第16話 生贄作戦決行!
「光閃矢ですわ!」
ユスが放ったその矢は、光の速さで飛んでいった。列になってユスに襲いかかろうとしていた異界生物は、例外なく貫かれていく。
「『インフィジャール・カリス』」
「爆発ですわね! 爆発矢ですわ!」
ユスが放った矢は、大群の足元に、狙ったように刺さった。
刺さった瞬間、あたりには轟音が響いた。2つの爆発のタイミングがぴったり重なった。そのせいで、鼓膜が破れるほどの音量だった。
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それからしばらくザコ処理をしていた。そのザコは、あるときを境に、一切来なくなった。
「今、砦が揺れた、ような気がしますわ」
「はよ行くぞテメェ! ついてこい!」
ラソラとユスは、スレイが作った階段を登る。
そして、リデソが開けた穴から2階へと侵入する。
「この先じゃねえか? 行くぞ!」
「ええ、わかりましたわ! (これで、お父様を見返してさしあげるのですわ!)」
ユスはそう心に決め、スレイたちの戦いに参加すると決めた。もちろん、ラソラも参加する。
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「もう一度、今度はお前ら2人で閉じ込めてやる!」
ヨアルヴァ影の中へと吸い込み始めた。
「『舞』――風舞円頓!」
スレイは技を放つ。
それは、美しいほどに華麗に飛び回った。
「ええい、ちょこまかと!」
ヨアルヴァは、相当苛ついてるように見える。口調も荒くなり、行動が雑になっていた。
「めんどくさい動きしやがって! 覚えてろよ!」
ヨアルヴァはスレイを捕まえるのが面倒になったのか、リデソだけを中に入れた。
「『震』――央立浮堕!」
もう一度、さっきと同じように床を引き上げた。
「『岩』――岩破勢・鉄超廻!」
リデソはそれと同時に、渦を作った。
「リデソ! 早く出るんだ!」
「うん、急ぐ」
リデソはスレイの手に捕まり、なんとか引き上げてもらった。
「『零』――琉河邏零!」
スレイはその技を、影の中に打ち込んだ。
「この技の温度なら、水なんて一瞬で凍るはず⋯⋯」
スレイにもどうなるかわからなかった。だが、解決策が他に思いつかなかったのだ。
その技の温度を保ったまま、剣先が影の中に触れた。
「行けるか?」
スレイは行けるよう願った。
その願い通り、水は一瞬で凍った。さらに、剣先の周りだけでなく、すべてが凍ったように見える。
「これで、解決」
「氷、溶けないかな?」
そのとき、中身すべてが氷へと化した、影の入り口が消えた。
「俺の予想だと、これは4次元につながってる。最上階のはずなのに、床がなかったからな」
「へえ。そんなとこまで見てるんだ」
リデソはただ感心していた。
「そしてもう1つ、『震』の属性の技が放てたことだな。普通は土でしかできないはずだからな」
「ちゃんと技の特製を理解して、開けてくれたんだね」
「自信はなかったけどね」
そのとき、2人とは別の声がした。
「あ、もう終わっちゃったの?」
この口調、すっかり普段の通りに戻っているラソラだ。
「わたくしの出番はないですわね」
スレイは、そのユスのことを、半目で見た。
「その目、どういう意味なのです?」
「お前、どこに行ってた?」
「ねー、とりあえず行こ」
話の内容を理解していないラソラは、今すぐにでも帰りたそうにしている。
「わかった。歩きながらな」
スレイたちは入ってきたところへ向かい、歩き出した。
「わたくしは説得に行ってたのですわ」
「説得って、誰に、何を?」
「お父様に、古代兵器の使用を⋯⋯」
その言葉を聞いた人全員、同じ反応だった。
「え? 古代兵器?」
古代兵器が実在していたとは。スレイも噂程度に聞いただけの、内容だった。
「あるのか? その古代兵器とやらは」
「ありますわ。『ガトリング砲』ですわよ」
「で、使わないのか?」
スレイの質問に、ユスは静かに首を振った。
「お父様が許可してくれなかったのですわ」
「お父様?」
スレイたちにとって、お父様がいることすら初耳だった。
「あら、知らないですの? かなり名だたる方だと思っていましたわ」
「そんなに有名なのか? お前のお父様」
スレイは、知らなかった。だからこそ、今質問攻めにしている。
「かなり有力な貴族ですわよ。普段は星中を回ってるのですわ」
「今はたまたまここにいたってことか?」
ユスは首を左右に揺らした。違うということだろう。
「ここの城主様が亡くなってから、見張りをって頼まれたみたいですわ。そこから、ずっとここの城主をしていたみたいですわ」
ユスは、なぜか悲しげな表情になった。
「それから、人を雑に扱うようになってしまったのですわ」
「今までとは違ったのか?」
もちろん、とユスはうなずいた。
「今までは、情に熱く、正義感の強い方でしたわ」
たった今、入った場所についた。ラソラはバックしながら見上げていた。
「やっぱ、大きい〜!」
そのとき、砦の中から轟音がした。
その砦は、内部から徐々に壊されていった。
「あれえ? 全然なくなっちゃった?」
完全に崩壊した。もう原型をとどめていない。
スレイは、その姿を見ようと後ろを振り向いた。
そこには、人間の皮を被った、巨大ななにかがあった。
「お前、まさか――」




