98. 2人の帰り道
「アルシア!もう移動しよう!夜は危ない!」
「はい!分かりました!」
死んだストーンタートルの上からアルシアが目ン玉を抱えて降りてきた。
とても王族には見えないな。
段々と昔のアルシアに思えてきたぞ。
2人とも目ン玉を抱えながら走るが、アルシアはレオの後ろを走っており、その差は広がっていく。
「アルシア、大丈夫か?」
「あ、はい!少し疲れてしまいました。」
アルシアは笑顔で話す。
「そうか。」
これ絶対に傷のせいだよな。
ストーンタートルにドームの中で凄い攻撃されたもんな。
そりゃあ、体力も少ないだろう。
なんで俺は気が付かなかったんだ。
レオは足を止める。
「アルシア、ここで休もう。」
「え?」
「ここで野宿だ。もう夜だし。」
「レオ様、ここで寝たら魔物に襲われます。」
「俺が見張りをしているよ。」
「駄目です!それは駄目です。」
う〜ん、これは平行線になる予感がする。
ちゃんとした理由なしに否定されては敵わない。
何かないだろうか。
森の外で寝られる方法...あっ。
「アルシア、おんぶするぞ。」
「!?」
「これぐらいしか思いつかなかった。」
「わ、分かりました。...では、」
アルシアは目ン玉を置き、レオの背中に抱きついた。
「これを持っていてくれ。」
レオはアルシアに目ン玉を2つ渡し、手をアルシアの太ももに回す。
ダッ
レオはさっきよりも速い速度で森を突っ走る。
アルシアは片手で1つの目ん玉を持つのが精一杯だ。
つまり今アルシアは両手に目ン玉を持っている。
「なんか...金玉みたいだな。」
「.......」
「...」
レオは根性と身体強化魔法を駆使して頑張り、遂に森を抜けた。
「はあ、はあ、はあ、よし。ここで野宿だ。」
「はい。ありがとうございました。」
途中で魔物が見えた時はビビった。
逆に凄いがむしゃらに走ることができた。
歩いていたら危なかっただろう。
まあ別に、この平野が安全とは限らないけど。
その日はみんな大好き硬いパンを楽しく食べて寝た。
「っ...」
どこだ?ここは。
あっ、ストーンタートルを倒したんだった。
上には濃い青空が広がっており、レオは目を細めた。
隣を見ると、アルシアはまだ寝ていた。
珍しいな。
大抵アルシアは、俺を起こしてくれる側なのに。
やはり傷の影響が大きいだろう。
光属性魔法を自分にも使っているようだから、すぐに治るだろう。
「レオ様。ちょっと私に、ついて来てください。」
アルシアはレオの手を引っ張る。
「え?お、おう。なんだ?急に。」
アルシアって、ここらへんの土地に詳しいのか?
大魔法でも見せてくれるのだろうか。
アルシアの後をついて行くと、川が見えて来た。
周りに魔物らしき気配はない。
「あっ!川がありますね!レオ様!」
「そうだな。」
「そうだ!一緒に水浴びでもしますか!昔みたいに。」
アルシアは顔を赤くしながら妙に元気に喋る。
「え?」
アルシアがおかしくなってしまった。
ストーンタートルに傷つけられると、おかしくなってしまうと言う魔法があるのかも知れない。
「アルシア、俺達は昔よりも成長しているんだ。
水浴びをするのはいいけど、せめて離れてするべき
だと思うんだ。」
アルシアの為にも、俺は我慢しなければならない。
俺が我慢するんだ。
「そ、そうかも知れませんね。ですが今は親睦を深めるべきです。」
「十分深いだろ。」
「!?そ、そうですね。ははは...」
アルシアが防具を脱ぎだした。
「だー!!アルシアー!!」
レオはアルシアの動きを止めた。
これは俺の責任だ。
前に水浴びをさせてしまったせいで、おかしな事になっている。
「アルシア、前の俺は間違っていたんだ。水浴びは
男女でするものじゃない。俺が悪かった。」
「はぁ、はぁ、はぁ、はぁ、」
「...大丈夫か?」
アルシアが過呼吸になっている。
マジでなんかの魔法にかけられているんじゃないか?
レオはそんな事を思いながら、段々と前かがみになる。
「ア、アルシア。もう行こう。」
「でも水浴びを。」
「アルシア〜、もういいだろ〜?」
レオは更に前かがみになる。
このままでは、俺が嫌われる事になってしまう。
早く帰らせなければ。
身体強化、全開だ。
「ふんっ!」
「わっ!」
レオは前かがみのまま、アルシアを持ち上げた。
カサカサカサカサ
レオはその状態で、川から離れだした。
「ああっ!川が!レオ様!」
アルシアは川の方向に手を伸ばす。
カサカサカサカサ
「はぁ、はぁ、はぁ、落ち着いたか?」
だいぶ離れたぞ。
川はもう見えない。
これでアルシアが正気になってくれるといいんだが。
「...はい。」
アルシアは小さく返事をした。
耳が赤くなっている。
どうやら、マジで魔法にかけられていたらしい。
川に魔法をかける何かがいたのだろうか。
あるいは川自体にそういう能力があるのかも知れん。
俺達はルベリア王国に向けて走り出した。
「そう言えばアルシアって回復薬とか持ってきてないのか?」
「はい。簡単に倒せると思って、持っていませんでした。」
「家に帰ったら飲んでくれよ。」
「大丈夫です。これぐらいなんてことありません!」
いや、結構ボロボロだぞ。
俺がアルシアなら飲んでいるな、間違いなく。
こうして、俺達は無事ルベリア王国に着いた。
途中で魔物が襲ってくることもあったが、無視して走り、魔物が俺達に追いつく事はなかった。
長いようで短かったな。
いや普通に短いか。
「ギルドへ行きましょう!」
「おう。」
アルシアが元気になってくれて良かった。
帰ってる時は凄い変な空気だったが、ルベリア王国が見えた辺りからは温かい空気が漂っていた。
ギィ
ギルドには人が結構いた。
まだ明るいからな。呑気な冒険者が集まっているのだろう。
これもまた、冒険者の良さだろう。
りんご屋で、こうはいかない。
アルシアは早速、目ン玉をギルドに提出した。
冒険者達がアルシアを興味深く見ている。
ジロジロ見やがって、アルシアは見世物じゃないんだぞ、この野郎。
「あの冒険者、初めから超級冒険者だったらしいぞ。」
「マジかよ...」
そこそこ話がレオの耳に届いた。
「!?」
なんだと!?
アルシアは初めから超級だったと言うのか!?
と言うことは、魔力量が物凄いのか。
たしかに、超級冒険者だったら超級クエストぐらい
簡単だと思ってしまうかも知れない。
それにしても、俺が頑張ってやっと超級冒険者になれたというのに...
「はぁ〜。」
アルシアがレオの方に笑顔で向かってくる。
「こんなに報酬金を頂きました!」
「おう、良かったな。」
アルシアは袋の中から数枚の金貨を取り出す。
「これは、レオ様の取り分です。」
残りの袋に入った金貨を袋ごとレオに渡す。
「いや、初クエストなんだからアルシアが全て貰ってくれ。」
アルシアはパッと笑顔になる。
「ありがとうございます!」
そんなに嬉しい事なのか?
アルシアは王族なんだから金なんていくらでもあるだろう。
「今度また、お礼をさせてもらいますからね。」
「ああ。楽しみにしてるよ。」
俺達は解散した。
家に帰ろう。
久々のクエストで疲れてしまった。
ギィ
「ただいま〜」
「!?おかえりなさいませ、レオ様。」
今日はもう休もう。




