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どうでもいいわ(1)

 「うおぉおお、ついにその封筒見るといよいよだって気がするわー。」

教務室にお行儀悪く座りながら、目の前ある封筒の山に対して心の声を出した小百合に、1年の歩夢が楽しそうに突っ込んだ。

「小百合さん、もうちょい色気ある声にしてくださいよ。うおおお、はないでしょ、さすがに。うぉおおお。は。」

「歩夢も言うようになったなぁ。おねーさん、感動だなぁ。」

「おねーさん、じゃないです。感動だなーでもないです。何が『ついに』なんですか?」

嫌そうな口調のくせに口元が全開で緩んでいる歩夢に、小百合が仕方ないなとばかりに話を戻す。

「え、模試の結果でしょ、その封筒。」

「そうですね、模試の結果です。僕はお恥ずかしながらたまにまだ夢にまで見てうなされますよ、それが返ってくる瞬間の。あ、小百合さんがギリギリで出勤することを見越して、膨大な小百合さんのクラスの分をここにまとめた僕を褒めてください。」

「おー。歩夢、エライエライ。」

土曜シフトの1限裏のいつもの緩い雰囲気に、どこかホッとしながら横から口を挟んだ暁史に、歩夢が平然と返す。

「アキ先輩は自分でやってくださいねー。僕のサービスは小百合さん限定です。贔屓です。媚びてみてます。もうなんとでも言いやがってください。」

「は?今から俺、これ、全部抜き出すの?打ち合わせの時、全部準備済みって言ってなかったっけ?」

すごい吹っ切れ方だなーと暁史が苦笑いをすると、すかさずもう一人バイト出勤していた1年の律が拗ねたように付け加えた。

「アキ先輩の分はココにあります。お二人の封筒の束、僕も手伝いましたからね。りっちゃん、今日もスピーチ聞きに行っていいですよね?」

ワンコが戯れているみたいだね、と、至極失礼な感想を漏らした小百合がこれまた苦笑いしながら答える。

「いいよー。歩夢も律もありがとう。で、さっきの『ついに』への回答なんだけど。」

はーぁと、ため息を挟んで小百合は真面目に続けた。

「模試の結果が来ると、生徒たちが判定と偏差値に夢中になって、いろいろ上の空になるでしょ。保護者もその判定の紙っぺら1枚に狂喜乱舞するし。クラス運営に邪魔なことこの上ないわーって意味。」

「りっちゃん、覚えてます。大事なのは判定結果じゃない、もはやその判定の結果が書かれた用紙は捨てていいって言う衝撃の話。」

律が懐かしそうに、どこか得意げに話を引き取る。

「そ、こんなもん、今この時期は正直どうでもいいわ、って言うんだけどねぇ。。。」

小百合は至極迷惑そうな顔でそこまで言うと、話を止めた。

「あくまで、これは私のクラスの方針だからね。私の意見に引っ張られないで、二人とも考えた上で生徒に模試関連の話はしてよね。アキフミみたいに万年上位表彰組の人がどんなスピーチするのか、逆に気になるわ。」

「え?俺?」

「そ、表彰組さん。」

「小百合、その言い方、流石にトゲあるぞ。」

「ごめんなさぁい、、、?」

「謝る気ゼロだよね、小百合。いや、それだから小百合なんだけど。」

ベェっとしたまで出して見せる小百合に、もはや苦笑いの渦ができる。

「俺はねー。うーん。正直、よりいい回答は何かって言うので、回答冊子と見比べてたかなぁ。」

「あー。暁史レベルだと一気にそこまで自力でたどり着くって言うのが。。。悔しいわぁ。何がより良い回答じゃ、こっちは正解も解き方も何なのかまずわかってない状況だったって言うのに。」

ブチブチと続ける小百合に、暁史は鉄槌を下す。

「世界史の記述部分をラテン語でフル回答した小百合には言われたくないけどね。」

瞬間、教務室に静寂が降りた。

「は?小百合さん、何を回答したんですか?」

「歩夢さん、ほら、、誰にでもあるでしょ?若気の至り?」

「小百合さん、意味不明。」

「あはは。」

「りっちゃんの回答が、採点担当者にちょうど古典専攻の方がいて、前代未聞な回答だったって結構有名な話ですよね。授業でもネタになってました。」

「どうしてそんな話になったのよぅ。いいのー。私の話はいいのー。そろそろ上がる時間だわ。私はここで逃げる!!」

「え、ちょっと、小百合さん、その話詳しく!!」

「やだー。歩夢はそのまま何も知らないままでいて!!」

律がこれみよがしにフォローする。

「りっちゃん!!封筒の束は僕が間に合うようにお持ちしますから。スピーチ中に端末任せてもらえます?座席表と併せて配っちゃいます。」

「律―!ありがとー!助かるわー。じゃ、あとで!!」

カツンとヒールを鳴らすと端末を抱えてそのまま小百合は担当の教室にダッシュして行ってしまった。

あれだけ言えるなら大丈夫かなとふっと笑うと、暁史は歩夢に声を掛ける。水曜日に『生徒からフルネームで呼ばれていた』とケイトに聞かされていたから、少し心配だったのだ。

「歩夢も、ほら、不貞腐れてないでいくぞ。」

「だって、小百合さんが遠い。。。」

「小百合はいつだって遠いぞ。」

「え?それ?え???ど、、、どう言う意味?もう、ヤです、このお二人。。。」

「どうもこうもそのまんまの意味だ。仕事だ、仕事!」

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