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第7話「決戦、海底要塞!」

「決戦、海底要塞!」



Mラス星人 水棲怪獣Bゴン



#プロローグ 八丈沖にて、くろしお



「島田、一回ピンを打ってみろ」


 一寸先も見えぬ漆黒の闇の中

計器類のわずかな明かりを除けば、正円をした舷窓から見えるのは前方に差す光の筋と雪のような白い粒だけである。

 海保の誇る深海調査潜水艇「くろしお」は、八丈島近海、深度200m付近の海底いわゆる大陸棚に着床しようとしていた。

可視光が届かぬこの深度では潜水艇前方に設置された探照灯の光のみが視界の拠り所になる。

 マリンスノウはそんな海底に見られる美しい光景であるが、くろしおの乗組員、艇長の黒崎と操縦士の島田にはそれを楽しむ余裕は無かった。


 今まさに調査のため彼らは探索波ピンガー)で確認作業を進めていた。


「了解」


「何も反応有りませんね」


 今回くろしおの任務は数日前にこの海域付近を航海中だった漁船から報告の有った異常海中発光現象の調査である。


 くろしおが母船を離れ潜航を始めてから1時間以上は経過していた。

今のところ同海域に変わった様子も認められないため当初の緊張も緩みつつあり、艇長の黒崎が安堵の一言を洩らす


「何も変わりない様だしひとまず今回は異常なしと上には報告を上げるか?」


「ですね黒さ⋯ん」


その時一瞬だけ艇内が翳り、計器が明滅する


「今何か横切りました?2時の方向」


「気のせいじゃ無いか、いや、何だあの光は?」

「島田、上に緊急打電だ、目標海域で我異常発光を目撃せり⋯」


「艇長、ソナー感です」


「で、でかいぞ!」


次の瞬間、ズウンと言う大きな音と振動と共にくろしお艇内はブラックアウトした


挿絵(By みてみん)


#神家の朝


 食卓には、うららかな初夏の陽の光りが差し込んでいた。

お馴染みとなった神家の食事風景である。

食事は必ず家族揃ってという、亡き妻からの家訓を守り

今日も神健人、ユキ子、家事アンドロイドのタエが揃って

朝食の皿を囲んでいた。


今の親子の話題は、水難の話らしかった


「それで、ユキ子は、水に顔をつけられる様にはなったのかい?」


「ええと、全然!・・・」

「で、でも良いの、私にはいざとなったら助けてくれる彼がいるもの」


 きっぱりと言い放つ娘に「ほほう」と言う目を向ける神


「逆に聞きますけど、お父様はどうなの?」


「自慢じゃ無いが、私はガッチガチのカナヅチだ!」


「「うわはは、うふふふ」」


最近の神家の食卓は非常に和やかで明るい。以前は認めなかったこの雰囲気にはテーブルの上にそっと置かれた銀の小箱もちょっとだけ関係しているかと思われた。それはこの家の日常に、いつの間にか当たり前の様に溶け込んでいた。


