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飛んでけ!ミラクルマン  作者: リボン
8/11

爺ちゃんの覚悟

又衛門はつなぎの作業服のポケットから携帯電話らしきものを出した。  ピーピーとけたたましく鳴っているのはその携帯だった。


 「爺ちゃん、携帯電話いつ買ったの?」


 「これは携帯電話じゃない。多機能付携帯端末器じゃ。もちろんわしが発明したん物じゃがな」


 「ふーん。で、何で鳴っているの」


 「どうやら、不審者がこの工場内に入った様だ」


 「えっ、不審者?」


 「まあ待て、画像を見てみよう」


 その端末機のモニターには、二人の黒服の男が映っていた。


 「監視カメラを備え付けたの?」


 「まあ、監視カメラと言うより監視カメラ付きハチ型ロボットがとらえた画像じゃ」


 「ハチ型…?何それ」


 「文字通りハチの形をした小さな羽根つきのロボットじゃ。監視カメラを備えたな。その映像がこの端末機に送られてくるんじゃ。そのはち型ロボットの名前をムサシと言うんじゃ」




 「やっぱり奴だ」


 又衛門はその画像を食い入るように見て呟いた。              

 「奴って、ヒョッとしたら今まで話していた高橋?」


 又衛門は頷いた。


 「爺ちゃん、逃げなきゃ」


小屋に戻った又衛門と良太は、木の壁の隙間から工場内を覗いた。

幸い工場には人影は見えない。


「忍び込んだのはどうやら二人だけらしい。奴等は二階の住居に移動したようだ」

端末機のモニターには又衛門の部屋に入った二人の男が見える。部屋の中を物色しているようだ。


 「良太、お前はここを出なさい。後の事はわしに任せろ」


 「爺ちゃん、駄目だよ。一緒に逃げよう。奴らは僕達の家に不法侵入してきたんだ。それなりの覚悟でやって来たんだ。捕まれば、白状するまでキッと痛い目にあうよ」


 「奴等からは逃げられない。蛇のように執念深く追ってくるに違いない。それにわしはこの歳じゃ。逃げ回る生活などまっぴら御免だ。良太にはいろいろと面倒掛けてしまった。勘弁してくれ。自分でまいた種は自分で刈り取らないとな。お前の言う通りじゃ」


 「どうするの?」


 「先祖代々の武器で奴等と立ち向かう」


 そう言って、又衛門は火縄銃を取り出した。


 「無茶だよ、そんなの。そうだ、この僕が来ているこのスーツを着るんだ」


 良太は急いで自分が着ている赤いスーツを脱ごうとした。




 「良太、言っただろう。わしは思う存分命の洗濯をしたのじゃ。もうこれ以上長生きをしたいとは思わん。長く生きるのは色々と大変なのだ。これが潮時だ」


 又衛門は笑みを浮かべた。


 「じゃあ、さらばじゃ。後はよろしく頼む」


 又衛門は止める良太の手を振りほどいて二階にいる高橋の元へ向かった。




 「爺ちゃん」


 又衛門は足をふらつかせながらノタノタと歩いた。火縄銃があまりにも重たそうだ。




 高橋はお線香臭い部屋の中をそこらじゅう探し回っていた。ベッドのマットをはぎ取り、本棚の本は全て床に落ち机の引き出しは開けたまま、中の小物は全て放り出されていた。


 小太りのもう一人の黒服の男は額から汗をタラタラ流しながら言った。


 「兄貴、ここにはないようだ。他の部屋を探そう」


 「そうだな。しかし、あの糞ジジイ、きんをどこに仕舞い込んだんだ」


 そう言った後、高橋は何か焦げた臭いがするのに気付いた。




 「やい!このコソ泥共が」突然声がした。


 目を向ければ、ドアに黒い大きな鉄塊を脇に抱えた干からびた老人が立っているではないか。


 その鉄塊から煙が出ている。


 よく見れば、老人が持っているのは時代劇でよく見た火縄銃だ。


 「やあ、爺さん。何だいそんな物騒なもの持って?」


 「お前達こそ、こんなところで何をしている」


 又衛門は部屋の中にユックリと入った。




 「ちょっと、探し物さ」


 高橋は愛想笑いして答え、小太りの男に目配せした。


 火縄銃の筒は高橋に向けられている。そして小太りの男は又衛門の斜め後ろに位置していた。


 又衛門からちょうど死角になっている。


 小太りの男は背広の内側に手を忍ばせ銃をユックリ出した。


 両手で銃を握りしめ又衛門に狙いを付け始めた。その瞬間小太りの男は悲鳴を上げ銃を手から滑り落とした、


 右手の手の甲にハチが刺さっていた。


 「な、なんだこれは。メッチャでっかいハチが刺さっている!」


 「わしの強い味方じゃ。ハチのムサシと呼んでくれ」




 「爺さん、そう興奮するな。ここは、少し話し合おうじゃないか」




 「話す気もない癖に、お前達が欲しいのは黄金に輝く金だろうが。それを盗みに来たんじゃろ」




 「盗むなんて人聞きの悪い、チョット拝まさせてもらおうと思っただけさ」




 「あいにく、もう金はないんだよ。あるのはこの鉄の固まりさ」


 「分かった、じゃあもう失礼させてもらうよ。だからその物騒なものをどけてくれないか」




 「もう二度と来ないことを約束するか」




 「ああ、もちろんさ」




 「じゃあ、失礼するよ」


 高橋は体を反転させ後ずさりしながらドアに向かった。




 又衛門の腕の筋肉が限界に達したのか、それとも高橋達が素直に退散してくれることで気が抜けたのか、火縄銃の重みで筒がずり下がり銃口が床に向いた。


 高橋はそれを見逃さず、直ぐに又衛門の背後に周り又衛門の首を腕で締め付けた。


 火縄銃は床に落ちた。




 「爺さん、狙ったらすぐ引き金を引かなきゃあ。相手は何人も人を殺している人間なんだぜ」


 高橋は又衛門の耳元で囁いた。

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