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26:人を捨て、命を削って……


 幾つもの光の砲弾が迫る。ひとつひとつに俺を殺せるだけの力が宿ったそれを破壊の力で対抗して捌いていった。


 最初に迫ってきた光弾を斬り裂く。光弾は左右に分かれて背後で爆発すると同時に続けてやってきた光弾を回し蹴りで弾いて破裂させながら次の光弾を尾で上に逸らす。


 光弾の軌道が重なった瞬間に光線で撃ち抜く。その間に剣に破壊の力を込め直して次の光弾を斬り裂いた。

 

(見える……)


 魔力の動き、魔術の構成、空間を掌握したかの如く状況の把握と先読みが、かつてハイエンドと戦った時に感じたあの万能感が俺の全身を隈無く行き渡っている。


 左手の爪で光弾を斬り裂く。するとその後ろにあった光弾が破壊の力を込める暇を与えず迫るが動揺はなかった。


 今ならばやれる。そんな直感と共に魔力を込めながら剣で光弾を受けると魔力を光弾と同じ量だけ流して振り抜いた。


「相殺……いや魔術を斬った!?」


 エルフォードが俺のやった事に驚愕する。破壊の力を使わず魔術を相殺するのは初めての事だったがその感覚を完全にものにした。


「はっ!」


 翼を拡げてエルフォードに向かって真っ直ぐ迫る。幾多もの風の刃が放たれるが刃の間を潜り抜け、剣で斬り払いながら越えた瞬間に地面から炎の壁が噴き上がった。


 咄嗟に翼で身体を覆うが凄まじい勢いで噴き上がる炎は俺を捕えて翼を焦がす。続け様に突風が吹き荒れてエルフォードとの間が再び開いた。


(瞬時に剣で斬れない魔術で対抗してきたか!)


 翼は今ので機能を失っている。治している時間はないと判断して走りながら身体を動かすのに必要な機能だけを治すのに専念する。


 決着は近い。そんな予感をどことなく感じていた……。






 ◆◆◆


(この状況で更に強くなるのか……)


 魔術を斬る。理論上は可能だが卓越した魔力操作と一瞬で魔術を構築している魔力量を正確に見極めなければ出来ないものだ。


 神業と言って良い技をこの土壇場でものにする。ロウドの天賦の才がこの戦いによって更に磨かれている事に恐れを感じながらも二本の触手をロウドの死角になる位置から自らの体内に突き入れた。


(強い……)


 人を捨て、命を削って……それでもなお届かない。今になってようやくそれだけの事をしている私と何度も命を削って戦ってきたロウドとは時間の質と量に差があるのは当然だった。


(私も最初から、諦めていなければ……)


 触手で心臓に術式を刻みながら考えるのは意味のないたらればだった。もしロウドを追うのをやめずにいたら……共に競い高め合う事が出来ていたのなら……こんな事にはならなかったのだろうか。


 刃を交わすのではなく、酒を交わして笑い合える未来があったんじゃないかと……。


(過去に戻れるのならば……君と)


 展開した魔術が破られる。目前に迫るロウドに同質量の炎と冷気をぶつけ合わせて生じた爆発を浴びせた。


 巻き上がる爆煙を突き抜けてロウドが剣を構える。白亜の鎧は半壊し、動く度に血が舞うほどの重傷を負いながらも揺らぐ事のない闘志を宿した眼は私の心臓を捉えていた。


 破壊の光で輝く刃が白亜の軌道を描く。流星の様に空を裂く刃は私の心臓を穿ち、背を貫いた剣身は赤く染まった……。

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