第12話 古代兵器の使用を認めるのですわ!
「『もうつながっている』、って、どういうことだよ」
スレイにはわからなかった。
「もうつながっているんだよ。最初からね。で、それがすべての部屋へとつながっている」
「そんなもの、あるわけ」
スレイには思い当たるものが、何1つとして出てこなかった。
「え、ある?」
スレイはリデソに聞く――が、そこにはリデソはいなかった。
「リデソ?」
僕は他の部屋を見て回ることにした。
「あ、いた」
リデソと遭遇したのは、廊下だった。
「こっち、来て」
リデソはスレイに来るように促す。スレイはそれについていく。
******
「多分、これ」
そこは、錬金術師の部屋だった。
リデソが指しているのは、上の方にある通気口だった。
「え、あの中?」
「うん。あの中に何かがあると思う」
4つの部屋にある、つながっている。確かに条件はクリアしている。
「で、どうやって入るんだ?」
スレイは純粋にリデソに聞く。
「え、あ、考えてない⋯⋯あ、僕はだめなんだ。こんなことも考えられないなんて」
地面に膝をついている。どれだけ悲しいのだろうか。
すると、スレイの目の前には、一匹のスライムがいる。
「お前、まさか?」
そのスライムは、ぴょんぴょん飛び跳ねている。
「ラソラについてきたスライムだ。よほどラソラのことが気に入ったんだろうな」
スレイはわけもわかってないリデソに一応説明した。
「じゃあ、頼めるか?」
スレイが聞くと、飛び跳ねた。おそらく了承してくれたのだろう。
スレイは手を差し出す。そこにスライムは乗った。
「じゃあ、頼むよ」
スレイは上の方にある通気口まで手を差し伸べた。
スライムが元気に飛び跳ね、通気口の中へ入っていった。
「さて、これはスライムに任せて、僕らは犯人探しをしよう。どうせこんなことしかできないんだ」
リデソはスレイを廊下へ連れ出した。
「で、どう思う?」
「どう思うと言われても。ここの4人の誰かではなかったりする?」
スレイが聞くも、リデソは首を横に振る。
「下には門番がいて、庶民が簡単に入れる場所じゃない。そしてここにつながる階段が奥の1つしかないから」
リデソは淡々と説明した。
「でも、団長なら、部下を引き連れていてもおかしくないだろう」
スレイがそう言っても、また首を振る。
「おそらくここに部下みたいなやつが入るのは禁止だからな」
リデソは、ここらへんの事情にをとてもよく知っている。スレイはそう思った。
「じゃあ、4人か」
スレイはつぶやいた。
「ちなみにだけどさ、なんでそんなに知ってんの?」
「え、まあね」
リデソはスレイの質問に、曖昧な返事をする。
「あ、そろそろ戻ってきたかもよ」
リデソはスレイの質問から逃げるように錬金術師の部屋に入った。
スレイはあまり追求してこなかった。
通気口の出口には、スライムが待っていた。
「あ、おかえり。なにかあった?」
スレイがスライムに聞いた。スライムは言葉の意味を理解してるのか、ぴょんぴょん飛び跳ねた。
「あったみたいだけど、なにがあったんだろう?」
そのとき、廊下で大きな音がした。
「行ってみるか」
スレイを先頭に、リデソとスライムが続く。
「あ、階段だ」
「え、なんで急に?」
「さぁ。僕なんかにわかるわけないよ」
スライムはなぜか嬉しそうに飛び跳ねている。
「ただ、僕はやりたいことがあるから。先行っていいよ」
リデソは何が言いたかったのかよくわからない。ただ、部屋に入っていった。おそらく犯人を探したいんだろう。
「わかった」
スレイは仕方ないというような顔で返事をした。誰もいない壁に。
スレイは階段を登り始めた。
「おそらく、建物の大きさ的にはここが最上階のはずだが、わからん」
スレイは身をかがめながら、ゆっくりと階段を登ることにした。
