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第十三幕  再び東国へ

 大内輝弘の大内家再興が決まった。元々輝弘の輝は時の征夷大将軍足利義輝からの偏諱を受けており毛利家からの再興の報告に{善き事である}とお褒めの言葉を頂いた事で公認という事になった。これで大内家正統と成ったので大友などが別の縁者を立てて攻撃するのは難しくなった。


 勿論金に物を言わせたのは言うまでもない、世の中金だとつくづく思ったね。


 大内家は流石に尼子と同じ理由で周防・長門は不味いと言う事でそれ以外になった訳だけど、出来れば尼子家のように何か産業が欲しいとの希望だったので、じゃあ筑豊炭田地帯はと思ったのだが今後もここは大友との戦いの最前線になる可能性があるしこの辺りは高橋氏や立花氏他の国人領主たちが健在なので動かすわけには行かない、一所懸命と言う言葉にあるように武士は土地に執着する。下手に所領を動かそうとすると反乱の元である。毛利も嘗て福屋隆兼の所領を交換して反乱を起こされているから特に最前線に近い土地はいじれないのだ。


「ということで輝弘殿の所領は安芸か石見・出雲のどれかにと思うのですが安芸の海岸の辺りはどうでしょうか?」


「それなら矢野辺りはどうかな? あそこは嘗て厳島合戦の前哨戦で毛利が攻め取った所であるしな」


 毛利元就に相談するとその様な返事が返ってきた。所領は千石で尼子の半分だが輝弘の家臣は元々殆ど居ないし、大内旧臣で周防・長門から態々付いていく者も多くは無いから問題は無い。其の辺りは尼子とは違いが出るのは仕方が無い、大内が滅んでから時間が経ちすぎているのも有るのだろう。帰農していた僅かな元家臣が応じて付いていく事になった。


 矢野ならば塩田を作って製塩をすればかなりの収入になる、安芸国での製塩は入浜式塩田が出来るし、江戸時代には{十州塩田}として作られた{十州塩}は人気だったはず、あの赤穂の塩も其の中に入っている訳だからこの時代に作れれば上方へ送れば売れるはずである。


 燃料は石炭を加工した練炭を使えば石炭の中の硫黄成分を消石灰で固定して臭気を押さえることが出来て環境にも優しく木を伐採しすぎて禿山を作って洪水などを起こすなどが無くなり良い事尽くめである。決して練炭の材料である石炭と消石灰が尼子領で取れて居るからでは無い……うん、そういう事にしよう。





「そろそろ新商品の売り込みに行こうと思う」


「と言いますと東国ですかな?」


「そうなるな、物によっては大友に流すのは不味い」


 贅沢品を高く買ってもらうのは構わないが、戦略物資と言うべき漆喰や練炭は売りたくない。神屋にも大友には流すなと言ってある。守るかどうかは今後の付き合いを図る指針になるだろう、博多には島井もあることだし。


「では、御供します」


 源四郎が御供なのは判るし、えんも風魔出身だから東国は庭のようなものだろう、だが手を挙げたもう一人に俺は胡乱な目を向ける。


「いや、お前は留守番だろ」

「そんな~お役に立ちますよ私は~」


「例えばどんな所だ?」


「それは~鹿介様の夜の相手を~ほげぇ!」


 戯けた事をほざく幼女にしか見えない歩き巫女の頭に拳固を落とす。


「戯けた事はもう少しいい物を食って育ってから言うんだな」


「非道ーい、もう十分に育ってるし! これでも杵築大社の巫女なんだからね」


 薄い胸を張ってぷりぷりと怒る彼女は源四郎の末娘の咲と言う。


 彼女は鉢屋が寄こした俺の嫁候補なんだそうだ。同族とはいえ風魔が統領である小太郎の娘であるえんを送ってきた事に彼らもだれか側に置くようにという事で選ばれたそうである。


 ちなみに源四郎の父親であり鉢屋の長である弥ノ三郎からの推薦である、確かに相当の術者であるのだが見掛けが幼く見えるのでどうもその対象としては見難いのである。この世界では合法であってもね。


 因みに千明の許可は既に出ており「鹿介様の周りには多様な花が必要です」とのお言葉であった。


 それを聞くと物凄い大物ではないのかと思ってしまうね。


「鹿介様に抱いて貰うにはもう少し背と胸を育ててからにしましょうね」


 えんの挑発に簡単に嵌るちみっである。


「むきぃーでかいだけの胸になんか負けないんだー 鹿介様! 鉢屋に伝わる秘儀を極めたこの咲の技を今夜試していただいて……」


 危ない方向へ向かおうとする彼女に再度拳固を落として、俺は宣言する。


「馬鹿なこと言ってないで早く支度するんだな。少し長旅になるからな、判ったか?」


 涙目になっていた彼女はその言葉の意味を瞬時に悟り駆け出していった。


「お優しいんですね、まあその優しさに惚れたんですけどね」


 そう言ってえんは笑って俺の背中に顔を埋める。その下の柔らかな膨らみが気持ち良いのは内緒だ。



「そうか、東国へ行くか」


「はい、そろそろ商いを広げる頃合いかと思いまして」


「鹿介のお陰で毛利は博多を押さえる事が出来た。これ以降は大友や少弐を滅ぼした龍造寺との間でどうなって行くのかまだわからないがな」


 元就の元に赴いた鹿介は東国へ向かうことを話した。元就は鹿介の活躍を認め鹿介に毛利領内での幾つかの特権を与えることを約束した。


「そなたが戻るまで生きて居ればよいのだがな」


「御気の弱いことを、曲直瀬道三殿の治療で持ち直したではありませんか、才菊丸殿も生まれた事ですしまだまだ元気にしておられる」


「そう言ってもらえると力が出るな、王乳ローヤルゼリーを食してそなたが帰って来るのを待つとしよう、土産話を楽しみにしておるぞ」


「誓って面白き話を仕入れて参りましょう」


 史実では後数年もしないうちに元就は亡くなるはずである、鹿介の贈った品々が効果を発揮してくれるのかは、贈った本人にも判らないのであった。


 こうして鹿介一行は安芸を出発し東上した。久々に会う旧知の人たちがどうしているか期待と不安とが混ざった旅立ちであった。




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