我、連行サレル
「何者っていわれてもなあ…」
ゲームしてたら急にこっちに来ていてチート能力がありましたっていえばいいのか?
「答えて。本当は貴方は何者?」
警戒しながらもこちらに一歩一歩近づこうとしたが第三者の声に遮られた。
「フィレア様!こちらは片付け終わりました。」
後方から駆けつけてきた兵士らが状況確認の為かこちらにやってきた。ところどころに鎧が汚れており、返り血が生々しい。
「あ、そちらは大丈夫だった?」
「はい、爆風を浴びて多少怪我を負った者もいますが…今現在は精霊術師によって治療中です。」
「…そう…よかった。」
目を閉じ手を胸の辺りに寄せほっと一息をつく彼女。
「しかし、一番の問題である魔術師は逃がしてしまいました。」
顔を下に向け悔しい表情をする兵士。精鋭であると聞いた王国騎士団が、逃がしてしまう相手だったのだからよほど腕が立つのだろう。
「でも皆無事でよかった。」
敵の殲滅より皆の無事を重要視するフィレア。そんな彼女の様子を見て表情が自然ににこやかになる兵士。しかしフィレアと相対している仁を目に留めると腰の剣に手をかけ、目元を険しくさせ、敵対心を現わにした。
「この者はどうします?」
「ええ、それが…さっきまで彼の様子を見てたんだけど…」
「?…どうしたんですか?」
「彼、さっきまこいつらに襲われていたの。」
「こいつらって…こいつらですか?」
仁の周りに散らばっている無残な死体に目を向ける兵士。死体はどれも頭や胴が蜂の巣のように無残に穴が開いている。
「まさか…こいつら全員を一人で…?」
「ええ。」
淡々と事実を述べる少女に兵士の方は驚き信じられないといった顔つきだ。
「武器を取り上げられたらこいつらに襲われて死んでたさ。」
「…っ…」
しかし仁の余計な一言で空気がぶち壊し。兵士は仁を睨み、フィレアは顔を真っ赤にして俯いてしまった。
「それはそうだけど……だ、だけどこんな人数を短時間で倒すのも無理がある。もしかしてあなた、上位の魔術師か精霊術師のどちらかなの?」
「どちらも違う。普通の一般人だよ。」
「ふざけないで!あなたが魔道具を使って敵をバタバタ倒していったのは遠くで見ていたんだから。」
横から少し鋭い声を響かせるフィレア。指を持っている軽機関銃に向け、証拠を見つけたとはかりの態度をとる辺り自分自身の言葉に自信があるに違いない。
「ああ、これね。」
指された物に目を向ける。どうやら彼女は軽機関銃をどっかの魔道具と勘違いをしているらしい。
「これは九六式軽機関銃といって俺の住んでた故郷の古い武器だね。」
「きゅうろ…え…?」
全く聞き覚えのない単語に戸惑う少女。
「武器だよ武器。身を守る為に持っていたんだ。」
物珍しそうに軽機関銃の方を見てう~んとうなり、指を額に当て困惑の表情を浮かばせた。
「みたことのない形状の武器ね…どこのものかしら…?あなたの住んでた国の名前は?」
「日本という名前だよ。聞き覚えある?」
答えは大体予想はつくが…
「ニホン?全然聞き覚えがないし変わっている名前ねえ…あなたもしかすると別の大陸の人?」
「…まあ、いまのところその設定でいいよ。」
「フィレア様。」
唐突に声をかけられ気がつくと周りには兵士らが集まっていた。どうやらこちらが気がつかない間に集まっていたらしい。
「こ、これは…」
ラウスと呼ばれていた男は周りに転がっている死体と仁を交互に見る動作をさっきから何回も繰り返している。仁が一人で倒した事実が信じられないでいるらしい。
「き、貴様!どんな魔道具を使って私達の目をごまかしている?さっさとはけ!」
「落ち着いてラウス。ひとまず剣を鞘に収めて。」
「脳筋とはむなしいな。」
