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Invasion of Hunger

ユノ・ヒカリ。

彼女は21シティの下町にある孤児院で暮らす孤児だった。


そこは堕ちたシンジョたちが集うサイバーパンク都市だ。

その日、ヒカリと親友のユミオラ――通称ユミは、まだ4歳だった。


空は灰色に曇り、街には小さな雨が降っていた。


「ねぇユミ、ちょっとお腹すいたね。何か食べられないかな?」


ヒカリがそう言うと、ユミは首を振った。


「ユミもお腹ぺこぺこ……でも、もうずっとご飯来てないよね」


二人はプレイルームを歩き回り、廊下をそっと覗いて誰かいないか探していた。


「ねぇユミ、ちょっとトイレ行ってくるね」


「うん、いいけど……早く戻ってきてね。一人は怖いから」


ヒカリはうなずいて、足早にトイレへ向かった。


便座に座ると、ふと考えが浮かぶ。


もし三日間何も食べなかったら、どうなるんだろう。


生きられるのだろうか。


本当はただ、家族が欲しい。安心して帰れる家が欲しい。


ヒカリは手を洗い、静かにトイレを出た。


プレイルームへ戻る途中、ヒカリはユミの姿を見つけた。


ユミは自分のスペックを使っていた。


正直、少しだけかっこいいと思ってしまった。


この世界には二種類のシンジョが存在する。


堕ちたシンジョと、獣のシンジョ。


ヒカリもユミも堕ちたシンジョだった。


生まれた瞬間にRNGによって能力が決まる世界。


それがスペックと呼ばれるものだ。


ヒカリのスペックは氷の欠片アイス・シャードを操る能力。


ユミのスペックはわずかな浮遊能力だった。


「ユミ、誰か見つかった? お腹もう限界なんだけど」


「ヒカリ……ダメだった。誰もいない……」


「もしかして今日、私たち死ぬのかな」


「そんなの嫌だよ。ねぇ、もう一回探しに行こう。食堂に行って誰かに聞いてみよう」


歩きながら、ヒカリは獣のシンジョについて考えていた。


彼らは人間の姿に化けることができる。


しかし本来の姿に戻れば、巨大な筋肉を持つ赤い怪物となる。


彼らはスペックを持たず、純粋なシンジョというエネルギーだけで戦う存在だ。


その力は圧倒的で、ほとんどの存在を凌駕している。


この世界では堕ちたシンジョが約30%。


残り70%は獣のシンジョが支配していた。


運が良ければ勝てる可能性はある。


だが堕ちたシンジョは変身できない。


スペックやHAXと呼ばれる能力で身を守るしかなかった。


この世界で人々が暮らすのは巨大都市21シティ。


ネオンが輝く美しい街だ。


しかしその外には巨大な壁があり、獣のシンジョの領域が広がっている。


その領域には支配する巨大な怪物がおり、四つの区画に分かれていると言われているが詳細は不明だ。


そこは絶対に行ってはいけない場所と教えられていた。


「ねぇ先生、ご飯まだですか? お腹すいて死にそうです」


ヒカリが幼い顔で訴えると、教師は淡々と答えた。


「順番が来れば食べられる。今は他の子供たちの番だ」


二人はプレイルームへ戻った。


「ヒカリ……今すぐ食べたいよ……」


ユミの目には涙が溜まっていた。


ヒカリも必死にこらえていたが、気づけば涙が落ちていた。


その時だった。


ドォン!


突然の爆音が響いた。


「ロックダウンだ! 逃げろ!」


教師の叫びが施設に響き、混乱が広がる。


ヒカリとユミは悲鳴を上げながら走り出した。


だが途中で教師に抱えられ、小さな物置へと押し込まれた。


泣き声が止まらない。


他の子供たちも恐怖で叫んでいた。


本気で死ぬかもしれないと思ったのは初めてだった。


どうやら獣のシンジョが二体、壁を突破して孤児院に侵入したらしい。


最悪の不運だった。


教師は電気を消し、静かにするよう指示した。


部屋の隅で身を寄せ合いながら、ヒカリはユミの頭を軽く叩いて落ち着かせた。


その時、窓が目に入った。


外へ続く小さな窓。


もしかしたらここから逃げられるかもしれない。


だが、自分にそれを壊す力はあるのか。


廊下の奥から足音が近づいてくる。


教師の目にも涙が浮かんでいた。


そして扉が大きく揺れた。


ユミが悲鳴を上げる。


扉がゆっくりと開いていく。


その先にそれがいた。


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