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居酒屋

 近藤は結納や祝儀の計画まで立てており、真純はどう返事をしていいか困っていた。 

「はぁ…」

「ため息は魂を削るぞ、真純。」

 庭の掃除をしていた真純に、藤堂と永倉と原田が話しかけてくる。

「何しけた顔してんだぁ。よし、真純も今晩一緒に飲みに行こうぜ。」

「えぇ?いいんですか?」

「いいの、いいの。土方さんに何か言われたら、俺が話するから。」

 夕方、屯所の門に集合する中に沖田と斎藤もいた。

「やぁ、真純ちゃん。君が行くって聞いたから僕もついていくことにしたよ。」

 真純は斎藤の方を見るが、斎藤は何も言わない。

 永倉、原田、藤堂、沖田、斎藤、真純の6人は島原に行く。真純はモヤモヤした気分を晴らすように、お酒を飲む。

「真純、もっとゆっくり飲めって。」

 原田が心配する。

「なんだか、今日は飲みたい気分なんです。」

「何かあったのか?」

 藤堂も真純の様子がおかしいことに気づく。真純は迷った挙句、酒の勢いで縁談の話を始めた。

「原??しらねーなぁ。」

 永倉はあっけらかんとしている。

「俺はそいつを天覧試合の時に見たことがある。若いが賢い藩士だ。その縁談、悪い話ではない。」

 斎藤が冷静に答える。

「でも、近藤さんも勝手だよなぁ。いくら俺たちが会津のお預かりだからって、そこまでしなくたってよ。」

 藤堂は納得いかない様子だ。

「だが真純、家族はいいぞ。お前も誰かと所帯を持つといい。」

 原田が照れくさそうにいう。

「お前は身寄りがいないんだったな。なら、なおさらだ。もう、女に戻ってもいいんじゃないのか?」

 と永倉。

「けど、真純が迷ってるってことは、他に誰か好いてる男がいるってことか?」

 藤堂の発言に、一同真純を注目する。

「新撰組のやつか?」

「土方さんか?」

「もしかして、この中にいる?」

 沖田が問いただす。

「平助ってことはないだろうな。」

 と永倉がからかう。

「真純がその気なら、俺も真剣に考えるぜ。けどな、俺たち隊士はいつ死ぬか分からない身だから、夫婦になっても寂しいだけかもな。土方さんだって、もてるのにそういう理由で独り身だって言うし。」

 と藤堂が真面目に答える。永倉は酔いが回って饒舌になる。

「そうだそうだ、所帯持つなら隊士はやめとけ、やめとけ。」

「じゃぁ、どういう人がいいんですか?」

「・・・力士だな。」

 永倉の一言に全員大笑いする。

「真純ちゃんは、新撰組では下っ端隊士なんだから『修行中の身ですから』って言って断ればいいんじゃない。」と沖田。

「どこかで聞いたことあるな、その言い回し。」

 と永倉。

「相手は容保公の側役、しかも局長命令だ。簡単には断れないだろう。これは、相手に身を引かせるしかないんじゃないか。一君はどう思ってるの。」

 藤堂が斎藤に尋ねる。

「さぁな。自分で考えるんだな。」

 斎藤は黙って酒を飲んでいる。

 

 酒をたらふく飲んで一同屯所に戻ってきた。永倉と原田と藤堂の3人は大声で話しながら後方を歩いている。

「こうなったら、その原さんって人、斬っちゃおうか。」

「それはまずいですって。」

「一君だって同じこと考えてたでしょ。」

「武士になりたいなら、武士にふさわしい行動をするんだな。」

 そういい残して斎藤は中に入って行った。

 真純は斎藤の言葉に、決意を固めた。


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