29.
島長「おやおや、ここに旅人さんが訪れるなんて久しぶりですねぇ」
勇者「嵐に巻き込まれて、漂着してしまったんです」
僧侶「しばらく厄介になります……」
島長「それは構いませんよぉ……ところでその剣と盾、もしや貴方は勇者様?」
勇者「よく分かりましたね」
島長「ここには勇者伝説が伝わっておりましてですねぇ」
戦士「そうかそうか。ならガルゴンも知ってるか?」
島長「知りません」
戦士「そうですか……」
魔法使い「これに懲りたら余計な口は挟まないことね」
島長「失礼を承知で、勇者様ご一行に頼みたいことがあるのですが……」
勇者「なんですか?」
島長「――島に巣食う邪竜を、倒してほしいのです」
島長「その竜は島民から『守り神』として崇められてきた存在です」
島長「ですが近年、荒ぶるようになってしまって……」
島長「終いには生贄を要求するようになり、手に負えなくなってしまったのです」
勇者「……みんな、ちょっと耳貸して」
魔法使い「何よ、話の途中で」
勇者「――これ、絶対竜はもともと人間だったよね」
魔法使い「今までで一番突拍子もない予想が飛び出したわね」
勇者「たぶん、今まで人を喰わないようにしてたけど耐え切れなくなったんだよ」
戦士「人の心の欠片もない予想だな」
僧侶「ですがもし本当だとしたら、心が痛みますね……」
勇者「こういうのは気づく前に倒しちゃうことが多いんだけどさ」
魔法使い「どこの情報よ」
勇者「僕たちは違う。事前に確認を取ろう」
戦士「確認ったって……どうするんだよ」
勇者「すみません。その竜ってもしかして人でしたか?」
魔法使い「思ったより直球だったわね」
島長「いいえ。普通に魔物です」
魔法使い「普通に魔物だったわね」
勇者「魔物に変えられたとかではなく?」
島長「いえ、ずっと竜でした」
魔法使い「ジャルラ級がまだいるとも考えづらいし、妥当ね」
勇者「そんな……僕の知識が間違ってるだなんて……!」
魔法使い「知識というより単なる偏見よね、それ」
戦士「じゃ、サクッと鎮めてこよーぜ」
僧侶「補助はお任せください!」
死まで、あと72日




