25:竜を殺せし者と神の理に触れし者
傷の治りは遅いが治らない訳ではない。鱗と兜の再生を抑えて脚の傷を塞ぐ事に力を注ぎながら駆けた。
エルフォードが振るった触手から風の刃が放たれて迫る。刃が起こす砂塵と音から数と位置を察知して避け、剣で打ち消しながら距離を詰める。
音とエルフォードの間に幾多もの蔦が生えて絡み合い一瞬で大樹を形成する。翻りながら尾に破壊の力を宿して叩きつけると大樹は粉々に砕けた。
「む?」
砕けた大樹に先にエルフォードの姿はない。水音を察知してそちらを向くと足下に水の円盤を展開したロウドが再び地面から幾多もの蔦を生やしてきた。
蔦が俺の身体に絡みつく。概念が付与された蔦は俺を締め上げるが鱗を隆起させ、全身をヤマアラシの様にして蔦を斬り裂くと光線を発射する。
エルフォードは水の盾を何重にも展開して光線を逸らす。水の盾は鉄砲水となって放たれるが破壊の力を込めた盾で受けると弾かれながらも凌いだ。
「ロウド! 思い出してくれ! 戦うだけが全てではなかった筈だ!!」
叫びながらも展開される魔方陣が砲身の如く連なって輝く。右腕を竜の顎に変化させて構えながら返した。
「そうだ……そして全てを削ぎ落として残ったのが、この道だ」
魔方陣の光線と竜のブレスが衝突する。互いの光が拮抗するがやがて限界まで膨れ上がった力は行き場を失くして爆発を引き起こした。
剣と爪で地面を抉りながら止まる。エルフォードも幾多の防壁を展開して爆発から難を逃れていたが全身を巡る紋様が僅かに明滅していた。
「その魔術、どうやら消耗が激しい様だな……俺を相手にしながらどこまで維持できる?」
「君を止めるまで……だよ」
エルフォードはそう言いながらも手を翳した……。
◆◆◆
(エルフォードSide)
ロウドに手を翳しながらも思考を巡らせる。“神秘を記す者”は発動している間は常に魔力を消費し続ける。
アビスコードと一体化し、万の軍に匹敵するほどの魔力を得たがそれでも穴が開いた器に注がれた様に失くなっていく。先程の魔術“烈光加速砲”を相殺されたのはかなりの痛手だった。
(だが……まだだ)
容易く倒せる相手じゃないのは分かっていた。自分とは比べ物にならないくらいの死地を越えてきたのも理解している。
(だから……)
削れ。ロウドが死地を越える為に命を削ってきた様に……。
脳を心臓を限界まで動かせ。血と考えを止める事なく巡らせろ。魔力を使い切ったならば生命力を捧げて魔術を行使し続けろ。
今、此処で……。
「君に、追いつく為に!!」
背後に魔方陣による砲を一面に展開する。照準を合わせて一斉に砲撃を放つ。
壊れた兜の下から覗くロウドの顔は笑みを浮かべていた……。




