二月三十日 尻尾
六一日目です
星暦二千百十一年二月三十日 月曜日
お早うございます。
軽くランニングを終えてきた所です。
着替えて朝ご飯。
カレンダーを見て改めて思ったんだけど、二ヶ月が過ぎるんだ。
いやー。なんか色々あってさ。
二ヶ月で経験する事件の数じゃないよね?
重役ペアと元受付ペア、姫の五人はまだ戻ってこない。
「戴きます」×六人
今朝も、何も言わずとも、朝食が食卓に並んでおりました。
ウイー。有り難う。
そして、みんなの学園登校準備が整った。
「行ってきます」×六人
「イッテラッシャイマセ」
ウイーのお見送りで出発です。
「なんか、間違ってる気がするんだけどなー」
ユリカがぼやく。
「あるがままに受け入れるべき」
ミュウの言う通りだ。
公園の入り口に到着。
ツイッギーにご挨拶。
「お早うー…って、ツイッギーじゃない」
「オハヨウ ゴザイマス。 ワタクシハ トウガイチク タントウキ メンテナンス ニ トモナイ ハケン サレタ ダイガエキ デス」
「ああ、そんな時期なのね」
納得した様子のサリー。
メンテナンスか。なんかそれらしい事、最近聞いた記憶があるな。
「そうなんだー。代理、ご苦労様ー」
「今日一日お願いね」
「頑張って」
「ガンバ」
みんなも口々の声を掛ける。
「それじゃあお仕事お願いね」
と手を振れば、片手だけど振り返してくれた。
「初めて接触する個体の筈なのに、始めから好感度高いわねー」
サリー。ふつーですよ。ふつー
「絶対違う」
酷いな、ミュウ。
騒ぎつつ学園に到着。サリーと別れてホームルームへ。
「お早う」×五人
「お早う」×沢山
「さつきちゃん達は?」
早速ジーナと聡美が寄ってきた。
「いちおー会社関係者だからー、お城に監禁されてるよー」
「「可哀想ーだ。あはははははははははははははははははははは」」
ユリカの酷い返しに哀れみの言葉と共に爆笑する二人。
どっちに対しての爆笑なんだ? ユリカか? ユリカの台詞にだよな?
「ユリカちゃん達は行かなくって良いの?」
リーファも寄ってきた。
「あたし達はー、姫野グループの関係者じゃないからー」
あれ?
「え?メンバーズって姫野の関係者でしょ?」
だよね?
「違うよ? メンバーズクラブは姫野グループからの依頼で設置してる独立した組織の事務所だよ。さつき達はどっちにも所属してるってだけー」
ユリカ? 初耳なんですけど?
「あり? 鹿乃子に話してなかったっけ?」
小首を傾げ、口元に人差し指をあてたポーズで見つめてくるユリカ。
ぱちーん!
いい音がした! 思わずユリカの後頭部を平手でぺちっとな。
「いーたーいー!」
「「「「「「あはははははははははははははははははははは」」」」」」
ジーナ達に加えてNINJAコンビとミュウが爆笑。
ユリカは後頭部を両手で押さえて涙目に。
「鹿乃子ー。素の力が凄いんだからさー。手加減プリーズー」
そういった文句はちゃんと必要な事を説明してから言え。
「横暴だー! 扱いがひーどーいー! 待遇改善をよーきゅーするー!!」
却下だ、却下! ほれ! さっさと説明。
この間、周りのみんなは笑いっぱなし。
一片の心配すらされてないユリカって…
んで、でっかい涙を目にためたまま始まったユリカの説明によると、何でも、始めはNGOみたいな感じの組織だったみたい。
遺児や孤児、難民の救済や迫害されている能力者の保護、不当な扱いを受けている人の保護活動をしたり、教育して社会復帰の手助けをしたり。
そういった人の中から、政府や大きな会社、軍なんかで要職に就く人が出始めて世の中も安定してきた所で、対価を受けて依頼された事案の対応を行う部門を作って。
依頼内容の正当性を調べたり、実際対応したり、関係するいろんな手続きを代行したりと部門が増えて、最終的に今のメンバーズが所属する組織になったんだそうな。
姫野グループは、初期からそんな活動に参加していたために、メンバーズや関連組織へ同時に所属する社員が多いらしいよ。
で、此所のメンバーズクラブは、姫野グループからの恒久的な依頼で、学園の能力保有者の指導や、星系のガードなんかを行うために設立されたモノなんだそうで。
結果、姫野グループの役員と知己の有るメンバーがメインで配属されているとの事。
さっさと説明しておけよ。そんな大事な事柄。
口を尖らせて、上目遣いの涙目で睨んでくるユリカ。
「鹿乃子、細かい事はゆっくりで良いって言ってたじゃんかー」
あ!
