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58:聖装の担い手


「あそこだ!撃て!」


騎士達が(クロスボウ)を構えて魔術の詠唱を行う、そして一斉に射たれた矢と魔術が俺達に迫ってきた。


即座に盾を展開して受けようとするが…。


「“天涙護盾(イージスティアー)”!」


俺とアリアの前に水の障壁が展開されて降り注いだ矢と魔術を防いだ。


アリアはすぐさまルスクディーテを振るって騎士達の進路を炎で塞いだ。


盾の展開をやめて弩に変えると指揮を出していた騎士に向けて射つ、矢は鎧の隙間を縫って肩を貫き指揮を出していた騎士は地面を転がった。


「助かった」


「いえ、私もこれくらいなら」


その後も騎士達の追跡が続くが降り注ぐ攻撃はセレナが防いでくれるお陰で俺とアリアは追ってくる騎士達を無力化していく。


「あれだ!」


それを繰り返し続けてるうちに広場に出ると遠目に西門が見えてくる、西門へと向けて再び次の建物へと跳び移ろうとした瞬間…。


「…っ!?アリア!」


傍にいたアリアを腰に抱えて建物から広場へと跳び降りると同時にさっきまで立っていた建物を白く巨大な斬撃が斬り裂く。


斬り裂かれた建物は砂埃を巻き上げながら崩れていき一瞬で瓦礫の山と化した。


「予想以上の早さだ、まさか我等が追いつくのがやっとはな」


広場に着地してアリアとセレナを降ろすと低い男の声が響き渡る、振り返ると数多の騎士の先頭に輝く剣と盾を手に険しい顔をした男がいた。


「騎士団長…」


セレナの呟きを聞いた瞬間カオスクルセイダーから鼓動を打ったかの様な感覚と共に記憶が流れ込んできた…。








―――――


幾多の矢と魔術で満身創痍となったところに聖剣を手にした団長が歩み寄る、その眼は氷の様に鋭く冷たかった。


…何故、どうして同じ神と教えを信じる者に刃を向けるのですか。


「お前達は教国から脱け出し、機密情報を外部へと持ち出そうとした…その罪は死を以て償え」


…団長、貴方達は何も思わないのですか?今の教国の姿が神を信仰する者の国として正しいと本気で思っているのですか!?


「騎士とは自己を捨て、主の為に命を捧げるものだ、如何なる理由であろうと主を裏切る事は許されん」


私の…俺にとっての騎士とは抗う力を持てなかった者を理不尽から守り!力ある者が道を外そうとするならば正す者の事だ!仕えるべき主が道を外したならば正すのが騎士ではないのですか!?


「…お前ならば次の担い手と成り得たかも知れなかったのだがな、さらばだグラント」


振るわれた聖剣が血飛沫と共に僅かに揺らめいていた命の灯火を消し去る、地面に自らの血が流れると体に感じていた熱も共に消えていった。


…何も成せぬまま終わるのか、何も変えられないまま果てるのか。


目の前の間違いを正す事も、日々を精一杯生きる人達を守る事も出来ないまま…。











―――――


一瞬の間に流れてきた記憶と目の前の男の姿が重なる、気付けばカオスクルセイダーをその騎士が使っていた剣にして握っていた。


「…アリア、セレナを連れて西門に行け」


「待って、私も…」


「俺は奴と戦わなきゃならない」


考えてみれば当たり前の事だった…。


カオスクルセイダーと同化している騎士や聖者達の中に教国の者に陥れられた者だっているだろう、なら騎士団長がこれだけの魂とひとつとも関わってない筈がなかった。


「無茶です!騎士団長のゼノスタンドはあらゆる攻撃を防ぐ無敵の武具です!ベルクさん一人では…」


「なら尚更ここで止めるべきだろう、それにあの程度なら問題はない」


「でも…」


「それに今なら西門は手薄みたいだ、今のアリアならなんとか出来るだろ?」


「…分かった」


アリアは頷くとセレナの手を引いて走り出す、その後を追いかけようと騎士達が動き出した瞬間…。


巨大剣(グレートソード)を追いかけようとした騎士達の前へと落とした。


「なっ!?ぐえっ!?」


「ぎゃっ!?」


「がはぁっ!」


足を止めた騎士達を剣と槌矛(メイス)で叩きのめすと巨大剣の上に乗って鎖杭(パイルチェーン)を騎士達を囲う様に地面に突き刺した。


広場には二の足を踏む騎士達と表情を変えずに佇む騎士団長、そして俺だけが残った。


「死にたくないなら動くな、死ぬ覚悟があるなら…掛かってこい」


ありったけの敵意を込めて吐き捨てる、いつの間にか空は厚い雲に覆われていた…。

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― 新着の感想 ―
[一言] この場合の「主」って「神」か「神の教え」ちゃうんか?教皇とかじゃなくて
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