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57:腐敗した果実(複数視点)


「今すぐ聖女を連れ戻せ!」


大聖堂の一角、その中でも一際豪華な装飾が施された椅子に座り高級な法衣に身を包んだ壮年の男が叫んだ。


「帝国の称号騎士がこの地に来た途端に聖女が部屋を抜け出すなど理由はひとつしかない!帝国は聖女を連れ戻すのが目的だ!」


「ですが聖女様には聖杖がございます、無理に連れ戻そうとすれば相手もただでは済まぬ筈です」


「聖女は情に脆い、家族が待っているだのなんだの言えば騙されて誘いに乗る可能性も捨て切れんだろう!」


教皇の周りにいる取り巻きも似た様な言葉を唾を飛ばして叫ぶ、そして扉の前に立つ者に向けて命令した。


「ガナード騎士団長!今すぐ聖女を連れ戻すのだ!帝国に聖女と聖杖が奪われる事だけはあってはならん!」


「御意」


騎士団長と呼ばれた男は踵を返して部屋を後にする、そして教皇は再び苛立ちを露にして卓を叩いた。


「あの小娘が!聖杖に選ばれたからと言って調子に乗りおって!!」


「ええ!今回の事は目に余ります!聖女と言えど罰は必要です!」


「メルティナめ!やはり聖女に余計な事を吹き込んでいたか!」


教皇達の怒りの声が部屋に響き渡る、彼等は気付いていない…。


セレナの行動に怒りを抱くのは自分達がしてきた事が神に背くものだと理解しているからだという事に。


そしてこれまでの行いが蓄積させてきたものがすぐ傍に迫っている事に…。







―――――


大聖堂の廊下を歩くガナードの傍に副団長を務めるオルディオが駆け寄る。


「団長、正門の閉鎖完了しました」


「ご苦労、聖女の所在は掴めたか?」


「称号騎士が泊まっている宿を特定しました、第1から第4分隊を向かわせています」


「…なら騎士団を三つに分けるぞ、ひとつは聖女様を直接追わせろ。

残りは西門と東門へと向かわせる」


「はっ、指揮はどう致しますか」


「西門の部隊は私が率いる、お前は東門へと向かえ」


ガナードは腰に差した聖剣と左腕の盾…聖装“ゼノスタンド”に振れながら大聖堂の前に並ぶ騎士達の前に立った。


「お前達、相手は聖女を拐かした不届き者だ」


聖剣を引き抜いて掲げる、白銀に輝く剣身が日輪の如く輝いた。


「我等が敵は神の敵、神の敵を我等は討つ」


ガナードの宣言に騎士達は剣を掲げて応える、そしてそれぞれが与えられた指令の下に迅速に動き始めた。









「…ようやくか」


ただ一部を除いて…。


―――――


即座に荷物をまとめて屋上に出る、屋上から下を見ると既に騎士達によって宿は包囲されていた。


「迷ってる暇はなさそうだな」


ぞくぞくと騎士達が集まってきている、騎士達がここまで来るのも時間の問題だろう。


「セレナ、身体能力に自信はあるか?」


「その…走るくらいならなんとか」


「…了解した」


カオスクルセイダーを通じて伝えられる街の情報を元に脱出する方法を考える。


…おそらく正門は既に閉じられている、正門は複数人いなければ開けられない以上は西門か東門からとなるが時間が掛かれば掛かるほどに相手が有利になるだろう。


「アリア、セレナは俺が連れていく」


「分かったわ」


「え?…きゃっ!?」


風の加護(フォローウィンド)”を発動してセレナを抱え上げる、そしてそのまま風を使って跳躍すると離れた隣の建物の屋根へと跳び移る。


アリアも脚に炎を纏って跳躍して後に続く、見上げた騎士達が俺達に気付くがその間に次の建物の屋根へと跳び移っていった。


「このまま西門を目指す、セレナと一緒にこの国を出れば俺達の勝ちだ」


風と炎を纏って駆ける俺達を照らす日に雲が掛かろうとしていた…。

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