苦悩と焦燥②
……ついにこの瞬間が来てしまった。
現在、私がいるのは私の住むマンションの805号室前。例の彼の家だ。ちなみに私は404号室に住んでいる。
とにかく行くのが嫌すぎて、私は寄り道をしまくった。いろんなスーパーをハシゴしたり、本屋に行ったり、、、
しかし、もう逃げられない。外も暗くなってきてしまったし。
「ふぅぅぅぅーー。」
…覚悟をきめてインターホンを押す。
ピンポーン♪
…………………。
反応がない。もう一度押すか。
ピンポーン♪
…………………………………。
また反応がない。どうしよう。
……帰ろっかな。プリントはドアポストにつっこんでおけばいいし。
そう思って、ドアポストにプリントの束をつっこもうとしたが、なかなか入らない。
どうやらドアポストの中はチラシなどでパンパンのようだ。
「えええ、どうすればいいんだ……。」
なんとなく、ドアノブをひねってみる。
……ガチャ。
「あ、開いちゃった!?」
えー……開くわけないと思いながら、ひねってみただけなのに。不用心だなぁ。
チラッと中をのぞいてみる。…私、今、ヤバいことをしているのでは。まあ、玄関にプリント達は置いていけばいいか。メモとか添えてね。
ドアの隙間からはリビングと、奥にはベランダが見える。ベランダには人影が………って、いるじゃん!?陽道潤!!!
インターホン2回も鳴らしたのに無視しやがって!
陽道君はベランダから街の風景を眺めているようだ。
私が声をかけようか、もう一度インターホンを押そうか迷っていたその時だった。
陽道君はベランダの柵にのぼりだした。
「……は?」
これって、明らかにやばい場面だよね?
脳裏には月城の言葉がよぎる。
普通の人が妖怪と契約すると、、、
「精神を病んで自傷行動をしたり、他人を殺そうとしたり、最悪、自殺をしてしまう。」
自殺……!?
私は無意識に駆け出していた。
彼は柵の上に立つ。そして片足を空に向かって投げ出したところで、ギリギリ私が彼のシャツを掴む。
「馬鹿か!あんたは!」
「……!」
グイッと思いっきり引っ張ったため、彼は私の方に倒れてきた。
私の上に彼の体が降ってくる。
ドン!
……その音を合図に私は自分の意識を手放した。