82.
勇者「あ」
勇者?「あ」
魔法使い「……久しぶり。すごい偶然ね?」
勇者?「チッ……」
勇者「こんな雪山でばったりなんて、天の思し召しだよ」
勇者?「フン……」
僧侶「――あの、どちら様で?」
勇者「ん、そういえばあの時は僧侶いなかったね」
魔法使い「コイツは自称・勇者よ」
勇者?「自称じゃない! 俺は必ず魔王を倒す者だ!」
勇者「やっぱ微妙に受け答えがズレてるな~。勇者は僕だし」
魔法使い「勇者の剣も盾もこっちが持ってるのよ」
勇者?「そんなの、まがい物だ!」
僧侶「……なかなか面白い方ですね」
勇者?「アァ⁉」
僧侶「貴方は、勇者とは何だとお考えなのですか?」
魔法使い「あ、それアタシも聞こうと思ってたの」
勇者?「じゃあ初めに会ったときに聞けよ!」
魔法使い「だって、あの時はアンタが勝手に逃げ出したんじゃない」
勇者「そうそう、街の皆から白い目で見られたから」
勇者?「う、うるせぇ!」
僧侶「それで……?」
勇者?「――お、おほん。」
勇者?「魔王を倒せば、ソイツが勇者だ」
勇者?「それまで勇者なんてのは、存在しない」
勇者?「俺が、勇者になる。勇者は、俺だ」
勇者「だからぁ……勇者はもうここにいるの」
勇者?「それが間違いだってんだよ!」
僧侶「水掛け論ですね」
魔法使い「あの時もこんな感じだったのよ」
勇者?「……まあいい、じきに分かることだ」
勇者「どういうこと?」
勇者?「――俺は、クリスタルを持っている」
僧侶「!」
魔法使い「⁉」
勇者?「欲しいんだろ。……だったら、奪い取ってみろ」
勇者?「俺を、殺してでも」
勇者「あー……」
勇者「一応聞くけど、そのまま渡すつもりは?」
勇者?「バカか? むしろ追いはぎして、俺が魔王城へ行ってやらあ」
勇者「じゃ、死ぬよ? キミ」
僧侶「勇者様……」
勇者?「へえ、意外だな。和平を選ぶかと思ったのに」
勇者「キミに構ってる暇はないんだ、ごめんね」
魔法使い「……本気なのね」
勇者「交わらない信念を抱き、魔王城へ行く邪魔になる存在」
勇者「今までと同じだよ。殺すしかない。そうでしょ」
僧侶「……。」
魔法使い「そう、ね」
勇者?「話は終わりか? 始めようぜ」
勇者「うん。――マスターバスター」
死まで、あと19日




