27:封印
「かふっ」
エルフォードが血の混じった息を吐く。全身を巡っていた光の紋様は火の粉の様に消えていき、背筋を刺す寒気は感じなくなった。
「……お前は強かった」
半ばまで貫いていた剣を更に突き入れる。エルフォードは崩れ落ちそうになるが俺の腕を掴んで倒れるのを防いだ。
「……やはり強いね、ロウド」
「……お前はハイエンドに並ぶ強さではあった。お前ならば“天に挑んだ塔”を攻略できたかも知れん」
「……だけど、そうはならなかった」
「ああ、お前は死に俺は生き残る。この結果は覆らん」
「……そうでもないさ」
エルフォードが腕を掴む力を強くする。貫かれた胸から光が溢れ俺達を中心に魔方陣が展開されていった。
「これは!?」
「私の心臓が貫かれるのを起動条件にとある魔術を仕込んでおいた……“レアドロップを生まれたダンジョンに封印する”魔術を」
剣に破壊の力を込める。だがエルフォードの身体が崩壊せず未だに俺の腕を掴んでいる事に疑問が浮かぶが理由に気付いた。
「心臓に“神秘を記す者”を!」
「ご名答……君の破壊の力に対抗する概念を付与した」
残った触手が四肢を拘束する。魔方陣は光の線で繋がっていき足下の光が眩くなっていった。
封印の光が足を伝って流れてくる。封印の光はエルフォードにも伝わっており黒い身体は少しずつ白に染まっていった。
「最初からこのつもりだったか!」
「私は君を殺すとは一言も言ってない……」
封印の光が腰まで迫る。剣を引き抜く事も破壊の力でエルフォードを滅ぼす事も出来ず、この状況から脱け出す事も出来ない。
「この封印は担い手である君ごとレアドロップを封じる……私も眠りにつくだろうが君を封印できるのなら躊躇う必要はない」
「何故だ……この状況ならば俺を殺す事とて不可能ではないだろう。何故俺を殺さない」
エルフォードの魔術ならば今の俺を殺せない筈がない。魔術師としての技術と経験なら俺を超えている男が満身創痍の俺の命を奪う術がないなど決して……。
「……君を殺した先に私の望むものはない」
エルフォードが俺の眼を見ながら答える。人の面影を失ってもその眼には変わらぬ輝きが宿っていた。
「道を違えようと……世界を敵に回すのだとしても...…自分の求めるものの為に全力を尽くす……それが冒険者というものだ」
封印の光が首まで迫る。魔方陣が発する光が俺達だけでなく周囲に拡がって照らしていく。
「だから私は……君を、止める!!」
全身を封印の光が覆い封印が発動する。光に包まれた俺は“天へ挑んだ塔”の最上階にある玉座へと縛りつけられると同時に意識が急速に遠のいていく。
(してやられたな……)
薄れゆく意識の中で思うは俺を封じたエルフォードの力への感心だった……。




