精巧な猫
「あれ、猫だ。」意識せずそう言ってしまったのには訳があった。僕が居たのは家電量販店だからである。新品の家電が陳列する中、一匹の猫が異質だ。近付いて見てみると、それは確かに精巧な猫だった。少し含みのある言葉の真意は、それの状態にある。その精巧な猫は一切の動きを見せなかった。生命が微塵も感じられないその冷たさと実物の猫と何ら変わりない姿がどうにもちぐはぐで、唯一合点がいくとすれば、これが剥製の場合なのだが、至極近いもののそれとも何か違う気がする。近くにあった対応しているであろう札に目を移すと、そこには「猫型愛玩」とあった。つまりこの猫は……。「作り物!?」ハッとして周囲を見回すが、幸い人は居なかったので安堵した。家に買って帰り、再度まじまじと見つめたが、到底作り物には見えない。実際に触れてみても、感触は本物と変わらないように思える。付属の専用のベッドでどうやら充電できるようで、完了すると動くらしかった。早速充電は完了、それは動き始めたのだが、一つ一つの所作全てがリアルだった。本物に紛れていれば分からないだろう。だが……動くこれを目の前にして、本物の猫と思うことは無いだろう。実際、僕も最初に目にしたとき、精巧な猫と思った。見た目も動作も実物と何の違いも無いのに、どこでそう感じるのだろうか。人間は良く分からない、と思いながら、電源を落としたそれを抱えて家電量販店へ向かった。
見た目は取り繕えても中身は。
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