79. 特別生
「君達の名前は、何ていうんだ?」
「私はサクナよ。」
「私はレイです。」
「私はミントです。」
なんか、サクナが部長みたいだな。
部長の名前はミントで、サクナの側近はレイと言う。
ミントは黒髪でレイは茶髪、サクナは金髪たから、
凄い覚えやすい。
名前なんかより髪の色で覚えた方が良さそうだ。
ここは正式に部活になっているから、絵を描くための道具が全てある。
最高の場所だな。
俺もサクナみたいに美しい風景画を描いてみたい。
空大陸で見た海を思い出せばいいのだろうか。
俺も水の反射した景色まで描きたい。
「う〜ん...」
駄目だな。
まず水の表現が酷い。
反射以前に水が描けていない。
風景画は気持ちが盛り上がらないんだよな。
なんか、違う。
皆に見られたら恥ずかしいので、ぐちゃぐちゃにして帰った。
「おかえりなさいませ、レオ様。」
「リリは絵って描いたことある?」
「う〜ん、ないと思います。」
「そっか。」
疲れたな。
外もそろそろ暗くなる。
この時間ではクエストなんて受けられない。
お金はあるからいいけど、体が鈍らないか心配だな。
学校が休みの日にでもギルドに行こうか。
休みがなかったら勝手に休んでしまおう。
「えー、今回はB組と合同だ。始めろー。」
ステラ先生も段々と雑になってきているな。
疲れが溜まっているのだろうか。
今日の自由戦はB組と一緒だ。
D組の皆は、なんだか自信がなさそうだ。
F組と戦った時に負けたし、今回は成績上位の人達
だから無理もないと思うけど。
だが、俺は楽しみだった。
なぜなら、B組には確実に特別生がいるからだ。
特別生は俺と同じように孤立しているはずなんだ。
だから一緒にやろうと誘いたい。
今回こそは孤立している人が1人ぐらいはいるだろうからな。
「...。」
みんな...戦えているな。
ちゃんと相手がいるようだ。
なんでだよ。
あっ、特別生だ。
あの野郎、特別生のくせに相手がいるだと!?
ふざけるな、孤立しろ!
なんて楽しそうに戦っているんだ。
羨ましい。
「レオ、また余っているのか。前回は相手がいたのに。
嫌われ過ぎだろ。」
「......」
ステラ先生が来た。
B組に、怪我させられる力を持った人はいないらしい。
いや、違うな。
怪我をさせるほどに、力を誇示する人がいないのか。
流石、優等生のクラスだ。
「かかってこい。」
先生が上段に構えた。
コイツ、風流のくせに。
俺を舐めているらしい。
タタタタタタッ
俺が頭めがけて突く。
ギィィィィ
ブンッ
見事に受け流され剣を振ってきたが、レオはなんとか避けた。
ガキンッ
更に先生が攻めるが、レオがギリギリ受ける。
「やるじゃないか。」
ギィ
「はっ!」
レオが受け流し、先生の首元めがけて剣を振る。
キィ
ステラ先生は更に綺麗に受け流し、レオの首元に剣を振った。
「私の勝ちだな。」
さっきの受け流し、音が全然聞こえなかった。
見事だ。
風流も強いじゃん。
なんで使う人が少ないんだよ。
「レオ、お前なあ。身体強化を使った方がいいと思うぞ?ダイナミックな動きを使って戦うやり方もあるんだ。なんなら、そっちの方が使う。」
「俺は身体強化が出来ないって前に言ったじゃないか。」
「え?あれって冗談じゃなかったのか?」
「え?」
「え?」
冗談だと思われていたのか。
そんなに出来て当然なのかよ。
あと俺できるし。
ダイナミックな動きも基本は身体強化を使わなくても同じだと思うんだよな。
ただ動きが大袈裟になるだけだと思う。
それと俺は身体強化魔法に頼りすぎちゃうんだよな。
それでは成長が見込めない。
やはり、身体強化魔法は極力使わないべきだ。
「まあ...頑張れよ。」
「...おす。」
自由戦が終わり、周りを見るとD組の皆は疲れていた。
やっと終わった〜と言う感じだ。
逆にB組はすました顔をしている。
疲れてなさそうだ。
絵画部へ行こう。
「おい、レオ。待てよ。どこ行くんだ?」
「ん?絵画部へ行くんだよ。セルロスも一回だけでいいからさ、一緒に行こうよ。」
「...しょうがないな。」
え?いいのか。
セルロスが遂に折れた。
もう俺の勝ちと言っていいだろう。
「ようこそ、我が絵画部へ!」
「あんた、まだ新人でしょ?何、部長みたいに振る舞ってんのよ。」
