第33話 卒業試験
断罪アカデミー講堂。
朝の光が高い窓から差し込んでいた。
学生たちはいつもの席に座っているが、空気は普段とは違っていた。
理由は分かっている。
最終授業。
リリスがそわそわしている。
「ついに来たね…」
レオンは冷静な顔でノートを開いていた。
「国家断罪演習」
小さく呟く。
「卒業試験としては、規模が大きすぎます」
フィオナは目を輝かせている。
「国家裁判!」
「最高の舞台じゃない!」
クラリスは静かに手を組んでいた。
王子アルフレッドは机に頬杖をつく。
「俺はまだ信じてないぞ」
「卒業試験で国家断罪とか」
「普通の学校じゃない」
そのとき。
講堂の扉が開いた。
レティシアが入ってくる。
教壇に立つ。
そして静かに言った。
「全員揃っていますね」
学生たちの視線が集まる。
レティシアは黒板に大きく書いた。
卒業試験
そしてその下にもう一行。
国家断罪演習
講堂がざわめく。
王子がすぐに手を挙げた。
「質問」
レティシア
「どうぞ」
王子
「卒業試験で国家断罪?」
「正気ですか?」
講堂から小さな笑いが漏れる。
レティシアは真面目な顔のまま答えた。
「はい」
短く言う。
「実戦です」
王子は頭を抱えた。
「やっぱりこの学校おかしい」
レティシアは説明を続ける。
「今回の演習では」
「実際の事件を扱います」
学生たちは姿勢を正した。
黒板に次の言葉が書かれる。
対象事件
レティシアは言う。
「王国高官の汚職事件」
講堂が一瞬静まり返る。
レオンが眉を上げた。
「高官…」
リリスも驚いている。
「いきなり国家レベル?」
フィオナは興奮している。
「スケール大きい!」
レティシアは続ける。
「今回」
「皆さんは断罪官補佐を担当します」
そして黒板に名前を書いていく。
レオン 証拠分析
レオンは小さく頷いた。
「了解です」
クラリス 心理分析
クラリスは静かに言う。
「任せてください」
フィオナ 証言整理
フィオナは手を上げた。
「舞台監督ですね!」
レティシアは少し考えてから頷いた。
「……近いです」
次。
リリス 人間関係調査
リリスは目を丸くする。
「社交界担当!?」
「任せて!」
そして最後。
レティシアは少し間を置いた。
黒板に書く。
カサンドラ 観察者
講堂の後ろ。
壁に寄りかかっていたカサンドラが小さく笑った。
「監査役ね」
「面白い」
彼女は腕を組む。
帝国の観察者として、この演習を見届ける。
レティシアは最後に言う。
「私は断罪官を務めます」
講堂は完全に静かになった。
本物の国家裁判。
それを授業でやる。
王子がぽつりと言った。
「これ」
「普通に歴史事件になるやつだよな」
誰も否定しない。
レティシアは机の上の書類を持ち上げた。
厚い事件資料。
そして言う。
「では」
「事件を説明します」
学生たちは息を呑む。
レティシアは一枚目の資料を開いた。
そこには名前が書かれている。
王国財務局
上級監察官
王国の財政を監督する立場。
つまり。
国家の金を扱う人物。
レティシアはゆっくり言った。
「今回の容疑者です」
学生たちは資料を覗き込む。
そして。
その名前を見た瞬間。
講堂の空気が変わった。
リリスが小さく呟く。
「うそ…」
レオンの目が鋭くなる。
クラリスも驚いていた。
王子は椅子から身を起こす。
「ちょっと待て」
「この人」
レティシアは静かに言った。
「はい」
そして宣言する。
「王国財務局高官です」
断罪アカデミー。
最後の授業。
国家断罪が――
始まろうとしていた。




