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蜜芽の残像思念(2)

 じっと空を見つめて、気を集中させる重吾。


 重吾の体のラインを縁取るように、白く透明なもやのようなものが見えた。健太は自分の目がおかしいのかと、拳で目をこすってみた。


 それでも重吾の体を覆う白いもやは消えることはなかった。




(これって、重吾のオーラか……)




 今まで人のオーラを見たことがなかっただけに、やたら感動しまくる健太である。


 できることなら、今重吾にこの不思議な体験を語りたいところだが、それをしたら殴られることは必須であろう。




(後でじっくりと話してきかせてやろうっと)




 重吾が必死に気を集中させればさせるほど、重吾のオーラが光を放つ。


 それを見る健太の楽しそうな顔。




「分かった」




 ふっと肩の力を抜くと重吾が静かに言った。




「分かったって、何が分かったんだよ」


「蜜芽は六時半過ぎにこの団地を出て、駅の方へと歩いて行った。やっぱり、カノンに会うためみたいだな」


「よし! その残像思念を追いかけて行こう」


「うん。こっちだ」




 二人は足早に歩き出した。


 夏が近づいている今、夕闇が訪れるまでにはまだ余裕がある。


 蜜芽は遅い夕暮れによって、不安を感じることなく駅へと進んで行ったようだ。


 歩いていると、じっとりと汗が流れる。


 真夏ほどではないにせよ、汗が流れるその感触は好きになれない。


 商店街を通り抜け、駅前のロータリーに辿り着くと、重吾が歩みを止めた。




「ここで蜜芽はカノンを待ってたんだ」


「まだカノンは来てなかったのか」


「あぁ、蜜芽としてはカノンがオレとのことを相談してきて、かなり楽しんでいるようだ」


「何が楽しいんだ?」


「さぁな、そこまでは分からないな。ピンクの車が来た」


「それはなんだ? カノンが親と来たのか?」


「いや……違……う。下りてきたのは……男だ。二十代みたいだな。あ! 蜜芽が無理やり連れて行かれる」


「なんだよ。どうなってるんだよ」




 重吾の顔が険しくなり、青ざめていくのが分かる。




「蜜芽が抵抗してる。人と待ち合わせてるからって、相手の手を振りほどこうとしてる。……ダメだ。相手は笑いながら……笑いながら……」


「笑いながらなんだよ!」


「……カノンはオレだ……って」




 重吾が空を見つめ、健太が無言になる。




「蜜芽が車に乗せられた。車が走り出して……」




 重吾の呼吸が荒くなる。


 その場での蜜芽の恐怖に震える心が伝わってくるだけに、助けることのできない自分が歯痒いのだ。




「車に乗せられてどこに行ったんだ? 蜜芽の思念を追おう」




 健太が重吾の腕を取った。だが、重吾は全く動かなかった。




「ダメだよ健太。車のスピードには勝てないよ」


「どういうことだよ」




 重吾が首を左右に振りながら、肩の力を落とした。




「蜜芽の思念を追いかけることができないんだ。車のスピードにはついていけないんだよ。オレには、そこまでの力がないんだ」




 そう言われて、やっとどういうことなのか理解した健太もまた、がっくりとうなだれた。



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