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#3

「(何かあったのかな?)」



ある朝、学校に登校してくると、教室へ向かう途中にある学年掲示板の前で、人だかりが出来ていた。私が気になり、近づいていくとそれまで掲示板を見つめていた人達が、一斉に私を見てクスクスと小さく笑い出した。


なんだか嫌な予感がする、その予想は悲しくも当たっていた。



掲示板に飾られていたのは、まさかの私の物理と英語のテスト。赤点スレスレの点数低いのテストを見て、人々は嘲笑っていたのだ。



「なんで……」



そう言葉を漏らすと、小さい笑いが大きな笑いに変わり、その場が笑い声でいっぱいになった。


最近、物が無くなる事が多い。今目の前に晒されているテストも、その中の1つである。



「カルト宗教を信仰してる奴は、やっぱり馬鹿なんだな!」

「可哀想だから、入信しちゃおうかな〜っ」

「カルト宗教信者だってのも恥ずかしいのに、頭悪いの凄く恥ずかしいね〜」



私はその人たちに何も言えなかった。ただ呆然と立って、下を向いて事実から目を背けるのが精一杯だった。自分が撒いた種の結果によるものである為、誰にも助けを求められない。いや、助けを求められる相手もいない。



私がしばらくそのままでいると、ビリビリと紙が破れる音が聞こえた。驚いて目の前の掲示板を見ると、意外な人物によってテストが取り外されていた。



「チッ」



生徒会長はテストを手に持ち、舌打ちをする。周りとは違い、笑う事も、私を守る事もしない異様な会長に、皆は笑い声を止めて様子を伺い始めた。



「いくぞ」

「……。」



一言だけ呟くと、私の手を引いて生徒会室へと連れて行かれた。








「だから勧誘はやめろと、あれほど言っただろう」

「……。」

「悔しくはないのか!」



生徒会室の机に、会長と向かい合って座るとそんな事を聞かれた。見返してやろうという悔しさはない。ただ、苦しい。気を抜くと、胸を締めつけられ、叫びながら泣いてしまうかもしれない。


己の唇を噛み締め、苦しさを耐える。その表情を見てなのか、会長は私の肩を掴んで、感情をあらわにした。



「何故助けを求めない! 何故、苦しいままでいる!」

「私に、お友達がいるとお思いですか。それに自分で撒いた種、自業自得です」



助けられるべき行動をしていない。誰も私を助けようだなんて、思わないだろう。


会長は私の肩から手を離し、大人しく元の席に座るといつもの上からの物言いで喋りだした。



「俺が助けてやる」

「……会長、意外とお人好しなんですね」

「当たり前だ。お前の勉強を見てやる。ついでに、勉強方法も教えてやろう!」



会長は自信満々というか、張り切った顔である。そして少し笑っている。


なんということだろう。私の事を1番嫌っていそうな会長が、私に手を差し伸べてくれるらしい。だか、1つ疑問がある。



「でも、会長は私とは学年が違うのでは?」

「何を言っているんだ。俺も2年だぞ」



そして4組だ。とも付け加える。私は1組で、教室的に離れている。そのため、会長を見かけることはなかったのだ。見下される事が多くて、つい3年生かと思ってしまっていた。


唖然としていると、会長が口を開く。



「勉強は好きか?」

「嫌いです」

「我儘な奴だな。俺が鍛えあげてやる。なんとしてもアイツらを見返すぞ」



あまり気が進まないが、折角救いの手を伸ばしてくれた会長を断る訳にはいかない。今は彼を信じて進むしかないようだ。



「頑張ります」

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