余話 第四話 義光公方よりも鮭を取る
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その後最上家は着実に勢力を拡大していく。そしてついに庄内地方の要衝酒田に手の届くところまで来ていた。これは家臣とした鮭延秀綱の働きも大きく庄内地方を治める大宝寺氏を押し込んでいた。
「酒田まであと少し、酒田を抑えれば海の道が開ける(新しい鮭が手に入るぞ)!」
「すでに大宝寺は死に体、早急に酒田を抑え、上杉が出てくるまでに掌握しませんと」
氏家守棟は義光の本質(鮭好き)にまだ気が付いておらず頼もしい当主と喜んでいた。
「判っておる、秀綱、先鋒は任せる。大宝寺に引導を渡すぞ!」
「はっ!お任せください(鮭の為に)!」
鮭延の猛攻によりしぶとく抵抗した大宝時義氏だったが義光の調略で家臣たちの裏切りが頻発して進退窮まり遂に討たれたのであった。
◆
酒田湊を支配した義光は湊を整備して民を鎮撫して大宝寺氏時代より善政を敷いたので民は喜び活気は以前よりも増していた。そこに義光が待ちに待っていた鹿介が酒田にやってきた。
「義光殿お久しぶりです。酒田湊を制された由おめでとうございます」
「いやあ、我が家も湊を持たねばなりませぬからな。それと、鹿介殿!あのれしぴですが、全て制覇いたしましたぞ!」
「え、そ、そうですか。それは重畳でした(30種もあったのに全部か!)」
「それでですな、また新しいものは無いかと思いましてな」
「そうですか、丁度蝦夷地で手に入れたれしぴがありますのでこれをどうぞ」
「なんと!それは!!♪♪!!」
「ええ、(どんだけ鮭が好きなんだよこの人)」
嬉しそうに舞い踊る義光を鹿介は内心ドン引きであった。
◆
丁度酒田湊には鴻池の蝦夷からの船が入っており荷揚げが行われていた。その産物の内かなりの部分が鮭とその加工品であった。
その鮭を新レシピで堪能する義光主従。
「我が領内の鮭が至高だと思っておったが蝦夷地の鮭もすばらしいのう」
「全くです、鮭川の鮭こそが全てだと思っていた過去の自分をぶん殴りたいです」
食べながら義光と最近は側近扱いされる鮭延秀綱は鮭の美味しさにうっとりとしている。
(大丈夫か?この主従)
内心あきれていた鹿介は傍に居た守棟と盛大にため息をついたと伝わる。
(殿、まさか今までの振舞は全て鮭の為であったと言うのですか!)
氏家守棟はとうとう真実にたどり着いた。結果を出しているが故に怒る事も出来ずさりとてほめるべき要素が全くない振舞に頭を抱えたと言う。
守棟は伊達に嫁いでいた義光の妹にも伝えた。手紙に半信半疑であった彼女も義光から届いた手紙に書いてあった最上家の為伊達と離縁して鹿介の所に行って欲しいと手紙が来たことで完全に判らされた。そして彼女の返事は{何寝ぼけてるんだクソ兄貴}と苛烈な物であったと伝わっている。
◆
こうして鮭を求めて(結果的に)勢力を拡大していた義光に激震が走る。なんと都から前公方足利義昭が蘆名の所に迎えられたのだ。
蘆名は前公方の名を持って坂東以北の大名たちに織田と味方する勢力を討つために合力するよう書状を送ってくる。純粋に公方の味方をしようとする大名は少なかったがこれを勢力拡大のための好機と捉えたもの、織田に融和的な北条を嫌う関東諸将も加わり兵力は急速に膨れ上がる。その中で陸奥で唯一と言っていい程織田方を鮮明にしていたのは最上ただ一家だけであった。
「殿は山中殿に心酔しておられ山中殿は織田殿と懇意で重き役職に付いていると聞く。このままでは周りの大名から攻め滅ぼされよう、辛うじて大崎や葛西は旗幟を鮮明にしておらぬ。安東殿は交易で山中殿と関係が深い故こちらも織田寄りの中立、だが伊達が義姫様のお力をもってしても抑えきれず公方様へ付くと旗幟を鮮明にした。奥州探題の名、それほど欲しいか、これは殿に翻意していただかないと」
憂慮した氏家守棟は義光を説得しに行くのであった。
その頃義光は鮭延秀綱と新作れしぴの鮭料理を堪能していた。
「ううむ、この味は今までになかった食べ方じゃまさに目からうろこじゃな」
「真に、又鮭の奥深さが判り申した、どこまでこの深さが続くのか最近では恐れを感じますな」
「恐れか、儂は恐れよりまだ見ぬ鮭が見たくてたまらぬのじゃ鹿介殿が手配してくれておる{鮭の王}が待ち遠しいのう」
主従が鮭を楽しんでいるとそこへ氏家が足早に現れる。
「殿!一大事でござる、伊達が公方に付きましたぞ、このままでは伊達を中心とした兵にここが攻められます、直ちに対応せねば」
「そうか、伊達が動いたか、鮭延よ織田方の動きはどうじゃな?」
「すでに兵を集め坂東に向けて進発したと報せが、山中殿も動いている由」
「だそうだ、なので心配はいらぬ、それに蘆名や坂東の連中は上杉や武田、北条が目当てじゃ、ここに来るとしても精々伊達勢、守りを固めれば負けはせぬ、時が経てば経つほど我が方有利じゃ」
「左様ですか、では守りを固めるよう殿の御指図があったと伝えまする」
氏家は鮭に浮かれているように見えても的確な読みと動きが出来る当主に恐ろしさを感じていた。それはこれまで体験した事の無い気味の悪いものであったが同時に頼もしさも感じられる複雑なものであった。
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