「っ…きっ……貴っ様ーーよくも副隊長の俺を馬鹿にしやーー」
「……ちょっと…いい?」
険悪な雰囲気を察知したのか一人のロープを被った人物が手を恐る恐る挙げた。
「イーナ、どうしたの?」
ラウスと仁のやり取りを呆れ顔で見ていたフィレアが発言主の方へ目を向けた。
イーナと呼ばれた少女は全身漆黒のローブを被っている。背はフィレアより低い。
濃厚なワイン色の瞳と乱雑に揃えられた銀髪、透き通るような白い頬には赤黒い魔法陣らしきものが刻まれている。見た目はか弱そうな少女だが実力は申し分がないのだろう。多分魔術師の類に違いない。
「個人的な意見…正直、あの時間の中でこれだけの人数を倒したとなると彼は相当腕が立つ…だから衝突は避けて、彼も少なくともこちらに対して敵対的な感情を今は持ち合わせていない…私物没収はひとまず置いといて…一緒に王都に同行してもらう案はどう?」
蚊のなくような声でボソッと呟くように提案する少女。しかし彼女の発言が気にくわないのか一人
「何いってんだお前!王都に同行ってことは騎士隊にスカウトされることと同じ意味だ。」
騎士隊にスカウト?なんか話がかなり飛躍しすぎじゃないか?
「うーん、でもイーナの考えも一理あると思う。」
「フィレア様!?」
どうしようかなと呟き目を閉じていたが、決まったのかゆっくり頭を上げた。
「彼は私達と同行してもらいます。」
「それじゃあ道中であなたのことも踏まえゆっくりじっくり話をしましょう。」
妖艶な笑みをこちらに向け白磁のような真っ白い肌の手をこちらに差し出した。
「つまりヒトシは王国認定の危険区域に入ったことも記憶にないと。はぁ…」
末にやけに長い溜め息をはき、隣にぴったりくっつくように同行するフィレア。自己紹介をしたのもあるのか多少仁に対して警戒を解いたらしい。
「それよりもさ…」
「何?」
「イーナって言ったっけ、なんでさっきから俺の後ろにピッタリくっついているんだ?」
移動途中、ずっとピッタリと張りつくようについて来ているのである。
試しに歩を早めたり遅めたりしても、仁との距離は変わらない。
「イーナは少し変わっているからねえ。」
「へえ。」
そうか変わり者か。それなら納得しちゃうな。
「……ぼ、」
「え?」
「帽子。」
突如しゃべったと思ったらいきなり第一声が帽子である。
「変わった帽子。…かっこいい。」
「…そ、それはどうも。」
「貸して。」
「はい?」
「被ってみたい。」
「はあ。」
確かに異世界であるここでは帽垂がついた戦闘帽は奇妙に見えるかもしれない。しかし第一に気にするところがよりによって帽子かよ!
手渡しされた帽子を興味深そうに眺めると、さっきまで被っていたフードをとり頭に戦闘帽を被せた。
「似合わないな。」
「…そうね…」
下が黒のローブ、頭が戦闘帽、なかなかシュールだ。
当の被っている本人は興奮しているのか、帽子をぎゅっとしたり、帽垂をひっぱったりと仁達の会話が聞こえないようだ。
「そういえばヒトシは別の大陸の人だからここ周辺国の情勢に詳しくないはずだよね?」
「ああ。」
この世界の情報はあまりにも少なすぎだ。話せる人がいる今の内に情報収集をしなければ。
「そういうことに関しては疎いんだ。できれば教えていただきたい。」
「ふーん、まあ、知らないのも仕方ないか。えっとね…」
