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#1

宗教は全てフィクションです。

とある一軒家のインターホンを押したのは、カルト宗教信者の”花ノ宮(はなみや)ハル”。高校生ながら、活発的に宗教勧誘を行う稀な女子学生だ。



少し待っていると、インターホンから『はい』と応答があり、いつものように彼女は典型的な勧誘を始めた。



「今、幸せですか?」



にこにこと胡散臭く笑いながらそうインターホンに語りかけたが、すぐにブツと音を立ててインターホンの通話が切られてしまった。


このような反応は現代ではあまり珍しくないため、怒りや悲しいという感情はない。居座ってもしょうがないので、ハルは隣の家へ歩を進めて再び勧誘を始める。彼女は、そうやって日が暮れるまで町中を勧誘し始めたのだった。







花ノ宮ハルは稀な経歴の人間である。


両親は交通事故で死亡し、引き取り手がいないので孤児院に入れられた。中学生の時に駅でカルト宗教に勧誘されて、警戒心のないハルはまんまとハマり、町中を勧誘して回った。しかし、孤児院に、秘密裏に活動していた事を最近知られてしまい、高校2年生になると同時に、遠い都会町の孤児院に追い出されてしまったのだ。




「初めまして、花ノ宮ハルです。ミャウロ教の信者として布教活動をしています。よろしくお願いします」



住む場所も変われば学校も変わる訳で、引っ越した初日に花ノ宮ハルは、実は町中を勧誘していたのだ。そして、転校初日。ハルは見事な自己紹介を披露し、早速孤立していた。


周りでは昨日宗教勧誘をしに、何人かの家を訪れていた人だと噂が広がり、誰も彼女に近づかない。









「(思ったより、やらかしてしまったかもしれない)」





新しい学校でも、活発的に素晴らしい宗教に勧誘しようと思ったけれど、ここ数日誰にも話しかけられない。それに分かりやすく、上履きが濡らされているなどの虐めが始まった。


しかし、それもこれも自分で撒いた種なので布教活動はやめない。元々、宗教勧誘というものは、冷たい反応をされるのがデフォルトなので、至って私は気にしない。




「今、幸せですか?」

「うわぁ!本当に勧誘して来たぁ!」



放課後、下校する生徒を狙って校庭で勧誘していた。しかし、毎日何人に勧誘しても、こうしてお化けを見たように逃げられるか、無視が続いている。


他の勧誘方法を考えないと駄目かな、と思っていると肩を叩かれた。



「もしもし。君が宗教勧誘をしている生徒で合っているか?」

「はい。ミャウロ教信者の、花ノ宮ハルです」



新しい学校に転校して、先生以外と初めて会話をした。会話相手は、男子生徒で生徒会長という腕章を腕にはめている。いかにも頭が良さそうな優等生だ。


まさか生徒会長が勧誘に応じてくれるとは思っていなかったが、これはチャンスじゃないだろうか。そう思い、典型的な勧誘文句で彼を勧誘する。



「今、幸せですか?ミャウロ教の信者になりませんか?」

「君、今すぐその宗教勧誘をやめてくれ」

「……何故!」



やっと勧誘が出来ると思っていたのに、彼は私に布教活動を止めるように声色を冷たくして注意をした。



「俺は経町(たちまち)ミコサダ、生徒会長だ。生徒会に連日、宗教勧誘をしてくる転校生がいると報告が入った」

「なんと……」

「皆、迷惑しているんだ。そんな胡散臭い勧誘を止めるように」

「う、胡散臭くなんてないですよ」



苦しい反論をぶつける。生徒会長はため息をつき、まるで顔に面倒くさいと書いてあるかのような表情になった。


私だって、皆を宗教で幸せにしたいのだ。引くわけにはいかない。しかし、ここはこの厄介な生徒会長に、無理やり反対する姿勢を見せても逆効果だろう。ここは、一旦引くべきだ。



「今後は、もうやりません」

「理解が早くて助かる。しかし、ちゃんと監視するからな。じゃあお疲れ」



話が終わると生徒会長は早足で立ち去る。その後、私は生徒会長との約束をさっそく破り、場所を変えて勧誘を始めたのだった。


どうやらこれからは、生徒会長にバレないように勧誘しないといけないらしい。

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