「それでユキ子今日も隊の方には向かうのかい?」

「ええ、奥参謀さんから何か大事なお話があるそうなの」



#海底へ


 いつもの防衛隊の送迎車で本部の入り口をくぐる神親子。

 その後ユキ子1人が通されるはずだった参謀室では、なぜか彼女の隣の席に銀の小箱を握り締めた神がどっかりと座っていたのだ。


奥と言うネームプレートを付けた参謀服の男、チラチラ神を見ながら語り出す。


「実は一昨日の昼から、海上保安庁が保有する最新型の水素力潜水艇が一機行方不明になっている」


「確か名はくろしおで海保の虎の子でしたな。

同期が開発に関わっていたので。

だがあれはそう簡単にどうにかなるような出来じゃあ無かったはずでは?」


「そうなんだ、神君。そのくろしおがあの船にとっては取るに足らない深度200mの大陸棚水域で光が見えるとの打電を残してぷっつりと姿を消してしまったのだ」


顎に手を当て考え込む神

「ふむ」


「あのお、」

小さく小さく手を挙げる少女

「それで私は何をしたら・・・」


少し澱んだ空気を振り払うように声を張る奥参謀

「そうそう、だからねユキ子さん、君にはF01に乗り込んで海底の異変調査をお願いしたいのだよ」


「ひいぃ」


「どうしたユキ子さん?」


「うちの娘は完全なカナヅチなんですよ、任務の内容に少し緊張しているのでしょう」


「ああ、それなら大丈夫、博士の協力も仰いで、防水シールドを3倍に強化して頂いたから」


驚きに表情の後すぐに頬を膨らませ父の方に頭を向ける娘、小声で

「お父様絶対知ってた、」


「うう、と言うか改造してるんで彼だってなあ」


突然銀の小箱から声がする

「博士!後で計器を叩かれるのは僕なんですよ?」


奥参謀突然小箱から声が聞こえたので目を丸くする

「流行の小型積載無線機ですかな?」


「いやいや、なんでも有ません

参謀の空耳でしょう

任務は確かに引き受けました

ほらユキ子も」


「ゔー、はい行ってきます」



#発見


水中シールドを展開した赤いロボットが臨時で増設されたハイドロジェットで後方に水流を噴出しながら海中を進んでいた。


「報告ではこの辺りのはずなんだが」


これまた臨時でアクティブソナー機能を増設した360度点字スクリーンを触りながら少女が応える

「確かに、何も無いんだけれど・・・ねえマン右下の方に何か感じない?」


「あ!確かにF01の標準センサーでは検出できない場の揺らぎが在るな。

サンキュー、ユキコ、最近接合装備に依存し過ぎていた自分が恥ずかしいよ」


「えへへ」

ちょっと頬を染め微笑む少女

「私ちょっとは貴方の役に立ててる?」


「ああ最高の相棒だよ、ユキコ」


F01はユキ子が感じた方向にそのまま進む。


「おそらくここだ、ユキコ、錯視シールドを抜けるぞ身体を固定するんだ」


突然ガクンと大きな振動が機体に走り、次の瞬間眼前の光景は一変していた。


輝く水晶の様な巨大な柱構造が幾つも配置された空間には、透明なチューブが蜘蛛の巣もかくやとばかりに配置されていた。

更には周囲には多数の小さな作業機械が行き来していた。驚くべきことにそれら全てを包み込むような膜状構造になっていた。

荘厳とも言える光景にUマンは思わず感嘆の声を漏らす


「これは海底都市、いや要塞か?」



#不可侵の誘い


コクピットの上方に顔を向けた

ユキ子が呟く


「マン何か来るわ!」


海底要塞の上方に光が集まり見る間に人型の像を形作っていく

異相の星人は縦に走った溝状の口を開く、どういう理屈なのか、周辺の海全体に多重音声の様な声が広がる。響く口調は非常に紳士的である


「銀色の友達、そして可愛らしいお嬢さん、お二人ともMラス・ランド公国へようこそ」


「何を言う、ここは地球だ君達の星では無いぞMラス」


「おや失敬、我々も電波で伝わる情報でこの星については色々学ばせて貰ったんだが、然るべき手順で領有権の主張をした上で他国の承認を得られれば国家として承認されるのだろう?

知っているよ。

それにこの星の海と呼ばれる溶媒は実に素晴らしい、我々にとっては全くの無価値だがAU79の様な君らの言葉で言えば<買収>に使える物質も無限に含んでいるのでね。3デルも有ればなんでも聞いてくれたよ彼ら。」


