第1話「帰ってきた男」
序に代えて
「Uマン 改造された戦士」
本作「Uマン」は、作者・仙台時計が学生時代、友人と共に構想した“ワンクールの仮想TVシリーズ”をもとにした小説です。
SFや昭和特撮から受け取った熱量への、ささやかな恩返しのつもりで執筆しました。
アマチュア作品のため、誤字脱字などもあるかと思いますが、どうかお目こぼしいただき、ご笑覧いただければ幸いです。
今回はテスト投稿として第一話を公開いたします。
これは「異なった星に生まれた二つの魂の交感の物語」
もしお一人でもお気に召していただけましたら、完結まで走り抜ける所存です。
この物語が、たった一つでも、誰かの心に刺さりますように。
1992年3月18日より34年目の春 仙台時計
「帰ってきた男」
Uマン 以前地球を守っていた正義の巨大宇宙人
Q星人 Uマンの宿敵。Zキングを率い襲い来る
Zキング 1兆度の火の玉を放ち、その力は無敵
# 序
Q星人に操られたZキングの超高熱攻撃の前にUマンは敗れた。
敢えて都市部での戦闘を避け、誘い出した伊豆七島上空で、ZキングとUマンの必殺技どうしが激突したのだった。
敵の放った1兆度の火の玉は彼の右半身を貫いた。しかし、U族最大の武器であるUフラッシュは、Zキングに致命傷を負わせることは出来なかった。祈りを込めた人々の見つめる中、マンは大島沖の海中深く没した。
VTOLで出撃した防衛隊の活躍が、何とか手負いのZキングを打ち倒し、Q星人が再来を予感させつつ去った後でも、彼が戻る事は二度となかった。
その日から、彼の姿を見たものはない。その日から、地球にはヒーローがいなくなった。やがて25年の月日が流れ去り、いつしか人々は「彼」を忘れた。
そして、そんなある年の8月。大島近海で、二隻の漁船が驚くべきものを引き上げるところから、真のこの物語は始まる。
# 腕
東京を離れること220キロ。大島の沖で、千葉松浦太洋漁業所属のトロール船、海竜丸・福神丸は数日来うち続いた時化をぬって待望の網を入れていた。時化直後のこのような海では、回遊魚が群をなしている事が多いのである。底引きを入れて2時間あまり、海竜丸の魚労長角田栄次は一人ほくそ笑んでいた。<あたり>が思ったよりも強いのだ。この辺りの海は元来質の高い魚場で有名であり、普段なら競合相手も多いのだが、今日はまた特別だった。不漁続き後の漁はただでさえ取引値が高く、採って幾らの彼らには幸いなのだが、その上でこの引き。彼の口角が上がるのも無理はなかった。
そのとき船尾の方がにわかに騒がしくなってきた、いよいよ網の巻き取りが始まったのである。ウィンチの回転音とともに網が上がってくる。20メートル、あと10メートル。見つめる栄次と船員の目に銀色のきらめきが飛び込んで来た。カツオだ、それもかなり上物の群れだ。確信した栄次の目にそのとき別の影が映じた。灰色の大きな何かが網の中央部にひっかかっているのである。鮫か?やっかいだな。一瞬、彼はそう考えた。しかし、それは決して鮫などではなかった。
呆然とする乗組員達の目の前に浮き上がってきたのは10メートル近くはあろうかと言う銀色の「棒」だった。より正確には、先端部に幾つかの小型の突起をもった「それ」は、信じられないほど巨大な人間の「腕」に見えた。周囲に跳ね回るカツオの閃きがいっそう目の前の光景の非現実感を強調していたが、彼らにとっては、もう漁どころの話ではなかった。
*Uマン 仮死状態にあったところを地球人に改造を受け再生。
*神博士 Uマン再生計画の責任者。50歳
*神ユキコ 神の一人娘。気丈で可憐な盲目の少女。16歳
*小竹進 科学特捜隊の隊員。ユキコに淡い想いをよせる。
# 人類
うだるような暑さのなか、青空に向い屹立する灰色の柱の群れが霞んで見える。
その中でも特に突き出た塔の屋上に描かれた<H>の文字上に、激しく砂塵を巻き上げながら着陸する一機のヘリがあった。中からいかにも政治家然とした恰幅のよい男が、髪の乱れを気にしつつ降りてくる。
