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我、戦ウ

「なんかでかい城が見えてきた。まさかあれ…」


「そう、あれがラフィア王国が誇る古き伝統であるラフィア城。王国内でも一番の目玉で、また王国騎士隊でもある私達の働いている場所でもあるの。」


少し誇り気味にしゃべるフィレア。王国騎士隊は魔術師や精霊術師の中から選ばれるかなりの精鋭部隊だ。少しぐらい誇っていいのかもしれない。


「それにしてもほんとにデカいな。」


周りに高い建物がないせいで余計迫力に写るのもあるだろう。高さでいえばビルぐらいの大きさがある。今からあそこに向かうのだろうか。


「あのさ、城にいったら何すんの?」


単純で素朴な質問を聞いてみた。スカウトされると聞いただけで具体的なことを聞かれてない。


「そうね。立入禁止区域へ無断に侵入したのもあるし、未知の能力を持つ計り知れない強さもあるし…イーナの言うとおり取りあえずラフィア城に同行してもらう。」


「しかし見ず知らずの人を騎士隊に招き入れるなんて随分心が広い軍隊だな。」


たしか犯罪者でも強ければスカウトされると聞いた。いくら腕が立つといっても犯罪者を招き入れるのは危険だ。もしかしたら国内の腕が立つ術師や戦士が少ないのだろうか?


「そうなんだけどね…上位騎士団の方が強ければ誰でもいいっていってるし。それに…」


「それに?」


「スカウトっていっても課せられる過酷な任務をクリアしなければ、入団資格は得られないの。」










ラフィア王国は大まかに分けると三つの軍に分けられている。魔術や精霊術が使える人間で構成される魔術部隊、剣や槍、弓矢を主とする普通部隊、獣人やドワーフ、竜族、エルフなどで構成される獣人部隊だ。


魔術部隊の中でも精鋭だけの部隊が王国騎士隊、それがフィレア達が属する隊だ。


「過酷な任務って…具体的に何?」


「王国騎士団が受けるレベルの任務ね。果たせなかったら不合格。」


口に手を当て軽い欠伸をしながら話すフィレア。どうやらどこの世界にも試験なるものは存在するらしい。


「…」


「どうしたの。まさか怖じ気づいちゃった?」


さっきまて眠そうだった顔だったのに、急に悪戯顔に変わりノリノリに話すフィレア。


「何度でもいうけど王国騎士隊はこの大陸の中でも名の知られた魔術師と精霊術師の精鋭部隊。王直属の守衛隊と同レベルくらい。さすがに上位騎士には及ばないけど最低でも3属性は操れる。それに相当する任務だからいくらヒトシでも一筋縄にはいかないよ?」


よ?をわざと強調し意地悪な笑みを浮かべるフィレア。


「失敗は困るな、いざとなったら陸軍の秘密兵器を…」


「秘密兵器…」


秘密兵器の単語に反応するイーナ。


「秘密兵器?でもまあ、私達が隊を組んで受ける任務を一人で受けなければならないんだよ?多分B級モンスター退治たら最低でも3属性ぐらいないと依頼達成は困難ね。」


属性とはこの世界の火、水、風、光、地、闇の6属性の魔術のことだ。だいたい普通は一属性だが、王国認定の上位術師なんかは4から5属性ぐらい使えることができる。ちなみに精霊術師は万物に存在するマナを取り入れて術を発動させるので魔術師とは別だ。


「ちなみに私は精霊術師、後ろにくっついてるイーナは魔術師で闇魔法が主。そしてラウスは火と…」


「風だ。」


ずっと腕組みをしながらふてくされた顔をしていた金髪の男、ラウスが口を開いた。


「で、不届き者のお前の得意属性は何だ。水か光か?もしかして精霊術師か?まさかないとは言わないよな。」


どちらも当てはまらないんです。と言いたいところだが、フィレアやイーナまで興味深そうに顔を見てくるので、言えるような雰囲気ではなかった。


「えーまあ、火力だから火と光と、えーー地も入るような入らないような。」


「…まさかとは思うがお前異教徒ではないよな?」


仁の曖昧な解答に疑いの目線を向けるラウス。


「いや、…」


「ふん、まあいいか。異教徒だったら叩き切ってやったところだ。」


腰からナイフを取り出し手で回し始めた。どこの世界でも宗教的なことに関しては気をつけなければならない。うっかり禁忌に触れてしまったら首が飛ぶことになるだろう。


「あ、そろそろ着くよ。」


丘陵地を抜けると視野に周りを囲むように建てられた巨大な壁が見えてきた。











 ラフィア王国の首都であるバノン。防衛の為か強固で頑丈な壁が街を囲むように立っている。これは昔、隣国バルスタンスの大規模な首都侵入の際に、当時の政府が大急ぎでつくらせた砦の後だ。今も砦の上に銀色の鎧を着た兵士が遠方を見回し常時警戒をしている。


そして


「あ、フィレア様。」


門に立ち、人々の出入りを見守っていた一人の兵士がフィレア達に向けて声をかけた。


「ご苦労さまです。今日は何かありました?なんせ近頃は物騒なもんで。」


「ええ、一人立ち入り禁止区域を侵入したのを一人見つけたわ。」


そういってフィレアは隣で辺りをキョロキョロ見回している仁を見る。当の本人は初めてお目にかかる異国風の街並みに見惚れているようだ、そして辺りを見渡していたところあるものに目が止まった。


(あれはまさか…!)