「そうです。サクナ様未満のくせに、つけ上がらないでください。」
サクナとレイがゴチャゴチャと何かを言っている。
「さあ、どうぞどうぞ。まずはこちらを見てくれ。
これは風景画なんだが、湖に映る景色まで描いているんだ。どうだ?美しいと思わないかい?」
サクナの絵を見せる。
「あ...ああ。そうだな。」
「ちょっと、それ私が描いたんだけど。何勝手に紹介してんのよ。まるであなたが描いたみたいじゃない!」
「そうです。サクナ様の素晴らしい作品なんです。
その汚らわしい手で触らないでください。」
サクナとレイがゴチャゴチャうるさい。
そしてレイの方が酷い事を言っている気がする。
「セルロスも絵画部に入ったらこんな素晴らしい作品を作れるようになるぞ。」
「それは...本当に?」
「ああ、ガチだ。」
「描けるわけないでしょ。馬鹿じゃないの?」
「そうです。これはサクナ様の高貴な作品なのです。
あなたがた庶民に描ける作品ではありません。
恥を知りなさい。」
「ガチで描ける。大丈夫だ。コイツらも初めてのときは凄い下手だった。」
「ちょっと!何言ってんのよ!」
「そうです。サクナ様は初めから...」
「恥ずかしがっているんだ!!分かってやれ。」
「はぁ〜!!おかしいわ!!馬鹿にしないで...」
「うっせーんだよ!!バカ野郎どもがー!!!」
「「「......」」」
部長が突然叫んだ。
うわ〜、びっくりした。
今は集中して絵を描いている。
この緩急が怖い。
「なあ、レオ。」
セルロスが、コソコソと話す。
「入部するよ、絵画部。」
「本当か。最高だな。」
「それより、あの部長は魔王なんじゃないか?
恐ろしかったぞ。僕でもビビってしまった。」
「大丈夫だ。オレが保証する。」
こうして、セルロスも絵画部へ取り込まれた。
「なあサクナ。特別生って嫌われるのか?」
他の特別生の情報が知りたい。
俺だけが嫌われていたら、特別生とか関係ないことになる。
「...そうね。嫌われるわ。」
よしっ。
前提として嫌われるものらしい。
まあ、そうだよな。
俺、何もしてないもん。
「なんでだ?」
「それはあれよ。あの〜、貴族だからよ。あっ、大抵の特別生は貴族が多いからよ。」
「なんで貴族は嫌われるんだ?」
王族は分かるけど。
「嫌うわよ。だって権力があるのよ?多少の問題なら許されるし、いい環境で育つから強い。そしてその
強さを自分の才能だと思い込んで皆を下に見るのよ?
同じ特別生の私でも嫌いになっちゃうわ。」
「嫌な奴らってことか。」
もし、本当にそんな奴らの集まりだったら、嫌われて当然だろう。
「でも、好かれてる人しか見たことないぞ。」
俺以外は自由戦で戦う相手がいたじゃないか。
それは仲のいい人がいると言う証拠だろ?
どうなっているんだ!サクナ君!
「どうせ、自分達も貴族のような体験が出来るかも知れないと思って近づいてくる人達がいるのよ。
だから、特別生の人達は性格を良くする必要がないの。
まあ、普通に優しくしていて好かれている人もいるわ。
ヘレナとかがそうね。」
「なんで俺にすり寄る人がいないんだよ。」
「...。貴族は側近の人といるものよ。側近のいない
特別生なんて、あまり聞かないわね。」
「そういうことか...」
側近がいないってことは、貧乏くさい貴族だと思われていたのか。
なんか、それも貴族と同じくらい酷くね?
みんな嫌な奴じゃないか。
「まあ、自分から話しかけて、優しい人だって主張すればいいのよ。でも私からしたら庶民の方が嫌な奴だけどね。私たちは名前に泥を塗らないように成績上位を頑張って取り続けているの。ただ楽しんでるだけのくせに私たちと一緒にしないでほしいわ。差別ぐらいするわよ。」
「いろいろあるんだな。」
人に話しかけるのが、どうも苦手なんだよな。
なんでこうなってしまったのだろう。
「レオ、えろい絵。描けたぞ。」
「え?」
セルロスがえろい絵を描いていた。
どんだけ女を求めてるんだよ。
俺も人のこと言えないけど。
「セルロス、お前。才能の塊じゃないか!」
「ホントか!?」
「ああ!今日からお前を塊と呼ばせてくれ!」
「おおー!!マジかよ!俺、塊なのかよ!」
「ふんっ。」
「ふんっ。」
サクナとレイが鼻で笑った。