「それで、それほど重要な案件なんだろうな。2ヶ月後には、参院選も控えているんだ。これでつまらん用ならただじゃすまさんぞ。」
「存じております、官房長。今日の緊急招集は総理の要請なのです。」
「橘の?」
円形に設えられた卓の並ぶ広大な会議室は2、3の空席を除き殆ど埋まっていた。
そこへ、先程のヘリの男が入ってくる。
「総理、官房長官がお見えになられました。」
「では、始めてくれ給え」
正面の演台と思われるスペースにいる総髪白衣姿の学者然とした男が話始める。
「ええ、先程お渡しした資料をご覧の方々は既に概略は把握されたかと思いますが、一応改めてご説明いたします…」
官房長官と呼ばれた男、脇に座った男に小声で。
「見ねえ顔だが、何者だあいつ。」
「なんでも、帝都大の付属天文台の所長らしいですよ。」
「ふん、天文台ねぇ。」
「…というわけで、以上が我々の観測スタッフが得たデータであり総括すると…」
円卓のほぼ真ん中に座った、総理と言われた男がしびれを切らしたか
「うほんっ」
「つまりわかりやすく結論だけ言ってもらえるとどういうことなのかね。 素人の私には今ひとつピンとこんのだがね。」
学者然とした男さらりという
「太陽系内に、外宇宙から何者かが侵入、侵略してきたということです」
会議場全体にガタッという音が響く
「侵略ぅ?」
「はは、テレビ漫画の世界ですな、まるで」
その雰囲気に臆することなく、学者然とした男が憤然とし続けた
「冗談ごとでは、ありません。これ以上は我々の範疇ではないので細かい説明は差し控えますが、いくつか確たる証拠を提出する事も可能であり…」
被せるように総理の脇に控えていた黒服の男が口を開く
「今、博士のおっしゃられたことは、ほぼ事実です。」
「実は先日アメリカ合衆国の東海岸が謎の円盤と怪獣の攻撃を受け、ほぼ壊滅的なダメージを受けているのです。」
官房長官がわざとらしいほどの大声で、
「なんだぁ?俺ぁそんな報告は受け取らんぞ。」
「事の重大さからくるパニックを鑑みて、残存アメリカ政府と国連上層部の独断で情報をシャットアウトしていたのらしいのですが。」
「残存って、それほどやられたのか、アメリカが?」
「それは実際いつの話だったんだ?」
「攻撃を受けたのは3日前、アメリカの生産力の三割と人口の2%が失われたと聞いております。」
「おい、2%って。ざっと五〇〇万も死んだのか!」
一瞬静まり返った後に、ざわつく会議場
「それで、その円盤とかいうのは、現在どこにいるんだ。」
壇上から学者然とした男が口を挟む
「一時、地球圏を離脱。月の裏側へ引き揚げていったところまではいくつかの観測機関が捉えています。」
総理と言われた男が言葉を繋ぐ
「うほん。」
「さて、皆さん。今日お集まりいただいたのは、他でもありません。今し方お聞きになった通り、どうやら私達人類は未曾有の危機を迎えており、それに対し、皆さんのお知恵を拝借したいとともに、昨日ある研究機関からもたらされたこの事態に対する興味深い提案について皆さんのご意見を仰ぎたく、こうしてご足労願ったわけです」
「それで、その提案とは…」
「じゃあ、神君。頼むよ」
今まで、無言で隅に座っていた、切れ者そうな初老の男が立ち上り、先刻の小さい演台に登る。
「ただいまご紹介に与りました、帝都大機械生物学の神です」
明かりが消え一枚のスライドが上映される。
「さっそくですが、これを見ていただきたい。」
おおっ、と会議室全体で声があがる。
画面には2隻の漁船が曳航している巨大な棒状のものが写っている。 神と呼ばれた男がレーザーポインタで指し示す。
「これは、先日伊豆七島沖で引き揚げられた物体です。」
「自分には、巨大な腕のようにも見えるが。」
「その通り。正確には全長8・7M、我々とほぼ同じ外見を持ったまさしく <腕>なのです。」
