9.
勇者「にがい……」
魔法使い「薬草ってあんまり美味しくないわよね」
戦士「そうか? 割とイケると思うがな」
勇者「それは戦士がトシなだけでしょ……」
戦士「このガキ……でも反論しづれぇのが嫌ンなるぜ……」
僧侶「最近シロップタイプの回復薬も出ましたよね」
戦士「ああ、ポーチョン?だったか?」
魔法使い「回復ポーションね。アタシも作れるわよ」
勇者「えっ甘くできるの!? 魔法使いスゴい‼」
戦士「なら、この薬草もソレにしちまえばいいんじゃねぇか?」
魔法使い「残念、今は無理よ。材料がたーくさん必要なのよね」
僧侶「並々ならぬ企業努力の上に、一般技術は成り立っているのです――」
戦士「なンかお前、たまに僧侶らしからぬ事言うよな……」
勇者「他の材料で、代わりに作れたりしないの?」
魔法使い「んー。配合自体は出来ると思うけど……」
勇者「じゃあやってみよう! 皆で回復ポーションの新しい素材を見つけよう!」
勇者「――というわけで始まりました、回復ポーション配合大会!」
僧侶「いえーい!」
戦士「(指笛の音)」
魔法使い「……。」
勇者「実況は僕、解説は僧侶、作成は魔法使いが担当しまーす」
僧侶「がんばりますっ」
魔法使い「……不安しかない」
戦士「俺は? 俺は?」
勇者「えー? 盛り上げて」
戦士「よしきた! 皆さんお手を拝借、ヨッ――」
僧侶「出ました。戦士様の十八番、ガルゴン音頭です! 熟練の腰つき!」
魔法使い「アホらし……。やるなら早くしてちょうだい」
勇者「うん、じゃあ始めるね。――最初に提案するのは、この人!」
戦士「戦士です」
魔法使い「アンタ情緒どうなってンのよ」
戦士「俺が持って来たのは、これだ!」
ヘビ「Hi.」
魔法使い「ギャーッ! 失格!」
勇者「なんと、失格宣言です! 解説の僧侶さん、これをどう見ますか?」
僧侶「はい。たぶん、失格ってことだと思います!」
勇者「的確な解説をありがとうございます」
戦士「何でだ、魔法使いの配合と言ったらコレだろ!」
魔法使い「アタシ虫とか蛇とか大っ嫌いなのよ‼ 早くどっかに捨ててきてッ!」
戦士「クソッ、これで優勝間違いなしだと思ったのによ……」
勇者「配合にすら至りませんでした。これは大波乱」
魔法使い「波乱も何もないわよ」
勇者「次に提案するのは、僕!」
魔法使い「あら、てっきりアンタは最後だと思ってたわ」
勇者「ふっふっふ。この素材は温度が命だからね」
魔法使い「……温度?」
僧侶「それでは勇者様、選んだものをお見せください!」
勇者「まずいなら、美味しいものと掛け合わせればいい! 刮目せよッ‼」
魔法使い「――コレは?」
勇者「焼きたて・魔物肉のステーキ! 僕の大好物!」
魔法使い「……解説の僧侶さーん。どう思う?」
僧侶「? とっても美味しそうですね!」
魔法使い「解説やめちまえ」
勇者「早速混ぜてみてよ! ポーション、ポーション」
魔法使い「……本当に後悔しないのね? 分かった、少し待ってなさい」
魔法使い「勇者、出来たわよ」
僧侶「うわっ」
戦士「うおっ」
魔法使い「はいはいその他は黙ってちょうだい。ほら、念願のモノよ」
勇者「わーい! 夢の味がこの瓶の中に――」
勇者「――……」
勇者「……。」
僧侶「……勇者様?」
勇者「戦士」
戦士「ん?」
勇者「これあげる」
戦士「いらねェよ‼」
魔法使い「ぷふっ! 勇者様直々に賜った褒美よ、ありがたく受け取りなさい?」
戦士「チクショーッ、俺の味方はいねぇのか……」
勇者「さて、気を取り直しまして」
魔法使い「機嫌の間違いでしょ」
勇者「――最後に提案するのは、この人!」
僧侶「僧侶です!」
魔法使い「はいはい」
僧侶「私が選んだのは、こちら!」
魔法使い「……あれ、牛乳じゃないのよ」
勇者「僧侶さん。牛乳を選択した理由は何でしょうか?」
僧侶「飲みやすさを追求しました! これで優勝を狙います!」
魔法使い「ま、相対的に優勝は確定ね……待ってて、ちょっと混ぜてくるわ」
勇者「さあ、いったいどんなポーションが出来上がるのでしょうか!」
魔法使い「――できたわよ、はい」
僧侶「早くないですか⁉」
魔法使い「ただの薬草牛乳だもの、特別な味は期待しない方が良いわ。はい」
戦士「あ? 俺の分もあンのか?」
魔法使い「もちろん。僧侶もどうぞ」
僧侶「あ、ありがとうございます……」
勇者「――あ、普通に飲めるや」
戦士「うん。さっきのが酷すぎたからな」
魔法使い「ま、ただの薬草牛乳だからね」
僧侶「……薬草と牛乳の味がします!」
魔法使い「だからね?」
勇者「……。」
戦士「……。」
僧侶「……。」
魔法使い「……。」
勇者「! ぷふっ」
戦士「! ……はははっ」
僧侶「! あはははっ」
魔法使い「何よ、皆して……」
勇者「だって、」
勇者「皆の顔に、白いヒゲが――!」
僧侶「そう言う勇者様にだって、お生えになられてますよっ」
勇者「ヤダーッ、それじゃ戦士じゃん」
戦士「ヤダって何だヤダって!」
魔法使い「アタシもヤダーッ‼」
戦士「何だとこのガキども、折角ガルゴン音頭を教えてやろうと思ってたのに!」
勇者「え、いらない」
魔法使い「いらないわよ」
戦士「そこまで言うこたぁねぇだろぉ……泣きたい……」
死まで、あと92日




