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第2話「地球爆発5秒前」

Uマン改造された戦士

実は第一話は学生の頃に書いたプロトタイプを

加筆修正したもので、第2話からが実質上の新作になります。

2つの魂の物語はここから動き出します

ではご笑覧下さい


第2話「地球爆発5秒前」


Q星人、ZキングJr


#静かなる侵略


 宇宙には音がない。


 無限に広がるその深遠に浮かぶ青い星に向かって今粛々と進む針のような物体があった。

 針はその星の大気摩擦をものともせずスルリと成層圏内に突入すると、そのまま波一つ立てることなく海中に消えた。

 誰一人に気づかれる事もなく、ひそやかに



#私の居場所その1


 その日、朝のルーティン習慣中、神ユキ子は、珍しく緊張していた。ある意味では年に二回だけある遠隔通信校の出校日よりも遥かに動揺していると言ってよかった。

 家事用アンドロイド「タエ」が作る朝食の味も殆ど感じず、普段なら、あまり気にしない父神健人の新聞を読みながらの朝食習慣も気になってしょうがなかった。


 今日は、数日前に起きたF01搭乗者登録騒ぎから初めて防衛軍本部に出頭する日なのだ。


「お父さま!」

「はいはい、了解、ユキ子。

 食事だな、食事、

 おお、いつも通り朝飯美味いぞ

 タエ」

「はあ‥」


 今日も今日とて通常運転の神家ではあった。



 少女の前で金属製の扉が重々しく開いていく

 数日前までは父親健人を訪ねるための入り口だった防衛隊のゲートを査問会のためくぐる。その事が少女の心を萎縮させていた。


 今日はいつもの父との道行ではない。右後方に居るのは彼女の視力を気遣ってか、ゆっくり歩む警備員。何度も訪れているはずの作戦室兼会議室までの道のりが少女には非常に遠く感じられた。


 暫く到着した部屋の前で先ほどのゲートとは違い今度はプシュと言う軽やかな圧搾空気音と共にドアが開いた。


 ユキ子がドアをくぐろうとしたまさに

そのタイミングで部屋全体に拍手の音が響き渡った


「「ようこそユキちゃん!」」


 クラッカーこそ鳴らなかったが、

あちらこちらから掛かる歓待の声に少女は少し困惑していた。


「私は葵、防衛隊本部付きの衛生士官をやってるの宜しくね、ユキちゃん 歓迎するわ」


「初めましてじゃあ無いよね。僕は小竹、戦略部をまとめてる。ユキ子さんの直属の上司?って事になるのかな?」


「え〜小竹小隊長カッコつけてるけど鼻の穴が広がってるじゃあん」


「うるへえお前だって伸びてるぞ!」


「うん、皆ちょっと良いかな。お嬢さんが驚いてしまってるじゃないか」


低音で優しい声の人がそっと少女の手を包んで来た。


「隊長の白鳥だ。神ユキ子さん、防衛隊本部にようこそ。歓迎するよ。」


「よ!隊長、千両役者!」


「お前らなあ!」


 何が起きているのか全く分からなかった少女であったが、少しづつ表情が解けて行く。


 私、私ってここに居ていいの?


 そしてちょっと手荒い洗礼を受けながら

その口許はいつか微笑みに変わっていた。



#私はUマン


 娘が防衛隊の歓待を受けている頃、その父は上階の参謀室に来ていた。


上級将官と思われる制服組が口を開く


「それで、博士の娘さんがU、いやあの兵器に操縦者としてパターン登録されてしまったという訳か⋯

一体全体どこがどうしたらそう言うことになるんだ?」

「それから元々操縦者登録予定だった軍属は今どこにいるんだ?能力を完全に発揮するためには登録操縦者の補助が必須なのだろう?参謀長」


「今現在待機中です。ですが何度登録作業をやり直そうとしてもリジェクト拒絶されてしまうのです。

残念ながらユキ子嬢とあれとの親和性が特殊なのだと思われます」


「神くん大体そう言うあらましで良いのかね?」


「はあ、まあそういう事かと」


心ここにあらずの生返事をする神。


「どうした神くん君らしくも無い。

娘さんのことが気になるのは分かるが⋯」


「いえ、娘の事だけでは無いのです」


「それは一体なんだね!?」


「あれが意識を取り戻しかけています

現時点でもある程度神経接続でのコミュニケーションが可能になってきており、自分をUマンだと名乗り始めています」


「それは喫緊の課題だな、マスコミ対策は参謀長に任せる、で神くん我々が制御するための算段はあるのかね」


喧騒が参謀室を包んでいく



#悪夢再び


 歓迎イベントから数日後、急遽

仕立てられたオレンジ色の耐Gスーツに身を包んだユキ子がF01が係留されているハンガーにやって来ていた。頬が少し赤い。


 キャットウォーク上で所在なげな娘に気付いた神、声をかけると、整備中のF01のコクピットに向かうタラップを渡り、ハッチが開放中のコクピットにユキ子を座らせた。操縦系について一つ一つ解説を加えていく神博士。