言ったな。確か、一辺に聞いても混乱するからって。そのうちで良いから教えてとかも。
「じゃあ、あたしが怒られるのおかしくないかな?」
「ごめんなさい」
机に額を擦り付けて謝った。
「許す」
あっさりだ!?
甘々だな!
周りの笑い声が一段と大きくなった。
笑顔に戻ったユリカの頭をなでなで中。
始業のチャイムが鳴ってなばちゃんがやってくる。
みんなも自分の席に戻る。
ユリカがわたしの机の横に自分の机を引っ張ってきた。
そして、わたしに向かって頭を差し出す。
撫でろと?
なばちゃんは、しばらく何か言いたそうにしてたけど、やがて諦めた。
もうちょっと頑張ろうよ。クラス担任。
結局、ショートホームルームが終わるまでなでなでは続いたのだった。
やれやれ。
お昼に連絡が来て、今日、会長も副もクラブルームに行けないんで活動は休み。
なので、授業が終わって帰宅中。
公園を突っ切って出口付近。
「カノコ サマー」
ツイッギーの声だ。もう戻ったのか。
「ただ今。ツイッギー…って、尻尾ー!!」
尻尾が生えてるー!
わたし以外が決壊中。
ツイッギーの背後で、でっかいふさふさの尻尾がわっさわっさと左右に振り回されてるよ。
狐の尻尾! 犬じゃ無いんかい!! イヌ科だけどさ!!!
どうしてこうなった!?
「はー笑ったー。ツイッギー、耳がないよ耳ー。今度は耳付けて貰おうねー」
おい! 余計な事言うんじゃないよ!! ユリカ!!!
「リョウカイ シマシタ! ジカイノ メンテナンスジニ カナラズ」
ビシッと敬礼して返すツイッギー。
あぁ。これ、絶対どんどん増えてく奴だ。
狐の尻尾の次は狐耳。
次は何になるだろう。
ヒゲ? 毛皮? 肉球?
もうタウンスイーパー辞めて狐のタウンキーパーに転職すれば良いんじゃないかな。
「ワカリマシタ! ショウジン イタシマス。カノコサマ!」
「本気にするんじゃないよ! 冗談だから!」
「目指せ。九尾の狐」
「煽るなよ。ルミ…」
「あはははははははははははははははははははは」×五人
「アハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハ」×一タウンスイーパー
…はぁ。
先に帰ろ。
ポテポテ歩き出したらみんなが追いかけてくる。
「鹿乃子、ツイッギーに何言ったの?」
隣に並んでユリカが訊ねてきた。
そうかー。わたしがやらかした事は確定なのかー…
「いや、あまりの懐き具合に、尻尾が有ったら振り切れそうだなって…」
「あはははははははははははははははははははは」
痛い痛い。背中が痛いよ。ユリカ。
お家に到着。
「ただ今」×六人
「オカエリナサイマセ」
おぉう。タイミングバッチリのお出迎え、有り難う。ウイー。
で、背中から生えてるの…何?
「カノコ サン ガ シッポ ノ ハエタ たうんすいーぱー ヲ オノゾミト キキマシテ。 ビンジョウシテ ミマシタ。 イカガ デ ショウカ」
と言って、くるりと一回り。
小首を傾げて、どう? と詰め寄ってくる。
ボディーカラーの長ーい猫シッポがくねくねと。
似合ってる、似合ってる。
今度、耳も付けて貰うと良いんだよ。
でも、なんで先端が二つに分かれてるのかな? ウイー。
それ以前にさ。何処からその情報仕入れたのか、じっくり聞きたいんだけどさ。
まあ、他の五名様。丸くなって爆笑中。
誰かー。何がどうしてこうなったのか教えてくれー。
もう、いいや。玄関の騒ぎはほっといて部屋着に着替え。
夕飯までまだ時間が有るんで課題をちゃっちゃと片付ける。
ウイーに呼ばれて、みんなで夕飯。
ウイー。器用に猫シッポも使って給仕してた。
それを見たユリカとかおりが爆笑してたけど。
夕飯を終えて一息入れたらゲーム部屋へと連行されまして。
ログインしていつものメンバーと合流。
ミュウが、ツイッギーとウイーの事を話しちゃった。
《明日見に行く!!》×六人
そうなると思ったよ。
二十一時までみんなで冒険。
ログアウトしたらお風呂と明日の準備に就寝準備。
はあー。精神的に疲れたー。
おやすみなさい。
六二日目に続きます