「それで、これは、いったい何なのかね?」
「皆さんは25年前まで地球に一人の超人がいたことをお忘れでしょうか。彼はその最期を伊豆沖で終えているのです。」
神博士の背後で音を立ててスライドがきり変わる。
白黒で写りは悪いが、大きなトカゲの様な生物と巨大な人間が格闘している図である。
「U…」
「そうです、これは彼の死骸の一部が引き揚げられたものであると 私は、確信しております。」
「神君。それで早い話しが今回の件とそれが、どう結び付くのかね。」
「今回の相手には、アメリカの現用兵器がまったく歯が立たなかったという報告も受けています。おそらく既存の技術で、敵の攻撃に耐えうる防御兵装は不可能でしょう。そこで…」
「そこで?」
「伊豆大島沖に沈んでいると思われる、あの超人の身体を利用して、兵器を作り上げようという事ですよ。」
「まさか。」
「そんなことが可能なのかね…」
「私の理論をもってすれば」
神、ニヤリと不敵な笑顔を見せた。
再び、ざわつき始める会議場内。
# 改造
漆黒の深い闇の中、かすかな燐光を放つマリンスノーをかき分けるようにしてゆっくりと進む一台の船影があった。その船舷には<科学技術庁所属潜水艦「わだつみ2号」>の文字が浮かぶ。
薄暗い船内に設置された小さなスクリーンには、深く積もった海泥を照らすサーチライトの光が写っている。艦内には周期的に音波探索器の高い発信音が響いている。
「現在深度200メートル。博士、見えてきました。」
「うむ」
この深度では、写し出される映像に色彩がなく分かりづらいが、よく目を凝らせば、そこには海泥に半ば埋もれるように巨大な人型が見えていた。サーチライトを受け鈍く光を放つ姿からは頭部上腕を含む右半身が抉れるように無くなっていた。
思わず操縦桿を握る助手が叫び声を上げる。
「おあっ!」
あくまで冷静な神の声。
「見ろ、凄い。素晴らしい、素材だ。」
「25年も海中に沈んでいて腐蝕一つ受けていない。」
このとき神の脳裏にはある光景が浮かんでいた。年期の入った研究者風の男達の顔々。みな蔑んだ目をしている。
「ジェノオルガニックス理論だって。」
「そりゃあ、お凄い。さすがは神先生であらせられる。」
あたりにコーラスがかかったような嘲笑が響き渡る
「クックク…」
「アッハハハハハ…」
ドシッ。神は思わず、耐圧窓の縁を右拳の外で殴りつけていた。
「くそっ。」
「だが、これであいつらを見返してやれる」
そこに神を我に返らすような助手の声が響いた。
「…生っ!」
「先生っ!」
「?」
「なんだ?」
助手の声は上ずっている
「び、微弱ですが目標には生命反応があります。」
「何ぃっ、そんな馬鹿な、確かか?」
慌ててモニターの液晶表示に目を向ける神。
# 改造2
銀灰色のH鋼が組み合わさった、航空機の格納工場ハンガーのような建物の中。あたりには盛大な金属作業音が響き渡っている。
その広大な空間の中ほどに横たわる巨大な人型。一部にはブルーシートがかけてあった。キャットウォークから下を見下ろすようにしている神。 少し離れた所にいる助手に声をかける。
「作業の進捗状況はどうか。」
「順調です。」
「しかし、先生…」
「何だ?」
「何だか、毎日神様の体を切り刻んでいる気分ですよ。」
「馬鹿をいうな、俺達は科学者だ。この世界では俺達の方が神だ。」
その時、奥にある自動扉から、明らかに現場作業員とは毛色の違う数人の男達が連れ立って入ってくるのが見えた。全員が深い緑色の制服を身につけている。
神は、彼らの姿を認めると、軽い舌打ちをして、階下に降りていく。
格納庫横に設えられた薄暗い一室に、制服姿の男たちと、神、助手の姿があった。中でも最も居丈高な雰囲気を醸す制服の一人が口を開く。
「それで状況はいかがかね、博士?」
けっして面白そうではない顔で、神が返答する。
「素体と兵装の神経回路の接続は順調ですよ」