目の先にはある女性の頭部だ。女性のフサフサした茶色の頭部にはピンと立っている猫耳が生えていて、耳から目線を落とすと豊満な尻にはフサっとした尻尾が生えていた。他にも町行く人を見ると、極端に尖っている耳が特徴なエルフや人より背が小さいドワーフなどさまざまな多種多族が街を歩いている。


「へえ、彼ですか?」


意外な声をあげた。法を破る者と聞いたから屈強で髭面した悪人顔を予想したのだろう。


「そう。今からラフィア城へ向かうの。」


「そうですか。ではまた。」


フィレアに向け敬礼し、兵士は持ち場に戻っていった。




「さあ、ここを真っ直ぐいけばもうすぐラフィア城なの。」


だんだん歩を進めるとラフィア城の全貌が目に写し出された。近くになるにつれあまりの巨大さと周りへの威圧感にこっちの心が押しつぶされそうだ。


「じゃあ私はスカウトを含めてラウスと上に報告しなければいけないからあなたはイーナと別の場所で待機してもらう。イーナ案内して。」


そう言い終わるとさっさと中に入っていった。


道中ずっと持っていた四四式騎兵銃と九六式軽機関銃をしまい、別の銃を出した。


(ひとまず今はこれだな…)


今、手に持っている銃は十四式拳銃だ。口径8mm、装弾数八発の自動拳銃だ。陸軍将校用としても使われ、国産で安く、当時体が小さかった日本人にとってグリップが握りやすかったりと、WW2で活躍した拳銃である。


短小銃や軽機関銃は性能には文句はないものの、いかんせん重いしデカい。急に襲われた時に咄嗟に対応するのは難しいだろう。

8mm南部弾を装填し手動安全装置をかけるともう先に進んでいったイーナの後を追いかけていった。







「ただいま王国騎士隊戻りました!」


「そんなに固くならないでいいといってるだろフィレア。まあいい…で、何か変わったことはあったか?」


「はい不法侵入者が一人いるんですが…」


「ほう?」


「スカウト候補として連れて参りました。」


「スカウトか…珍しいな。」


頬杖をしながら聞いていた赤髪の女性、エクリア・ナポレットは三日月の如く口元を吊り上げた。エクリアはラフィア王国最強の魔法騎士の中の一人であり、強力な火、土、光、風の三大魔法と鍛錬し鍛えあげた剣筋によって今の地位までのし上がってきた実力者である。炎のような真っ赤の髪と背中にある身の丈ほどある炎剣を見れば、戦い知らずの素人でも強力な実力者であると実感できるだろう。また彼女の強さを見込まれ、ラフィア教皇直属の守衛隊の隊長でもある。

また王国内だけなく諸外国でも有名であり、戦の中、炎剣のエクリアが率いていると聞いただけで逃げ出した兵士もいるほどだ。


「で、そいつはどのような術を使うんだ?」


「いやそれが…」


「どうした何か気になるのか?」


「彼と少し揉めていたのですが…その最中に盗賊に襲撃され、彼、ヒトシも襲われたのですが、未知の武器を使い、数十人を数一気にその場で倒しています。」


「ほう。」


エクリアはその人物に感心し、思わず声をだしていた。数十人を一気に掃討したとなると下手すれば王国騎士並みの強さを持っているかもしれない。


「今どこにいる?」


「別部屋で待機させています。」


「連れて来てくれ。」








イーナと別部屋で数分待っていたがフィレアから呼び出しをされ、今は赤の絨毯がひかれた奥まで続く長い廊下を歩いている。目の前には蒼色の髪を揺らすフィレア、真後ろにはイーナの順で向かっている。

そしてつきあたりのドアに着くとフィレアはドアノブに手をかけ、ゆっくりと開いた。


「失礼します。」


「入れ。」


中から鋭い声が響いた。

中はテーブルとソファーだけと単調だ。華美に装飾されたソファーに座るのは赤髪の女性だった。

        

「お前かスカウト候補は。まあ、とりあえず座れ。」


「は、はあ。」


とりあえず言われた通りに座り目の前に座っている女性を見た。大きく豊満な胸に目がいってしまったが、相手にバレないようすぐ目線を変えた。


「私はエクリア・ナポレット。エクリアと呼んでくれ。」


エクリアの紫紺の瞳が仁をロックオンする。


「細かい話はどうも苦手でな。単刀直入にいうぞ、道中で聞いていると思うが、お前には今日試験を受けてもらう。見事クリアしたら団員加入を認めてやる。それだけだ。」


「はやっ」


思わず声に出してしまった。


「だから言っただろう、細かい話は嫌いだと。」


不敵な笑みを浮かべ、流暢な動作で紅茶を飲むエクリア。


「ではフィレア、早速闘技場へ案内しろ。」


「ま、まさか隊長!もしかして…」


「ああ、どれほどの実力があるか私も見たいしな。任務に行かせるよりもこっちを選択した。」


そう言い身を乗り出した。


「C級モンスター、アルファレックスを倒したら合格だ。簡単に死ぬなよ。」

お知らせがあります。

実は作者、受験生でして面接やら作文やらやることが増え、多忙の時期です。次回から更新は遅れると思います。

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