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転生した女騎士 恋愛レベル0  作者: 紙絵


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8/10

しつこい男

 アスカは剣道の大会に出場していた。

 部活には入っていないが、時々助っ人を頼まれる。

 騎士として重い甲冑を着て剣を振るっていたアスカである。竹刀も防具も軽くて、とても素早く動ける。

「めーん!」

「一本!」

 案の定、開始すぐに技を決めて勝ち抜けた。

「アスカさんありがとう!」

「岸さん、さすがだね!」

「剣道部入ってよー」

 部員から感謝、勧誘されるアスカ。

 剣道部の主将、秦もその一人だ。ぜひ剣道部に入ってほしいと思っているが、アスカは頷いてくれない。

 理由は単純で、現世でも剣を振るうなんてしたくない。である。

「岸さん、今日はありがとう。君がいてくれて本当に助かった!」

 秦は熱くお礼を言う。

「いえ、力になれたようで良かったです」

 さらりと返すアスカ。

「この後時間あったら、二人でどこかに……」

「ごめんなさい秦先輩、この後予定がえりまして!」

「そうか、それは残念だ。じゃあまた学校で」

 断られて残念な秦。

「また」

 そそくさと帰るアスカ。

 本当は予定はない。が、隊長と一緒にいる時間は無いのである。


 授業が終わった、お昼時間。

「アスカ食べよう〜」

 いつも通りアヤとお弁当を食べようとすると、鞄に入っていない。

「お弁当忘れてきちゃったみたい」

「アスカが忘れ物なんて珍しい!」

 アヤが驚いている。

「パン買ってくる!」

 購買は賑わっている。もう残りが少ない。

 これは買えるかな…?

「あれ、岸さんじゃないか珍しいね。パン買えたかい?」

「秦先輩……いえ、まだ買えてなくて」

 隊長に遭遇するとは。

「そうか、もう売り切れだろう? 俺のパン、分けてあげようか?」

「いえいえ、先輩のお昼なくなっちゃいますし」

「大丈夫だ! 俺は弁当もある。パンはおやつ用だからな!」

 おやつ用かい!

「……そしたら、遠慮なく。お幾らですか?」

「お金はいいよ。そのかわり、お願い聞いてもらえないか?」

「お願い?」

 厄介な事になった……

「今日、一緒に帰ってほしい」

 アスカを見つめる秦。

 断りたいアスカ。

「……先輩部活は?」

「大会終わりだから、今日は休みだ! じゃあ、後でな!」

 了承していないが、先輩は行ってしまった。

 パン二つも貰ったし、帰るくらいいいか。

 アスカは諦めた。


 放課後、秦先輩が教室に迎えにきた。

「岸さん! 帰ろうか!」

 ギャラリーが注目している。秦は気にしていない。アスカは日常すぎて慣れている。

「秦先輩、早いですね」

「岸さんと帰れると思ったら、楽しみすぎて急いでしまったよ!」


 スグルが教室から出ると、隣のクラスからアスカが出てきた。

 あれ? 秦先輩、一緒に帰るのか?

「……」

 スグルは距離をおいてそっと着いて行く。

 見てるわけじゃない、視界に入っているだけだ。方向も同じなだけで、追いかけているわけではない。

 スグルは自分に言い聞かせる。


「岸さんはいつも一人で帰ってるのかい?」

 秦が隣を歩きながら訊ねる。

「えぇ、大体は……」

 スグルと帰った雨の日を思い出し、赤面する。

 秦先輩は私と距離を詰めたいようだが、どうしても前世の記憶で苦手意識が出てしまう。

「秦先輩はなぜ剣道を?」

 アスカは質問してみる。

「そうだな、精神集中から一本入る感覚がたまらないのだ! あの気持ちよさは他に無い!」

 秦先輩は熱く語る。

 へぇー


 何話してるんだろう?

 スグルは何となくコソコソしてしまう。

 別に悪い事はしていない!

 は!

 スグルは息を呑む。

 秦先輩が、突然アスカの手を握ったのだ。


「岸さん! 手を繋いでもいいだろうか?」

 秦がアスカに訊ねる。

 いや! もう握ってるし!

「秦先輩、そういうのは恋人同士がする事なのでは?」

 アスカは手を離そうとするが、秦先輩は手をなかなか離さない。

「だったら恋人になるっていうのはどうだろう?」

 どうだろう? じゃない! 勘弁してもらいたい。

「申し訳ございません。私、そういう事に興味がなくて……」

 なぜだか手と手で綱引き状態になっている。

「秦先輩、しつこい男性は嫌われますよ?」

 笑いも引きつってきた。

「なぜだ岸さん? 他の女性は私とすぐに恋仲になりたがるというのに!」

 何処のどいつだ、その女は?

「でしたら、そちらの女性の方と仲良くされたらどうでしょう?」

「ヤキモチかい? それは光栄だ!」

 大きな勘違いだ。何というプラス思考。


「手、離してください。嫌がってるじゃないですか?」


「スグル君!」

 振り向くとスグルが立っていた。

「君は関係ないだろう? 今アスカさんと話し合ってるんだ。邪魔しないでほしい」

 話し合った覚えはないが?

「アスカさん、本当? 嫌がってるように見えたけど?」

「嫌がってます! 秦先輩、いい加減にしてください」

 アスカとスグルが秦を睨む。

「そんな睨まないでくれ! 悪かったよ」

 やっと手を離す。

 はぁ、疲れた……アスカはため息をついた。

「じゃあ、僕はこれで」

 スグルは通り過ぎようとするが、手を掴まれた。

「あの! スグル君、待って」

 アスカが呼び止めていた。

「私、彼と帰ります! 秦先輩、パンのお金はまた請求して下さい。それじゃあ!」

 アスカはスグルの腕を掴むと、足早に進む。

「スグル君、ごめんなさい! でも、あのまま二人で帰るのは無理……」

 コソッとスグルに耳打ちする。

 アスカはスグルの腕を体によせ、ぎゅっと掴んでいる。

 スグルは赤面した。柔らかいモノが腕に当たっている……

「アスカさん! もうちょっと離れて……」

「早く行きましょう! スグル君!」

 アスカは聞いていない。

 いちゃいちゃしている二人を、秦先輩は呆然と見送っていた。

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