「ただ、動作の確実性のためには有人での操縦補助が必要になるかと」
「実は博士、そう言った事も含め、我々側からお願いがあるのです。」
「博士が素体と呼ばれている、その、…Uなのですが、出来れば元の姿が判らないような擬装を施して欲しいのです。それと、先ほどの件も併せて目立つ場所にコクピットを付けて頂けませんか?」
「出来なくは無いですが、重装になるので稼働性は確実に落ちますよ」
「無論それで構いません。我々は、この…」
制服の男、窓外に横たわる巨人を親指で差しながら
「兵器を、あくまで防衛省が独自に開発した画期的武装として公表したいと考えているのです。」
彼らの意図を察した神の表情
「ははあ、出来るだけご期待に沿う様に致しますが」
制服組が帰った後、助手が神に聞いてくる。
「せっかくの先生の成果なのに、妙な話になって来ましたね」
「未だに彼を憶えている人達への配慮なのだろうな、無論私としては少し残念だが」
# 親娘
シンプルな内装で統一されたダイニング。テーブルには、神博士とひとりの少女が腰掛けている。
どうやら食事が配膳されるのを粛々《しゅくしゅく》と待っている様子である。
神の娘ユキコは盲目であったが、そのハンデを感じさせず、おっとりとしたお嬢様風の少女である
「どうかして? おとうさま。」
「この所、なんだかとっても楽しそう。」
「そうか?」
後ろで聞いていたアンドロイド家政婦タエが
「旦那様、何カイイコト、アッタ。」
「そうなの~?」
「ねえ、おとうさまぁ。ユキコ、明日、おとうさまの仕事場に行ってもよろしい?」
「ん? いや、そりゃ駄目だ。」
「どおしてぇ」
「どうしてもだ。」
他愛もない父と娘の会話である。
# 覚醒
深夜の、作業員一人いない格納庫内で微かに物音が響いた。
意識を取り戻し、ワイヤーで固定されたまま僅かに身じろぎする巨大な人型。
「…タシハイママデナニヲシテイタノダ」
「ワタシハナニモノナノダ」
ちょうどその時夜警がハンドライトを手に、巡回にやってくるが、動きだした巨人の姿を見て腰を抜かしながら、逃げていく。
「ひっ、うっ動いてる」
「ワタシハ…」
空が白々と明け始めた早朝。
Uマン再生工場の脇に設置されたコントロールルームに入ってくる神。
「あれが意識を取り戻したというのは、確かなのか。」
「こちらのセンサでは脳波らしき波形も検出されています。投影野との接続さえうまくいけば外部とコミュニケーションを持つことも出来そうですね。」
「それはまずいな。」
「は?」
「奴が自分の意志を完全に取り戻してみろ、こちらが勝手に体をいじっているんだ、どんな反応を示すか分からんぞ。
まあいい。ともかく、コントローラの埋め込みを急がせろ。」
「分かりました。」
助手達が、半分えぐれるように失われた巨人の頭部に取り付きながら作業を再開する。再び喧噪に包まれるハンガー内。
# 少女
Uマン再生計画研究施設の内部では、神がUマンに内蔵したコクピットの最終チェックを行っている。
そこへ、神の一人娘ユキコが科特隊員の一人につき添われやってくる。
「お父さまぁ」
「ユキコ!」
「あれ程ここには来るなと言っておいたのに」
「まあいいじゃありませんか博士。誰か部下に言って※酒保の辺りでも案内させますよ」
「すまんな、小竹君。そうして貰えると助かる。」
「ま、つまらないの。」
かすかに頬を膨らませるユキコ。
それを横目に、作業に戻る神。
小一時間も経った頃、細い通路の左右の壁に触れながら、うろうろと歩いて来る少女が一人。彼女はいつの間にか基地最奥部の通路に迷い込んでいたのだった。
「困ったわ。小竹さん、小島さ~ん」
「まあ、いいわ。お父さまは、ああ仰っていたけど、この機会に冒険してしまいましょ。うふふ」
※酒保 主に軍の設備に併設された売店
# 出遭い
様々なスイッチや計器類が並んだ狭い空間に設置された椅子にちょこんと座ったユキコ、目前のスピーカーに向かって何やら無邪気に話しかけている。
