街のさざ波
「ここ、意外に車通りが多いな」散歩中のこと。僕は運動不足の対策として度々散歩を行うのだが、その日は珍しく朝から散歩に出ていた。普段なら恐らく寝ているだろう早朝だが、この日は何故か目が開いて、更に意識すら覚醒したのだった。そこで、普段とは違う時間帯なら見える景色も違うかもしれない、と純粋な興味を持ち、家を出た次第だ。早朝でも極少数、街には歩行者や車の姿があったのが驚きだった。若しかしたら、僕と同じ境遇の人も居るのかもしれない、と思うと少し面白い。何故だか、朝は静かに感じる。昼間は必ずどこかから、店内で流れている音楽や賑やかな話声が聞こえてくるものだが、朝はそれが無い。通行人も主に単独で歩いていることが殆どだし、二人で並んでいても、自然に話声を抑えなくてはいけない気持ちになるのが不思議だ。ふと、視界を閉ざし耳を澄ます。過ぎる足音、街路樹の葉の梢、そして、波の音──。それが車の過ぎる音だと気付くのに些か遅れた。鉄のボディが空気を切って、右から来たり、左から来たり。遠ざかれば音は小さくなり、迫ればそれは大きくなる。まるでさざ波のようだ。朝の散歩も良い物だ、と思いながら行く帰路で、気付けば何度も目を瞑っていた。
街の音に耳を傾けてみれば。
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