表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
6/7

我、任務に成功セリ

諸事情により少ないです。

 「ではこれから王国騎士騎士隊の適性試験を始める。該当者は前へでるように。」


音響スピーカーのように音が会場を響いた。精霊術を応用しているらしい。


周りをみるとぐるっと周りに観客席が上から見下ろすように設置しており、ローマのコロッセオを思わる。


「試験内容はアルファレックスの討伐、制限時間は特になし。それでは始め!」


エクリアが叫ぶと同時に向こう側の檻がガラガラ音をたてながら開いた。


「グルルッ…」


開いたと同時に出てきた相手は巨大なトカゲを想起させる怪物だった。

皮膚は全身濃い緑色であり、白目のような不気味な瞳には恐ろしさを感じる。目につくのは鼻の辺りに生えている白く太い角だ。


C級モンスター、アルファレックス。それがこいつの名だ。主に森林や丘陵地に生息し、特徴的な大きい角を駆使して獲物を捕らえたり、縄張りに侵入する者に対し威嚇や攻撃をしたりする。

性格は非常に獰猛かつ執拗らしい。空腹時は人間を襲い、村の子供が食べられる事案もあったそうだ。


檻から出てきたアルファレックスは長い舌を出しながら周りを見回していたが、相対する仁の姿を見つけると、流れるような動きで素早くこっちに向かってきた。


「さて初めからアルファレックスお得意の移動攻撃か!?いくら強いとはいえ軽く並みの魔術師を一撃で仕留られる攻撃。どう対応するか試練者!」


観客席から馬鹿でかい声で実況が始まる。見せ場かよ、と悪態をつきたい。


怪物の流動的な動きに焦る気持ちをなんとか落ち着けながらも、手元の騎兵銃に固定弾倉を指し込み遊底を閉め、敵に狙いを定め引き金を引いた。


パーン


「グアアアアアア」


見事、弾は頭の辺りを直撃したようで、アルファレックスは額から緑色の血を撒き散らしながら奇声をあげ怯んだ。


その隙にボルトを動かし2発、3発目と叩き込む。腹、背中と確実に当てていく。体自体は柔らかく、6.5mm弾でも通用するらしい。


「おっと挑戦者、木の棒をだしたと思ったらモンスターがいきなり怯んだ!?どうなってんだ?彼は魔術師いや精霊術師もしかして戦士か!」


会場全体が人の話し声でザワザワする。驚くのも仕方がないだろう。火や水とは違い、高速で発射される弾はいくら視力が優れていても目で追うことは不可能だ。故に属性を予測するのは困難である。


ふと右上の観客席に目を向けると、エクリアの口を半開きにしている姿を見つけた。彼女も他の観客と同じに思っているのだろう。


こちらの遠距離からの予想しなかった攻撃に警戒したのか、アルファレックスは仁から距離を取り回り始めた。無闇に近づくと危険と判断したらしい。無駄に頭の回転が早い奴だ。


「よし、」


相手が遠距離にいるなら銃の利点が働く。四四式を仕舞い百年式機関短銃を出す。これなら軽機関銃とは違い動きが制限されることはない。


30発装鎮されている弾倉を横に差し込み素早く引き金に手をかけた。


「食らえ」


体を崩しウロウロする相手に狙いを定め、引き金を引いた。


ダダダダダダッ


会場に軽機関銃の連続音が鳴り響き、辺りに火薬の臭いが立ち込めた。皮膚を8mm南部弾が無防備な体を襲う。なめらかな緑色の皮はズタズタに引き裂かれ、自慢の角は粉々に割れた。


「ウッギャッギャッアアアアアア」


全身に傷ができ泣き声らしき奇声をあげる怪物。しばらく地面に体を擦りバタバタしていたが、仁を見ると再度唸り声を上げた。予想もしなかった強力な攻撃に腹が立ったらしい。


体をさっきより低くし、高速でスルリと近づいてきた。さっきまで20mぐらいの差があったはずが、一気に仁との距離の差は5mだ。


「うわあ!?」


銃を持っているから余裕だと思って油断していた。だがさすがにあれはヒヤっとした。わずかの時間であの間を詰めたのだ。この速さに対応しきれなくて命を落とした者もいるだろう。


「お、迅速アルファレックスの移動攻撃。どう対応するか挑戦者!?」


緊迫した声を上げる司会者。


「やべえ!」


アルファレックスは口から爬虫類のように細長く、しかし頑丈なギザギザした舌を、仁に向け勢いよく出した。


咄嗟の判断でその場から真横に勢いよく避けた。ゴロゴロと地面に転がりながらも百年式を仕舞う。ちなみに身体能力は異世界へ来てから上昇していた。例えるなら日本兵並みの体力と素早さを持っている。


ギザギザした肉を削りとるようなおぞましい凶器は虚しく空中で空振りした。


「ギョッ!?」


(今だ!)


避けていた際、出しておいた十四年式拳銃を怪物の舌に向け、発砲した。


パン、パン、パン


背中や頭の堅い皮膚と比べ、柔らかい繊維でできた舌は無残に引きちぎられ、貫通した穴からは緑色の液体が生々しく噴き出した。


この怪物の弱点である舌と、体全体に銃撃を受けていたアルファレックスは力尽きた。


「ーーーえ、もう終わり?」


司会者の声が静まり返った会場に響く。



エクリアはあまりの呆気ない試合に思考が追いつかない。アルファレックスは弱点があるものの、素早さと反射神経の鋭さとC級モンスターの中でもトップクラスの強さだ。普通討伐には多人数でそれぞれ役割を分担し、綿密に計画を練り、実行する。なのにこの男は1時間、いや、数分で倒してしまった。


「面白い奴が来たな。」


ボソッと呟いたエクリアは三日月のような笑みを浮かべていた。



評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