96. 久々のクエスト
ペラッ
レオは手で頭の重さを支えながら退屈そうに本を読んでいる。
「はぁ〜。」
知識を得る本は疲れてしょうがない。
俺にこういうのは向いてないのかも知れない。
何の役にも立たないような物語を読むのが好きだ。
そう言えば本なんか読んでないで絵を描けばいいんじゃないか?
うっかりしていたな。
もう1年が終わろうとしている。
俺はこの1年で剣術が急成長した。
この学校に通えてよかった。
身長も伸びたしね。
1年で剣術がここまで上手になるのって、凄い才能なん
じゃないか?
大抵の人はこうならないはずだ。
俺はこの学校に3年もいたら十分なのかも知れない。
魔術の授業でも受けてみようかな。
レオは本を戻し、絵画部の教室へ向かう。
今は確か授業中のはずだ。
人が全然いない。
剣術の授業も飽きてきた。
同じような事ばっかりやって、飽きない他の人は異常だと思う。
レオは到底特別生には見えないようなダルそうな歩き方をしながら、絵画部の教室へ向かう。
「レオ様!」
途中の廊下でレオを呼ぶ女の声が聞こえる。
「ん?ああ、アルシアか。」
なんでアルシアがいるんだ?
授業中じゃないのか?
こういう事は、聞かないほうがいいのだろうか。
変に誤魔化されても嬉しくない。
「レオ様、クエストを一緒に受けてもらえないでしょうか。」
「クエスト?」
冒険者にでもなるつもりなのか?
やっぱり冒険者になりたいって言うのは嘘ではない
らしいな。
「えっと、超級クエストです。」
「超級...いいぞ。」
今の俺なら安心して倒せるはずだ。
「!?本当ですか!?ありがとうございます!」
アルシアはパッと明るくなり、笑顔になった。
「いつにする?」
「今からは駄目ですか?」
アルシアはぎこちなくレオに上目遣いを使う。
「まあ、いいよ。」
今の俺なら秒で終わるはずだ。
今の時間からでも十分、超級の魔物は倒せる。
ただ、もっと遅くなると怪しいな。
「じゃあ、もう行けるか?」
「はい!行きましょう!」
アルシアはご機嫌で学校の外に出る。
そんなにも冒険者が好きなのか!?
出来ることなら王様をやりたい人のほうが多いだろうに。
変わってるな。
歩いて移動していたら、ギルドの建物が見えてきた。
久々に来たな。
「レ、レオ様!凄いですよ!ギルドがこんな近くにあります。目の前にギルドが。」
アルシアは機嫌よく、扉を開けようとする。
「あっ!待て!髪の毛は大丈夫なのか?」
レオは慌ててアルシアの動きを止めた。
アルシアは髪が白いから王族ってすぐにバレるんじゃないだろうか。
そして王族だと分かったら、アルシアは酷い目に合うだろう。
じゃあ、アルシアは前のように布を頭に巻いたほうがいいんじゃないか?
そうしたら王族って誰にもバレてなかったぞ。
アルシアは感動したような表情をした後、微笑みながら話し始めた。
「レオ様、私はもう強いんです。危険な目には遭いません。」
「自信たっぷりだな。」
「もちろんです。私に任せてください。」
ギィ
アルシアはズカズカとギルドに入った。
レオはギルド内を見渡す。
いや〜、懐かしいな。
なんにも変化はなさそうだ。
ギルドはパラパラと人がいるだけで少ないな。
この時間はみんな、クエストを受けているのだろう。
ひとまず、アルシアへの危険は少なそうだ。
というか、アルシアは守らなければいけないような
実力ではない。
もう十分に一人で戦える状態だろう。
ギルド前のアルシアの発言は間違っていないだろうな。
でも、昔の記憶が守れと言ってくる。
あれ?
昔もアルシアは守られてなくないか?
なんなら、俺が助けてもらってたな。
記憶がおかしくなっている。
「レオ様、このクエストにしましょう。」
アルシアはレオの側へ寄ってきて、クエスト内容を
見せた。
ストーンタートルの討伐 難易度 超級 証拠 両目
場所 北東にある森の中
「分かった。」
北東の森は確かデカい蛇を倒した場所の事だろう。
伝わらなかったらどうしていたんだろう。
レオの許可が下りるとすぐに受付に持って行った。
「さて、行きましょう!」
「おう。」
俺達は北門から外に出て、走って森へ向かう。
「アルシア、速く走れるようになったな。」
「はい!頑張りました!」
この速度なら、すぐに着くかも知れない。
その後、アルシアの速度が段々と落ちていった。
空は暗くなり、ぼんやりと森が見えて来た。
「アルシア、森よりもここの方が安全だと思う。
だから、ここで休んで朝になったら行こう。」
「はい。すみません。」
アルシアは分かりやすく落ち込み、下を見ている。
「いや、予想よりも早かったおかげですぐに着いた。
流石だ。」
レオは硬いパンを食べ、アルシアは柔らかいパンを
食べて寝転がった。
レオはドーテルちゃんを抑えるので精一杯な所もあり、
夜にアルシアと会話する事を諦めていた。
「レオ様、起きてますか?」
「...寝ろ。」
「レオ様、お話をしましょう。会えてない期間のお話とか知りたいです。」
「明日は早いんだ。寝ろ。」
「ちょっとぐらいはいいじゃないですか。」
「俺は...寝るからな。」
「...分かりました。」
暗くて助かった。
明るかったらバレてしまうかも知れない。
あっ。そう言えば、アルシアは光属性魔法を使える。
と言うことは、俺のあそこを明るくして見られるかも知れない。
それだけはさける必要がある。
レオは覚悟を決めた表情をし、地面にうつ伏せに
なった。
ここまで押し付けてしまえば大丈夫だ。
少し痛いがここは我慢しよう。
「デュフ、デュフ。」
「レオ様!起きてますか!?」
アルシアが元気に上体を起こす。
「がー、デュフ。がー、デュフ。」
アルシアは不服そうに寝転がった。
「んー。」
暗闇の中から少しの光が見える。
「レオ様、起きてください。」
「ん?」
目の開けると、アルシアが目の前にいた。
俺は空の方向を向いていた。
「だー!!見るなー!!!」
レオは慌ててうつ伏せになった。
「寝ぼけ過ぎですよ。ほら、行きますよ。」
アルシアは強引にレオを立たせ、歩き始めた。
「アルシア、周りは警戒していろよ。」
「はい。」
森には変な奴がたくさんいるからな。
以前森に来た時は変な奴に会った。
植物大好きパーティーの人達だったっけ?
「レオ様、あれ...」
「!?」
アルシアの指先を追うと、紛れもない
ストーンタートルがいた。
こんなに早く見つけてしまってもいいのか?
俺が蛇を見つける時なんかは、苦戦した記憶がある。
ストーンタートル、デカいな。
思っていたよりもデカい。
どうやって森のなかに入ったのだろうか。
「私に任せてください!」
ダンッ
アルシアは地面を強く蹴り、凄い速さで突っ込んだ。
「え?」
様子見はしないのか?
ガキンッ
「うそ!?」
アルシアは剣を弾かれた。
ストーンタートル、凄い硬いんだな。
これは、剣で戦っても勝てないと思う。
俺流拳で殺すしかない。




