6話 俺とギルドとリア充の匂い
ギルド登場です。
では、どうぞ。
「何なんだ?あの二人は・・・」
ヒロがつぶやく。
二人のヤクザがいなくなった市長室では、沈黙が渦巻いていた。
本当になんだったんだ・・・
「あの二人は市営ギルド『ドーテム』の人なんだよ。
男のほうがギルドマスターのブレイク。女のほうがイルだ」
市長が説明してくれる。
あのヤンキーがギルドマスターのギルドって・・・
そりゃあ信用できんわな・・・
ブレイクとイルか・・・覚えておこう。
「もっと儲かるクエストを回して欲しいらしい」
それで、市長に詰め寄っていたわけか。
ん?そういえば
「クエストの分配も市長がやっているんですか?」
俺はふと思った疑問を口にした。
「うん。基本的にはね。ギルドの能力と信用を考えて配分しているんだよ。
ギルドに直接依頼しに行く人もいるけど、ほとんどはこの中央役所に依頼しに来るんだよ」
「ふーん」
自分から聞いといてスルー。
市長は今日も中央役所の制服を着ている。
整えられた金髪、すべてが完璧な超美形。
微笑む顔は男の俺でもかっこいいと思ってしまう。
「ま、まあ。そんなことより行きますか?」
俺たちは市長室をあとにする。
あれ?なんか忘れてるような・・・
「どうせ俺なんて・・・ハゲてるさ・・・」
部屋の隅で小さくなっている変態を発見した。
そうだ。隊長を忘れていた。
さっき、ブレイクとイルに言われて落ち込んでたんだな。
仕方ない。慰めてやるか・・・!
「そんなに落ち込まないでください。いつものことじゃないですか」
「そ、そのドレスにあってますよ(笑)」
「お前ら・・・フォローする気ないだろぉっ!!」
細い路地を歩いていく。昨日と全く同じ道。
無人の倉庫が立ち並ぶ、さみしい区画。
昨日と違うのは雨が降っているところ。
そのせいもあって、余計に静かに感じる。
そういえばこの辺だったかな?昨日、ドン・ランと戦った場所。
似たような建物ばかりなのだが、なんとなく雰囲気でわかる。
少し歩くと、地面や壁に血痕がついている場所に来た。
ここだな・・・
昨日の出来事が鮮明に蘇ってくる。
命をかけた戦い。圧倒的な逆境から俺たちは逆転したのだった。
逆境超覚醒―――逆境になったとき、自分のステータス2倍。
この特別な力を使って、俺たちはドン・ランに勝利した。
俺たちは無言で血痕のあとを通り過ぎていく。
というより、さっきから会話は途絶えているのだが・・・
まぁ、ぼちぼち会話をしながら10分ほど歩いていく。
「ついたぜ」
完全復活?したキノシタが告げる。
コンクリート製の中央役所に似た、大きな建物。
ドアの横には看板が立ててあり、何やら文字が書かれている。
『市営ギルド ヴァルハラ』
普通だな。うん。何か期待した人がいましたらごめんなさい。
「入るか」
ヒロがドアノブに手をかける。
そしてドアノブを回して、手前に引っ張った。
ギィィィ
ドアが開く―――
「すべてのリア充に死をっっ!!」
「「「「すべてのリア充に裁きをっっ!!」」」
バタンッ
ヒロが反射的にドアを閉める。
「「何なんだあれはっ!」」
「・・・ヴァルハラのギルドメンバーだけど」
「いやいやいやっ!おかしいでしょっ!」
「なんか洗脳みたいなのがあってたし、みんな目が死んでたしっ!」
ギィィィ
キノシタがドアを開ける。
「「開けるなぁっ!」」
また、さっきのやつ―――
「キノシタさん!お帰りっす」
「あ!市長こんにちは」
「そっちの二人は依頼者ですか?」
普通のギルドの風景が広がっていた。
壁一面に張られたクエストの紙。
ロビーにはギルドメンバーと思われる人が多くいた。
コンクリートの無機質な空間だが、なんだか温かみのあるような感じがする。
奥のカウンターには中央役所の制服を着た男の人が二人で受付をしていた。
何だったんださっきのは・・・
きっと気のせいだよな。疲れていたんだろう。
「この二人は今日から覚醒部隊に入隊する、リューヤとヒロだ」
市長の説明に拍手が起こる。俺たちはステータスを開いた。
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リューヤ LV5
職業 勇者
年齢 17歳
性別 男
種族 人間
状態 普通
覚醒スキル 逆境超覚醒
HP 68/70
MP 26/26
FAT 56%
ATK 26(+5)
DEF 26(+10)
CLV 21
LCK 21
装備品
右手 銅の剣
左手
腹部 コンポジット・アーマー(上)
腰部 コンポジット・アーマー(下)
頭部
腕部 紅色籠手
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ヒロ LV5
職業 通常魔法使い(ノーマルマジシャン)
年齢 17歳
性別 男
種族 人間
状態 普通
覚醒スキル 逆境覚醒
HP 52/54
MP 31/31
FAT 51%
ATK 16(+1)
DEF 16(+3)
CLV 21
LCK 16
装備品
右手 木の棒
左手
腹部 白ローブ
腰部 布のズボン
頭部
腕部
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「「よろしくお願いします!」」
二人で頭を下げる。
みんなは拍手で迎えてくれた。
なんだ・・・結構いい人たちじゃないか!
「勇者・・・だと?」
「すげぇな」
「あの噂、本当だったんだ」
お、みんな言ってる。
現実世界にいた頃は平凡すぎて誰の注目を受けなかった俺が・・・
今は、みんなが注目してくれてる。その期待に応えなくちゃな!
その事実が俺を奮い立たせた。
「よし、じゃあ行こうか」
キノシタを先頭に俺たちはそのあとをついていく。
ロビーから廊下に出る。左右にはドアが付いた、長い廊下。
待機室か何かだろう。
キノシタはどんどん進んでいく。
その時、ロビーの方から声が聞こえてきた。
「あの茶髪の野郎、リア充の匂いがするぜ。気をつけろ」
「「「「了解」」」」
気のせい気のせい。何も聞こえなーい。
「すべての読者に感謝をっっ!」




