ。




「父ちゃんが言うには、女は立てて扱ったほうが、家庭が円満になるそうだ。だから、父ちゃんは母ちゃんに文句を言わないんだとさ。オレは父ちゃんを見てると、結婚だけはしたくないと思うぞ」




 生意気なコメントをする健太だが、重吾も結構同意権のようで、妙に神妙に頷いている。


 結婚談義をしながら、小学生が並んで登校する後を追うように、二人も歩き出した。


 こんなとき、隣同士でも呼びに行かないのだから、冷たいように感じるだろう。だが、これもまた経験からの行動なのだ。


 なぜなら、小学生のときに、遅いからと呼びに行ったら、下痢に見舞われトイレにこもっていた蜜芽に怒鳴られ、後日酷い罵倒を受けたのだ。


 それは、『乙女のトイレを邪魔した!』というものだった。


 優しさから呼びに行ったにもかかわらず、そのような罵倒を浴びせられ、数日間一言も口をきいてもらえなかったという苦い経験をした二人は、姫の逆鱗げきりんに触れないことこそが平和であると悟ったのだった。


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