【二十】-1 剣邪完滅
そして同時に、ノーマンの内側で何かが啓いた。
彼女を斬って、剣聖を取り込んだ。
前の歴史で剣邪を倒し、継承した力の解放。
その力が、今、新たな形へと開かれたのだ。
同時に、一瞬でわかった。
この歴史のエルシアを傷つけず、
剣邪だけを引き剥がす方法が。
目覚めた力が、
エルシアを剣邪たらしめているナノマシンを捉える。
彼女を霞のように取り巻く無数のナノマシンが、
一斉に機能を再開させた。
十三歳のエルシアの身体から、
粒子が浮かび上がる。
皮膚。肉。姿。形が、かつての災厄に変じていく。
以前なら、その変貌に絶望を覚えた。
だが、今のノーマンは、違うう。
少女の身体そのものを傷つけることなく、
極小の機械だけが、一粒、
また一粒と集まって色と形を成す。
やがてそれらは、
白そのものとなって、
エルシアの身体に取り憑こうとしていた。
問題ない。
ノーマンは、そう確信した。
「千赤忍法・口寄せの術────血骸の巡礼者」
この時、現れたのは、
かつての剣豪執事の似姿だけではない。
その隣へ。
かつてそうしていたように、
寄り添うように。
剣聖の似姿も顕現した。
剣邪の攻撃に対応できる、
同質の領域へ踏み込んだ存在。
一人では足りない。
だが、今は──
「千赤忍法最終奥義────斬」
口をありったけ開け、
ノーマンが叫ぶ。
それに呼応して、
二つの影が、
宙へ引き剥がされた極小の機械の群れを挟み込む。
互いに向けて、剣を走らせる。
剣戟が交差するたび、
その狭間にあるナノマシンが潰えていく。
13歳のエルシアには、刃傷1mmも刻まない。
超絶的な剣技が、ナノマシンだけを滅ぼしていた。
「SLAAAAAAAAAAAAAAAAAA」
止まらない。
身体も。
運命も。
全てのしがらみに縛られない二人が、
互いに互いへと剣を走らせる。
その流れへ巻き込まれ、
ナノマシンが次々と潰えていく。
「AAAAAAAAAAAASH!!」
言い終えたのと同時に、
エルシアを剣邪たらしめていたナノマシンが、
完全に破壊された。
そして、
力を使い果たしたノーマンは、
そのまま意識を喪った。