彼女は迷い込んだ通路から、いつの間にか格納庫に繋留されたUマンのコックピットに入り込んでいたのだ。
スピーカーからは柔らかい電子音声で反応が返って来る。目の見えないユキコにとって声の聴こえる相手は、すなわち存在する相手なのである。
「あなたは、だあれ」
「ワタシハ…」
「ワタシの名は<エフゼロワン>。ただ、そう呼ばれている。」
「ふうんF01おかしな名前ね…」
「…」
# 発進
ユキコが再生本部の通路で迷い、F01のコクピットに入りこんでしまっていた頃、防衛省宇宙特科隊の前線本部は喧騒とした雰囲気に包まれていた。
防衛軍のレーダーには、日本へ向け来襲する数機の円盤の姿が捉えられていたのだ。
モニター越しに会話を交わす、防衛省幹部と神博士。
「博士、F01はまだ動かんのかね?」
「参謀、後は攻撃兵装と、パイロットの識別作業を終えれば、出られます。」
「そんな余裕はない。それに、肝心のパイロット候補が殆ど出撃してしまっているんだぞ。」
「では、最低限の武器を換装してたうえで、こちらのコントローラを使って発進させましょう。」
「そんなことが可能なのかね。」
「万一を考慮して、F01の頭部には強制遠隔操縦装置が取り付けてあります。反応速度は操縦時の六〇%程度しか期待できませんが十分いけます。」
「ではすぐそれを実行に移したまえ。」
再生工場では金属的な作業音の他に、大音量で警戒ブザーが鳴り響いていた。
F01のコクピットにいたユキコは、自身の経験から『動かないほうが安全』と判断し、じっとしていることを決めていた。そんな事とは露知らず、防衛省司令室では神が先ほどの様な会話が繰り広げていたのだ。
F01が突然無反応になったのと同時に、にわかに騒がしくなってきた表の様子を伺おうとユキコがそっとコクピットから身を乗りだした瞬間、ハッチが圧窄空気の吹出し音を残し、彼女を押し戻す様に閉鎖してしまう。
ハッチの閉鎖と同時に先ほどとは比較にならない程の無機質な合成音がコクピット内部に流れる。
「発進、50秒前。操縦員は速やかに搭乗してください」
「え?何、なんなの…」
「パターン照合を行います。」
「識別ID未登録。初期化後再開します。」
何も分からず慌てるユキコの体をF01の操作端末がみるみる覆っていく。
「ジェノパターン採取完了。EEGチェック終了」
「搭乗要員の登録を認めます。継続してプロテクト作業に移行…」
「お、おとうさま、助けて」
「発進します。発進手順に従いチェックを行ってください。」
「入力が行われない場合は2秒以内に自動操縦に切り替わります。」
「OK。リモート端末からの入力を確認。秒読み開始します。」
「おとうさま…」
「…0。発進。」
F01の足部コーンから激しいジェット噴流が吹き出す。
寸鉄も、耐Gスーツすら帯びず、普段着のままのユキコに、発進時の凄まじいGを耐えきれるはずもなく、彼女は敢えなく意識を失くしてしまう。
# 緒戦
遥かに富士を臨む駿河湾。
その上空では先刻襲来した異星人の円盤と、防衛軍のVTOL隊による激しい空中戦が行われていた。軍の精鋭で構成された隊では有ったが、彼我の実力差は明らかであり、健闘虚しく、また一機白煙を吐きながらVTOLが墜ちていく。
「くそ、あちらさんの装甲硬すぎるぜ。」
「副長も何とか無事に脱出したみたいですが、残り3機じゃ、かなり厳しいですね。」
「玉砕なんて俺らの柄じゃないしな。」
「本部からは何か指示はないのか?」
「通信状態が悪いんで、完全には聞き取れなかったのですが、新型機を送るとかどうとか?」
「新型?何か聞いたことあるか?おっと危ねえ」
何とか、ヘッドアップディスプレイ《HUD》に映った光点を躱す隊長機。
「さあ?市谷で何かやってるような噂は耳に挟んだんですが」
「まあ良いさ、今は目の前の奴らに一泡吹かせてやろうぜ、たった3機だがフォーメーションデルタ行けるか?」