******
「お前、今までどこに行っていた? 答えろ」
ユスはその質問に、正直には答えず、理由を述べることにした。
「わたくしだって1人の人間ですわ。自由に生きてもよい権利はあるはずですわ!」
ユスは、力強く訴える。
「どこへ行っていたと聞いているのだ。理由などどうでもいい」
「お父様だって、突然いなくなることがありますわよ?」
ユスは自分のことを棚にあげて、お父様のことを言った。
「今は私のことなど考えるな。どこへ行っていたのだと聞いているのだ」
お父様もユスに負けじと反論する。
「わたくしは、わたくしが生きたいように生きるのですわ!」
ユスは力強く言った。まるで世界へ訴えかけるように。
「場所を聞いている。今は他人のことなどどうでもいい」
お父様の声は凍てつくようで、力強かった。
「お父様、今、こんな親子喧嘩など、している暇はあるのです?」
ユスは思いついたように言った。
「なにが親子喧嘩だ! 私はお前が心配で言っているんだぞ!」
「今こそ、あの兵器を出動させるのですわ!」
ユスはお父様の話を完全無視して言った。
「あの兵器ってまさか、古代兵器のことではないだろうな?」
ユスはもちろんですわと頷いた。
「なぜお前がそのことについて知っているんだ!?」
お父様は少し驚いたような表情を見せた。
「我々が古代語を解読し、作ったばかりの試作品だぞ!?」
「お父様の行動なんて、わかりやすすぎますわ」
ユスはお父様を煽るように言った。
「あの古代兵器は、『ガトリング砲』と呼ばれているそうだ」
「古代の人々は、そんな物騒なものを使っていましたこと?」
「あぁそうだ。ちなみに暗殺者が持っているスナイパーライフルがあるだろ? あれも古代兵器を改良したものだ」
ユスは、気持ちよくなって説明しているお父様の話を遮った。
「使うなら、今しかないですわよ?」
ユスは、高圧的な態度でお父様に迫った。
「あれは試作品だ。まだ試してもいない。だめだ」
「今のこの窮地を覆すには、あれしかないですわ!」
「なにが起こるかわからないんだぞ! それのせいで戦況がさらに不利になることもありえるんだぞ!」
親子の言い争いが始まった。どちらも負けじと口論を続けている。
「ここままだといずれこの砦は落ちますわ! なら挑戦して華々しくして落ちた方がいいのですわ!」
「砦なんか知らん! これは私の砦ではない!」
「たとえどなたのものでも、最後まで守り切るのが、わたくしども一家の運命ですわ!」
今だ止まりそうにない親子喧嘩。部下たちも、止めるに止められなくて困っている。
「わたくしどものために命をかけてこの砦を死守しようとしている者がいるのですわよ!? それを見捨てるというのです?」
「そいつらがどうなろうと私には関係ない! どうせ金目当てに来た義勇軍だけなんだよ!」
「お父様、見損ないましたわ。お父様のために身を挺してこの砦を守ろうとしてくれた民を、見捨てるのです?」
いつになったらこの言い争いは終わるのだろうか。永遠に続いてもおかしくない白熱っぷりだった。
「お父様を信じたからこそ、皆は命をかけてでもこの砦を死守している、取り返しているのですわよ!?」
「それが私になんの関係もない。私はそんなやつらの人生なんてどうでもいいのだ」
これが、大富豪のセリフだ。人間は、金さえ持ってしまえば、簡単に性格が変わる。
「お前が偽名を使って弓使いを名乗っている、そんな情報はもう入手済みなんだよ! これでもなんか文句あるのか!?」
だんだんと、お父様のクズが浮き彫りになってきている。発言からそう感じられる。
「もしこれがバレたら、お前はギルドを永久追放され、辺境の地下監獄で一生を暮らすことになるんだよ!」
ユスの顔が明らかに青ざめた。この世の終わりのような顔をしている。