「良いかユキ子、ここを触れてご覧、これがお前用に開発した360度点字スクリーンだ。」


 興味津々でコクピット内を覗いた小竹隊員が、親子2人の雰囲気に少し呆れ気味で肩をすくめてハンガーを出て行く。


更に娘に説明をしている神

「後の細かいことは彼に任せると良い」

「彼?」

「おいおいに分かる」


そこに突如ハンガー内に甲高いアラート音が響き渡った


「レベル5警戒警報発令、レベル5警戒警報発令、関係部署は速やかにコード01に従い行動して下さい」


「博士!」


「おお、小竹君これは何事だ?」


「大型円盤機が帝都上空に侵入して来た様です、現時点の情報ではどうやらQ星人の再来では無いかと言う司令部からの通達が⋯」


耳のインカムを操作しながら状況を説明する小竹隊員、


「博士F01は出せそうですか?と」


「まあおおよそのセットアップは終えてあるが」


 困惑顔で会話を聞いていたユキ子、顔の前で手を交差させて振る


「駄目駄目だめ、私出来ない」


 そんな娘を諭すような神

「大丈夫だユキ子、いつものシミュレーション通りだよ」

「お前は落ち着いてシートに座っていなさい、後は彼に⋯」

「それで、お父様、彼って一体」


「F01、発進準備完了です

操縦者とのリンク作業開始します」

ユキ子の座るシートがガクンと沈み込み二重ハッチが閉じていく。


「では行ってこいユキ子」


「えええぇ〜」


 かすかな少女の叫びを残し完全に閉まる赤いハッチ



#2人


 シーンと静まり返ったF01のコクピット内

 所在なさげに先ほど父に教わった点字スクリーンを意味もなく弄る少女。

 気のせいか頬が少し膨らんでいる様に見える

 シートの後側から、どこからとも無く細いチューブ状のアームが伸びてきて

 耐Gスーツのプラグ孔に接続する


「搭乗者ID518208F、EEGパターン照合終了。

 対象ヲF式登録パイロット、コード名ユキコジント認メマス」


 非人間的な合成音に少女は少し不機嫌になる。


「私コードじゃ無いし。もう、どうぞご勝手に!」



「君、ちょっと良いかな?」


 先ほどの合成音とは違う響きに身体をビクッとさせるユキ子


「⋯この前の人?」


 聴覚とリンクする情報への記憶力が著しい彼女の脳裏に、偶発的にF01に機乗した際の声との会話が結びついてフラッシュバックされていた。


「はあ、良かった私一人じゃ無かったんだ」

「ねえ聞いてくださいよ。皆ったら酷いの、花より団子な16歳の乙女を

 こんな箱に閉じ込めて、発進とかって何よ!」


 我に返るユキ子


「あ、すみませんいきなりまくし立てちゃって、私興奮しちゃってるみたいで」


「いや大丈夫、ただ君の言葉が私の知っている語彙と少しばかり異なっていたので

 面食らっていたんだ」


「うふふ、貴方っていい人ね」


「ユキコさん?と呼ばせてもらって良いかな?発進するよ」


「は、はい」


 機外でジェット推進機の音がし、少女は後方へのGをわずかに

感じたが防衛隊特製の耐Gスーツのおかげで全く不快な事は無かった。


「それで私は貴方のことは何と呼んだら良いのかしら?」


「そうだなU、そう<Uマン>なんてどうかな?」



#Q星人


 そこは奇しくも25年前の伊豆七島上空、大型の円盤機と真紅の人型ロボが対峙している


点字スクリーンに触れながらユキ子

「あれがQ星人の円盤?」


「そうだ一日たりとて忘れたことは無い、僕の半身の仇だ」


 F01の計器ガラスがピシリと音を立てたのは気の所為だったか?


「半身?」


16歳の少女に四半世紀前の因縁など分かろう筈もなかった

挿絵(By みてみん)


どういう理屈かQ星人の声が辺りに響き渡る


「妙な赤い板っ切れを身につけている様だが、我々には分かるぞ、貴様は25ヨルク程前に半身を

吹き飛ばしてやった銀のやつだろう?懲りずにまたヤラレに来たか」

「行けZキング じゅうにああああ!!やってしまえ~!」


 ZキングJrの右手から放たれる目も開けられぬほどの火球


Uマンとほぼ同時に戦略会議室で戦闘の様子をモニタで見ていた人物から声が上がる


「「それはどうかな」」


その人物とはご存知神健人博士その人であった


見よ、F01の右手に後付けされた合金製デバイスが白色の光を放ち、迫りくる火球を

ZキングJrに打ち返したのだ、木っ端みじんに破壊される怪獣


響き渡るQ星人の悲壮な叫び声

「おおおお、じゅううにあああ」


得意げに参謀室モニター前でこれでもかと胸をそらす神博士(に、似た人?)


