14.
主人「さあ! 存分に我が家の壺を割ってください!」
勇者「困ります」
主人「何を仰います、勇者様の為とあらば壺だって本望でしょう‼」
勇者「僕が望んでないんだけど」
主人「そんなこと言わないでくださいよぉ、折角ご用意させていただいたのに」
勇者「……何か入ってるの?」
主人「いや、壺自体の話です」
勇者「壺自体の話かぁ」
主人「迷ってないで早く持ち上げてください、お手伝いしましょうか⁉」
勇者「わーっ勝手に腕を掴まないでっ!」
主人「ほら、このまま壺を持ち上げるのです、さあさあ!」
勇者「えーいやめてよっ‼」
主人「ぐぬっ。なかなか素直じゃないですな……」
勇者「これ以上ないくらいに素直だと思うけどな」
主人「勇者様がこの町に来られると聞いて意気込んだのですがね」
勇者「どこに力を入れてくれたの?」
主人「まず壺は、割れやすい特注品をご用意」
勇者「割れやすい」
主人「軽量化により持ち上げやすさ、快感も底上げ」
勇者「快感」
主人「そしてなんと、それを3つも取り揃えました!」
勇者「……中身は?」
主人「壺を購入したところ、予算が尽きてしまいまして……」
勇者「空っぽってこと? だとしても割るのはちょっと」
主人「そんな! もったいない‼」
勇者「割る方がもったいないでしょ」
主人「実はこの壺、耐久性が無さすぎて何も入れられないのですよ」
勇者「とんだ欠陥品じゃん」
主人「お願いします勇者様! どうか、どうかこの壺を割ってください!」
勇者「そうは言われても……僕もモノを壊すのは趣味じゃないし……」
主人「かくなる上は、この私が割りますが!」
勇者「そしたらいよいよ何のための壺なのさ」
主人「ではどうしたらいいと言うのですか! アクマ!」
勇者「ええ……?」
主人「このままだと私は路頭に迷ってしまいます――!」
勇者「うーん。じゃあ、見方を変えてみるのはどうかな?」
主人「見方……ですか?」
勇者「『勇者が割らなかった壺』で高値で売るとか、さ」
主人「――なるほど! 見た目によらず腹黒いんですね!」
勇者「あはは……」
主人「本当にありがとうございます! どうにかなりそうです」
勇者「じゃ、僕はこの辺で――」
主人「ついでにこちらのタンスもいかがですか⁉」
勇者「もういいよ」
死まで、あと87日




