告白の末路
「……で、このaとbが掛け合わされる。じゃあ次の箇所を、岸さん読んでください」
「……」
授業中、自分が当てられた事にも気付かない程、アスカは上の空である。
窓の外は雨が降っている。雨の音と共に、人の声がする。
「岸さん? 岸アスカさん!」
「はい! あ、すみません。聞いてませんでした……」
超優等生のアスカが『聞いていない』なんて、未だかつてなかった事だ。クラスメイトのみならず、先生もびっくりである。
「どうした? 体調でも悪いか?」
ある意味、体調不良である。
「いいえ、大丈夫です」
「ならいいが……そしたら工藤さん、お願いします」
駄目だ、集中しないと! でもあの言葉が頭を占領する。
いわゆる、好きなんだと思います
思い出して赤面するアスカ。
あの後、スグルは逃げるように帰ってしまい、アスカはしばらく茫然としていた。
王子が私を好きだなんて、私はどうしたらいいのか……
恋愛経験が無さ過ぎるのも困りものだ。
「アスカ今日やっぱりおかしいよ、何か隠してるでしょ?」
授業終わりにアヤが話しかけてきた。
「……うん。どうしたらいいのか分からなくて、教えて!」
アスカはアヤに聞いてもらう事にした。
「へぇ! すごいねその人、後でこっそり見に行こう〜」
アヤは楽しそうである。
「それからずーーっと頭から離れなくて、他のことがてにつかないの……」
アスカはため息をつく。
「そんなの当たり前じゃん?」
アヤは何でもない事のように言う。
「当たり前?」
アスカはポカンとアヤを見る。
「好きな人が、自分の事好きって言ってくれたんだよ? 舞い上がって当たり前!」
うんうんと頷いている。
「好きな人?」
私がスグル君を好きってこと?
「自覚してないの? 好きだから頭がいっぱいなんでしょ? 今まで告白されても、アスカ笑顔で『ありがとうございます』で返してたじゃん?」
アヤが指摘する。
そういえば……秦先輩に恋人にと言われても、何とも思わなかったではないか!
「アヤはすごいね! ありがとう」
アスカは心の霧が晴れていった。
「どういたしまして!」
アヤは胸を張った。
全ての授業が終わり、皆が帰り支度をする中、スグルは机に突っ伏していた。
「はぁ」
今日何回目のため息だろう?
ため息をつくと幸せが逃げると聞いた事がある。それなら僕の幸せは、みんな逃げていってしまったのではないだろうか?
しばらくそうしていると、
「スグル君、あの……」
頭の上から声がする。
アスカさんの声に似ている。そんなわけないのに、うん、僕は重症のようだ。
「一緒に帰ろう?」
のろのろ顔をあげると、ぼんやり人がいるのが分かる。
眼鏡忘れてた。
机の上に置いた眼鏡を取ろうとしたら落っこちた。
慌てて拾う。相手も拾おうとして、手がぶつかる。
「あ、ごめん!」
しゃがんだスグルの目の前には、同じくしゃがんだアスカがいた。思ったより距離が近くて、眼鏡なしでもアスカだと分かった。
「アスカさん!」
アスカの事を考えていたスグルは赤面する。
「えへへ、来ちゃった」
恥ずかしそうに笑うアスカに、スグルはやられた。
「……一緒に帰ろうって言った?」
スグルは自分の空耳でないことを確かめる。
頷くアスカ。
二人で帰る姿は、王子と騎士ではなく、普通の高校生だ。
雨上がりの空にはうっすら虹が出ている。
二人の手がぶつかる。少し躊躇して、スグルの手がアスカの手を握った。
アスカも握り返す。二人は顔を見合わせて、微笑むのだった。
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