「「アイ、サー!」」
陣形を組んだVTOLが、敵編隊方面に回頭しようとしたその時、唐突に円盤の一機が火を吹いて爆散した。
「?」
「何が起きた?」
「た、隊長あれっ!」
円盤群の向こうに微かに見えて来る、赤い影。
「なんだ、あれは…」
「ろ、ロボット?」
「市谷の新型ってあれの事か?」
今やはっきりと巨大な赤い人型として判別できる様になった姿。その右手が一瞬煌めき、腕の残像に沿うように円盤群が爆散していく。眼下の海面に円盤が墜落し出来た白い波紋が小さく見えた。
後には巨人と、VTOLのジェットノズル音だけが響いている。
先ほどまでの激戦が嘘のような静けさだった。
「…終わった…?」
「ですかね?」
前線本部のスクリーンには戦闘の顛末が映し出されていた。
参謀長がおもむろに口を開く。
「いや、本当によくやってくれたよ、神君」
「これで対異星人防衛配備では日本が世界を一歩、リードしたわけだな」
楽観的な言葉を発する参謀長を後目に、何かが引っ掛かっている神の表情。
そこへ観測員の報告がくる。
「報告します。」
「F01帰還。任務完了時間1410。搭乗者ID518208F」
戦果の余韻で、いまだ呑気な口調の参謀長
「ん、パイロットは乗ってないはずじゃなかったのかね?」
少し表情が曇ったままの神、
「そ、そのはずですが。」
オペレーターの淡々とした声。
「いいえ、確かに識別IDを送信してきています。」
「なんだと?」
ドアに向かって駆けだす神。
「神君、どうしたんだ!」
通路を走り抜けながら独白する神
「無人と思って、かなり無茶な操作を強いてしまった。中のパイロットが無事であってくれればよいが。」
格納庫に戻ってきたF01。放熱作業の途中であったが構わず、胸部ハッチへの梯子を駆け上がり、レバーノブで強制開放しようとする神。
作業員が警告を発する
「博士、まだ冷却作業中です。近づいては危険が…」
「構わん。」
レバーを握る神の手がジュッと音を立てる。
「誰だ、だれが乗り込んでいたんだ?」
「!」
愕然とする彼の目の前に、愛娘がシートに押し付けられるようにして失神している姿があった。
「そんな馬鹿な…」
第一話 帰ってきた男・了
「次話予告」
F01の専任パイロットとしてID登録されてしまったユキコ。F01は彼女の搭乗なしには完全な力を発揮できなくなってしまう。軍は窮余の策として、ユキコを暫定的なパイロット扱いでF01へ搭乗させる事を決める。ひとり猛然と反対する神だったが。
人々の、様々な思惑をよそに、25年前、再戦を誓って去った因縁のQ星の円盤が地球軌道に刻々と近づきつつあった。そしてF01として再生されたUマンの記憶も少しづつ戻りかけていたのだ。
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簡単に本物語に登場する登場人物のご紹介を
Uマン(F01) 25年前に怪獣に敗れ海底に没した超人 地球人神博士の改造を受け防衛軍の最新兵器F01として帰ってくる
神博士 (48神健人)帝都大在籍の機械生物学者。マッ* 。娘ユキ子を溺愛。防衛軍に協力しUマン改造計画の責任者となる
ユキ子 (16神ユキ子)
色々あって防衛軍の最新兵器F01の専属パイロットに選ばれてしまう少女。事故で視力を失っている。
タエ 神家の家事向けアンドロイド
小竹進 国際防衛軍所属防衛隊 戦闘班小隊長
葵すみれ 同じく防衛隊 衛生班長
白鳥 同じく 防衛隊 隊長
他 色んな星人の方、怪獣の方々
当投稿はアマチュアにつき、細かい誤字などはお目瞑り頂き、ご拝読いただければ幸いです。
今回はテスト的に第一話の投稿になります。お一人でもお気に召される様でしたら、完結編まで走らせていただきます。
誰かの心に刺さりますように。
1992年3月18日から34年目の3月吉日 仙台時計記す。




