66.
夫人「……本当に、いいんザマスね?」
勇者「うん。全部もらって」
夫人「長い事アナタたちとは付き合ってきたザマスが……」
夫人「一応、理由を聞いとくザマス」
勇者「他に、大事なものが見つかったんだよ」
勇者「あ、モノなんて言ったらまた怒られるかな……」
夫人「……成程。だいたい、事情は分かったザマス」
夫人「それがアナタの選択ならば、アタクシは何も言いません」
夫人「――少し、思い出話をしてもようござんすか?」
勇者「どうしたの、急に」
夫人「オホホ。年寄りはすぐ昔に浸りたくなるものザマス」
勇者「まあ、うん。時間あるし」
夫人「感謝申し上げるザマス……」
夫人「……それは、まだアタクシが交換所を始める前のことザマス」
夫人「アタクシには、ひとりの伴侶がおりました」
夫人「大層な収集家で、お見合いで癖が合致したのは奇跡だったザマス」
夫人「その頃のアタクシはちいメダに限らず、あらゆる宝を集めていました」
夫人「しばらくは二人で、楽しい時間を過ごしていたザマス――」
夫人「ですがある日、ついにアタクシは出会ってしまったのです」
夫人「愛らしいフォルム、小粒な輝き、そして何よりも――」
夫人「見つけたときの、興奮ッッ!!」
夫人「ちいメダに、アタクシは取り憑かれたのです」
夫人「伴侶の見つけた宝よりも、ちいメダのことばかり……」
夫人「伴侶を愛するどころか、邪魔とさえ思うようになりました」
夫人「きっとちいメダが、伴侶が唯一、集めていない宝だったからでしょう」
夫人「次第にアタクシたちは、話さなくなっていきました」
夫人「そしてある遺跡帰りに、伴侶がこう怒鳴りました。やめろ、と」
夫人「アタクシたちの住居を圧迫してゆく硬貨に耐えかねたのでしょうね」
夫人「アタクシも叫びました。やめるもんですか!」
夫人「……伴侶は、出て行ってしまいました。当然ザマスね」
夫人「伴侶の宝が消えた分、ちいメダを置く空間が増えました」
夫人「アタクシは半ばしてやったりな気持ちで、集め続けました……」
夫人「しかし、どうにも楽しくない。心が虚ろなのです」
夫人「考え悩むうちに、結論に至りました」
夫人「お分かりかもしれないザマスね――伴侶がいないからザマス」
夫人「なんだかんだ、あの人はアタクシの話を聞いてくださいました」
夫人「ちいメダに興味は無くても、アタクシには寄り添ってくれていた」
夫人「それに気づいた時には、もう屋敷にスペースはありませんでした」
夫人「心の穴は、空いたまま。代わりにちいメダを集めているザマスが……」
夫人「これが埋まるのは、いったいいつになるやら」
夫人「ホホホ。少し話しこんでしまったザマス」
勇者「んがっ! ……ネテナイヨ」
夫人「……。まあ、いいザマス」
夫人「とにかくアタクシが伝えたいことは――」
夫人「目先のものに目が眩んではいけないってこと、ザマス」
勇者「はーい」
夫人「ホントに分かってるザマスか……?」
勇者「大丈夫だよ。僕には大事な――仲間がいるもん」
夫人「――……。」
夫人「約束通り、これを差し上げるザマス」
▼ 勇者は イエロークリスタル をてにいれた!
勇者「ありがとう夫人! 元気でね!」
夫人「オホホホホ……」
夫人「……無事を、祈っているザマスよ」
死まで、あと35日