「まさか、貴様?」


「ねえマン彼は何を言って居るの?」


「侵略の話だ、異星人による<合法的な>ね」


「し、侵略・・・ご、合法?」


異星人は更に口を開く

「そこで、君たちに提案が有る

我々と不可侵の取り決めをした上でMラスの国民にならないかね?優遇は保証するよ、何せ・・・」


ユキ子の目には映らないがコクピット内の計器類が一斉に異常値を示し始めた


「黙れ貴様口を閉じろ!」

「くろしおの乗員はどうした?」


「ああ、あの接近してきた玩具の中身だね」


「殺したのか?」


「ふふふ、この私がその様な野蛮な行為をするなどと思うかね、貴重なサンプルだ、きちんと洗浄してからキール樹脂に大事に包埋処理してあるよ」


F01のコクピット内の計器がピシッと言う鋭い音を立てる、一部の表示は赤に変わっている


「マン・・・」


「Mラス、君は僕の敵だ」


「おやおや、まだ青いね

それではそれ相応の歓待で持って迎えるとしよう」


#浸水


「我々の可愛いペットを紹介しよう。地球の海より遥かに深い母星の海から連れてきた水棲の化け物Bゴン君だ」


海底要塞の扉が開き、巨大な異形の怪獣が出現する。

頭部にある発光器官を明滅させながらF01の周囲を高速で円を描く様に移動を始めた


「は、速い」


水中とは思えない速度で移動するBゴン。と見るや超高速で体当たりをして来た

ちょうどF01のコクピットの辺りでゴズンと言う鈍い音がする。


今の衝撃で装甲の防水シールドにダメージが有ったのか、コクピット内に浸水が始まる


「マン、な中に水が・・・」


「大丈夫だユキコ、今止める」


F01デバイスの無い左手の掌でコクピットシールドの外側を覆う


「と止まったわ」


「だが、やつの動きが全く見えない」


ユキ子が首を上に向ける、

「マン、右下方から上方に回り込んで来るわ」


「OK分かった、ユキコその方向に向けてナックルクラッシャー」


赤い拳が光をまとい怪獣の頭部を直撃する


「ギエエエエ」


叫び声を残しBゴンと呼ばれた怪獣は、海底要塞の本体にぶつかり完全に動かなくなる。要塞自体も大きなダメージを受けた様子で大量の水煙が上がり、幾つかの尖塔がゆっくりと崩れ始めていた


「助かったよユキコ」


「はああ、こちらこそ」



#戦いという名の果実


 まだBゴンが横たわり水煙漂う残骸の中、立体映像の様な姿のMラス星人とF01が対峙していた


Mラスが念話で語り掛けてくる


「まいった、ああ、参ったよ君、

ちょっとしたこちらの計算違いとは言え、まさか水中でBゴンを倒せるものが居ようとはね」

「負けは認めるが、一つだけ言わせてくれ」

「本質的に君が守っている生き物たちは戦いが好きなんだろう?

 私はただ、その中にあるスイッチに軽く触れてやるだけ、それだけだ。あとは勝手に争い、滅びていくのを待てばいい。

 どうだい?君たちの言葉を借りれば、実に平和的な方法だろう?

 そうは思わないかい?」

「元・地球の監視者***君。」


「その名前で私を呼ぶな****!」


「え、今あいつなんて言ったの?」


「東銀河標準語にしかない言葉で

話していたようだ。翻訳は・・・出来ない」


「そうな・・・の・・・?」


少し無言の対峙が続いた後Mラス側が口を開く



#去りゆくM


「・・・さて、今回のこの星の侵略はこの位にしておこう。

君たちと本気で事を構えるのは、あまり利口なやり方とは言えないのでね。」

「まあいいさ。我々には十分すぎる時間がある。

 またしばらくしたら、この星でどんな“茶番”が繰り広げられているか、見物に来るとしよう。」


Mラスは、瓦礫と化した海底要塞の側で横たわっている水棲怪獣に、小さな銀のカプセル

を向けると一言


「戻れBゴン」


見る間に、光る粒子の本流と化したBゴンは、そのカプセルに吸い込まれていく。


「どうだい、君たちの技術を転用した模造品だが、便利に使わせてもらっているよ」


「それでは、***にも宜しく」


Mラス周囲の空間が歪んだ様に見えた次の瞬間、Mラスは消えていた。まるで幻の様に海底要塞の残骸とともに


辺りは、文字通り水を打ったような静けさに包まれていた。


Uマンはつぶやく、少し悔しさをにじませながら

「去ったか」


少女は一つため息をつく、心底安堵しながら

「ふう」


ひとまず危機は去ったのだ



#エピローグ、息止め練習


 舞台は再度神家のダイニング、


 ダイニングテーブルには、なぜか水を一杯に張った洗面器が置いてある洗面器に被さるようにユキ子が顔を伏せている

 その身体が少し震えている様に見えた

 少女の周りでは、神博士、家事アンドロイドのタエがこの状況を微笑みながら、見守っていた。


  震えが一瞬止まって少女が水しぶきを飛ばしながら上半身を起こす

「ぷっはぁ」

「どう、どうだった?」


ストップウォッチを片手に、神妙な表情でタエが告げる


「20秒」


直後に破顔一笑し

「よくやったぞ、ユキ子、立派な新記録じゃないか?

次に水中任務が有ったらばっちりじゃないか?」


「でっしょお・・・・・・って次って言うのが少し気になるけど・・・」

鼻高々な表情で、銀の箱に向かって語り掛ける少女Y


「まあいいわ。で、どう思う、どう思った?ねえ」


 小箱からもちょっと遠慮がちな声が響く

「まあ、頑張った方じゃないかな・・・ユキコにしては」


「もおお!」


FIN


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