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【40】チキンカツサンド



ギネス師団長の執務室を出て、騎士団の食堂の調理場を訪ねた。

「エルファミア嬢どうしましたか?」


私が調理場に入ると、料理長のマルセルさんがすぐに声をかけ走り寄ってきた。


「今日の昼食は何かな~と思いまして、覗きに来ちゃいました」

「ふふ、今日は鶏の香草焼きか白身魚のバター焼きのどちらかですよ」


なるほど。鶏も白身魚もどっちも好きだ。

でも今日は鶏の気分だ。

でも香草焼きより食べたい物がある。


「出来れば鶏肉を分けて貰えないですかね」


マルセルさんは、また私が何か作るのだろうとすぐに気づいたようで「どうぞ、どうぞ」と笑顔で鶏の胸肉を二枚差し出した。


「こちらの調理台にどうぞ」と空いている場所へと一緒に移動した。そして私の隣りから動こうとしないマルセルさん。


何作るのか近くで見たいって事ね。後で教えるよりリアルタイムで工程を覚えてくれるならその方が楽でいい。


それにしても近くない?


何故かずっとニコニコと微笑んでいるマルセルさんに包丁を借り、包丁の背で鶏肉を軽く叩き始めると「よくご存知なのですね~」と真横からマルセルさんの感心した声が聞こえた。


軽く叩いた鶏肉を1.5センチ程の厚さでそぎ切りする。

そぎ切りした鶏肉それぞれの表面に塩コショウを適当に振り、小麦粉をまぶした。


昼食の仕込みをしている料理人達も、自分の手は止めずにチラチラと見ているようだ。包丁使っている人は危ないからちゃんと手元を見て!


「マルセルさん、卵とパンをいくつか貰っても良い?」

マルセルさんはすぐさま卵とパンを用意し、私に渡し定位置の真横に着いた。

なぜ真横?!と若干気になるマルセルさんは無視して、卵とパンを受け取ると、卵はボウルに溶きほぐし、パンは平たい皿の上で細かくちぎった。

「この細かくしたパンは何に使うのです?」

「これは、こうしてこうすると衣になるんです」

言いながら、小麦粉をまぶした鶏肉を溶いた卵に一度潜らせてから細かくしたパンが入っている皿に移し、鶏肉全体にパンを纏わせて見せた。


マルセルさんは、ほほぅと言い、この後はと言いたげに私の顔を覗きこみ目線を送ってきた。


だから近いって。


調理場を見渡し少し深さのある鉄鍋を見つけ「これ借ります」と、その鉄鍋に底から2センチ程度の量の食用油を注いだ。


「油をそんな大量に?!」

「この油を温めたら、この中にこのパンをまぶした鶏肉を入れます」

「あ、油の中に?!」


手を鉄鍋の上に翳すと、だいぶ温まってきたのが分かり、そこに鶏肉を静かに入れた。


ジュッ、ジュワジュワジュワジュワ

いい匂いが漂い始める。


「とてもいい匂いですね~」

鼻をクンクンさせているマルセルさん。


まぶしたパンの側面がキツネ色になった頃に裏返し、もう片面も綺麗なキツネ色に仕上げた。


油から取り出した鶏は油を切るために、なるべく立てて皿に並べる。

油を切っている間に、パンにバターを塗り野菜を挟み、そこに鶏を乗せ、白身魚のバター焼き用に作ってあったトマトソースを少し貰ってかけ、最後にマヨネーズをスプーン一杯分乗せて完成!


チキンカツサンドだ!


兄二人の分、ギネス師団長とエドガー騎士団長の分も作り、残りでマルセルさんの分も作り「どうぞ」と差し出すと、目を輝かせ受け取り、お礼だと言わんばかりにメレンゲクッキーの入った紙袋を私に渡し、我慢できない様子ですぐさまチキンカツサンドに齧りついていた。


おやつだラッキー!後で食べよう。


「んんー!鶏肉にまぶしたパンがサクサク!この周りのパンで鶏の旨味を閉じ込めたと言う事ですかね?トマトソースとマヨネーズとの相性も良いですね~」


うんうん、チキンカツ美味しいよね。

トンカツよりあっさりしているから結構食べれちゃうんだよね。


周りの料理人達が、美味しそうにチキンカツサンドを食べるマルセルさんを羨ましそうにジッーと見ていた。


マルセルさん、ずっと私の真横で作る工程を見ていたからもう教えなくても作れるね。

他の料理人達は、昼用の香草焼きの仕込みを進めてしまったから諦めたようでため息を吐いた。


夜にでも料理長が作ってくれるよ、たぶん。


「これ白身魚でも豚肉でも美味しいから今度試してみて」


マルセルさんはチキンカツを頬張りながら、何度も首を縦に振っている。


後から食堂にやって来た兄二人とギネス師団長とエドガー騎士団長に、有無を言わさずチキンカツサンドを出した。


鶏か魚かなんて選ばせあげない。


でも四人は出されたチキンカツサンドを美味しいーと喜んで食べてくれた。



自分で作って言うのもなんだけど

チキンカツサンドは本当に美味しかった。

今度は手間がかかるけどコロッケも捨て難いな。


色々な揚げ物に思いを馳せる

昼のひと時であった。





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