「見たかぁ!こんな事もあろうかと、密かに開発していた!超電磁界シールドの威力ぅ!」


※ここからは超高速で何やらまくし立てる神博士の台詞を適当に流してお聞きください


「まずΣ事象におけるQV定数が空間ωに及ぼす影響をこんがり焼いて、そこのXの函に

YとZを代入すると言う天才ならではの異次元の発想飛びでナニしたという代物だ!」


周囲の視線が皆自分に集まっているのに気付いた神。

背景には腕を組んで円盤に対峙するF01のシルエットが見えている。


「神博士君幾つになったっけ?」


「はい」


と一言つぶやき気恥ずかしそうに、小さくなって椅子に座る。


その頃伊豆七島上空では別の展開になりつつあった


#地球爆発5秒前 もしくは2つの魂


 悔しさを滲ませるQ星人の声

「子飼いの怪獣を一匹倒した程度でいい気になるなよポンコツがぁ」

「切り札は最後に取っておくものだ。見ろお前これが何だか分かるか?」

 突如空中に展開される立体ビジョン 細い針のような機械が回転する姿が投影されている


焦りを含むUマンの声


「これはまさかシリウス星系のマントル爆弾?」


「そうだあ、それでこいつは今どおこだああ?」


F01無造作に右拳を振り上げるとナックルクラッシャーで無造作に円盤機を撃墜する。

「おのれえ〜]

爆散


「え、え?」


事情が分からないユキ子困惑の声を上げる。

「シリウス星系軍が使用するマントル爆弾は、惑星中心部に侵入しタイマー動作で起動する。コントロール装置を破壊しても爆発することは無いがタイマーを停止させない限り⋯」


「限り?」


「仕掛けられた星は爆散消滅する」


「ええ、じゃあは、早く何とかしないと」


「さてユキコ嬢、そこで君とは一度ここでお別れだ、映像を見ての通りタイマーの表示はもう銀河標準時間で3:00ミヌテを切っている」


「これから僕はマントル層に突っ込む。計算では丁度爆発の5秒前にタイマーを破壊できるはずだ。僕には博士が作ったシールドがあるので、ほんのぬるま湯程度にしか感じないかと思うが、幾らZ合金製装甲の有るこのコクピットでも内部温度の上昇に姫の身体は耐えられない」

「で、こんな時に地球人はこう言うのだろ、アデュー マドモアゼル!」


F01の胸部からユキ子の乗る球形コクピットが射出されパラシュートが開く


「何なの貴方、このキザ馬鹿、馬鹿ぁ」

コクピットの耐圧窓を叩く彼女の声を聞き取ったのはUマンの超聴覚だけであったろう


「ユキコさん、最後にキミに会えて僕は救われたよ。さよなら小さな光る魂<ソルエル>」


前方に超シールドを展開し、赤い鋼鉄の超人は優に音速を超える速度で、海面に突っ込み水柱を残し消える


「うおおおおおおおおおおおお」


海面に着水した少女はコクピット内で両の手で顔を覆い、ただただ嗚咽を漏らすだけだった「ばか馬鹿馬鹿Uマン、お願い神さま」


海面は再び静けさを取り戻していた。



#エピローグ、私の居場所その2


 知らない音、知らない部屋?


「ああ、ユキちゃんようやく

 気がついた」

「葵さん⋯? ここは」

 徐々に意識の焦点が合ってくるユキ子

 自分の腕に刺さった点滴器具も気にせず上半身を起こす少女

「私!あれからどれくらい寝てた?彼は?」


「彼?ああ、F01の戦術コンピューターの事?」

「今貴女のお父さんが寝ずに修理されてるわよ」


「あれから結構大変だったんだから、円盤は落ちたけどねユキちゃんの乗ったF01のコクピットは原因不明の故障で強制射出されちゃうし、戻ってきたF01のZ合金装甲はボッロボロだし⋯

ねえ聞いてる、ユキちゃん?」


 あれこれ語り続ける葵隊員の声を上の空で聞きながら少女は、自分の組んだ腕に顔を埋めていた

そしてかすかに呟く。


「馬鹿」


FIN



お気に召しましたら、続きをご笑覧頂ければ幸いです。読み損はさせないと思います。


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