18 匣から出た猫③
『霊威警報発令――――霊威警報発令――――』
修道院あいの証言を聞いてからの警察の動きは、迅速だった。
公安の骸繰が現場に駆り出され、近隣の地域には霊威警報……骸による攻撃について注意を促す警報が発される。探偵のスマホもぶるぶる震えた。
「なんでそれを早く言わなかった!!」
「えー」
女刑事の叱責もどこ吹く風。
この依頼人、色々とおかしい。
「……つまり、老夫婦殺しは猫か?」
「いえ、それは証言と食い違います」
「抑えなきゃ人間喰う悪霊って証言じゃねぇか。もう猫が犯人でいいだろ」
「そこです」
探偵は既に見抜いていた。
「人を食うんです。殺すのではありません」
女刑事に簡潔に質問を飛ばす、探偵。
「被害者に食われた跡、ないし奪われた内臓は?」
「無い。全部ズタズタミンチの状態で残ってる。鑑識はそう言っている」
「家から無くなったものは?」
「この嬢ちゃんの証言では、無いそうだ。預金通帳や権利書の類も綺麗なもんよ」
「老夫婦の死亡時刻、あいちゃんはどこに?」
「小学校。授業を受けていたという証言がある」
探偵は目を細めた。
血に濡れた居間の中で浮かべられる、張り付いたマリア像の笑み。
それは、確認したいことが確認できてうれしい時の、探偵のクセである。
「犯人は分かりませんが、犯行と動機は分かりました」
「……話しが早いな、葦花」
「『盗み』ですよ」
妙なことを言う、探偵。
いま自分の口で、この家から盗まれたものがないと確認したというのに、犯人の犯行は盗みであるという。では、何を盗んだのか?
「犯人は猫ちゃんを盗みたがってる。老夫婦は、そのために殺された――」
死んだ猫を盗みたがって、なぜ老夫婦を殺す?
「本当に犯人が殺したかったのは、あなたです。あいちゃん」