ここラフィア王国はラ・イール共和国、バルスタンス帝国、ビヨテン教国に囲まれている。大昔、ラフィア王国はラフィア・イーギル初代国王時、大陸に強大で強固な絶対王政をひき、大陸全土に名を覇せた。当時宿敵であったバルスタンスを破り、国民を熱狂させ悪を倒した英雄と王国史に名を刻み込まれた。そして大戦から数年後ラフィア王は更なる領土や資源の確保、王国の仕来りや徹底的な王国選民思想の導入、そして大戦中新たに確立されたラフィア教の信者を増やす為、ラフィアイーギルは周りの国々を圧倒的な軍の力で屈服させようとした。無論、バルスタンスは過去の敗戦の屈辱から軍事力を中心とした強大な軍国主義になっており、王国を迎え討ち侵略する準備はしており、ビヨテン教を主とするビヨテン教国はかなり警戒し、大陸は再度緊張に包まれた。
その際、ラフィアイーギルの絶対王政による有力貴族の権利や特権の掌握を恐れたグループの一人、ラッフィル・イーリックはイーギルの監視の目をかいくぐり、裏でバルスタンスやビヨテンと内通し、表はラフィア王国の有力貴族の一員、裏では反王家、反イーギル主義をとり王家の打倒を目論んでいた。
そしてラフィア王国とバルスタンス帝国両国間の緊張が切れ、過去の恨みにより先走ったのだろうか。先にバルスタンスが総攻撃をかけた。兵士の志気が高く、大幅に改善した戦闘スタイル、10代の精霊術師や魔術師の少年少女を徴兵に対象に増員したのもあり、バルスタンスの連勝が続き、連敗のラフィアは味わいもしなかった負け戦に極度の不安定状態に陥ちいった。それを突くようにラッフィルらが予定通りイーギルの息子、カールが寝ている間に精鋭の魔術師に禁断の自爆魔法をかけさせ親子もろとも爆殺しようと画策した。結果は失敗。親子もろとも殺すには至らずカールとその直属のメイドが無惨な姿で命を散らしただけであった。
ラッフィルらはこれを機に自分領をラ・イール共和国と名乗り、自由、人民主権を君主制批判に繋げ、比べ、民を扇動し多大な広告を打ち出し、王国の内部からの破壊を促した。
一方息子を亡くしイーギルは完膚なきまでに精神が破壊され、彼が選んだ道は極度までに冷酷無比化。冷静に冷徹に諸勢力に対応し、ボロボロの王国軍を持ち直しバルスタンスの王国侵攻を防いだ。もうこのころにはラフィアもバルスタンスも戦う兵も資源も使い尽くし、力を急激につけたラ・イールに両方とも対処出来なかったのだ。
「大体これでわかった?」
「いや、大体わかったけどさ。」
「そう?まあだいたいこれくらいでいいでしょ、この国の成り立ちは。」
「って待て待てよ、一番気になっているところが教えてない!」
「はあ、何?」
なぜか呆れ顔のフィレア。
「精霊術師と魔術師やさっかまで話していた反王家の…」
「デストリアス。」
「そうそれだ。」
「デストリアスは隣国、ラ・イール共和国の共和制を支持する団体だったの。」
だけどと言葉を繋ぎ
「でもラフィア王国は王家の反逆者っていって弾圧して、構成員をほとんど公開処刑にしちゃってから過激で暴力的な集団に変わっちゃったの…」
「ああ、よくある流れだな。」
「それに目をつけたラ・イール共和国がデストリアスを支持。武器を提供していると聞いている。」
「でもさ、あいつらテロってよりも盗賊らしかったぞ。お頭とかいっていたし。」
「…最近は盗賊や海賊、密業者と連帯を取り合っていたりする。」
突然後ろから声がしたので振り返ると、さっきまで被っていた帽子をとり、黒のローブをすっぽり被っているイーナがいた。相変わらずピッタリくっついているが。
「はい、返す。」
「ああ。」
小さく華奢な手に持った戦闘帽を受け取った。
「そう、肥大化しつつあるの。今はテロ集団ってより巨大な犯罪組織って今はいったほうがいいかも。」
「大変なんだなー」
人事のように呑気にボソッと呟く。しかしそれを聞いたフィレアが
「あなたも王国騎士隊のスカウトされれば人事にならなくなるけどね。」
「だからスカウトって、何にスカウトされるの?」
「王国騎士隊に。」
「え!?」




