終わらない夏祭り⑨
「……つまり、私たちが今いる世界はヤマトさんが言ってた鬼に作られた世界ってこと?」
茉莉花が聞くと、御堂は頷いた。
「そういうことでしょうね。あの面をつけた人のみ、こちらの世界に転送する術でもかけてあったんでしょう。」
2人は周りに点々といるお面をつけた人々を見た。
お面をつけている人は若い人や子どもが多い気がする。
「…あの人達のお面も壊してあげなきゃね。」
「それもそうですが……。まずは、彼らがどこに向かっているのか知りたいところですね。とりあえず、僕はついて行くことにします。」
御堂は1番近くにいた、猫のお面をつけた少女の後ろを歩きはじめる。
…確かに、彼らの向かう先に黒幕がいるに違いない。
茉莉花も少女の後を追うことにした。
「なにこれ…。でっかい。」
延々と続くように思われた縁日の先に、大きなお城が現れた。
もちろん、和風のお城で立派な天守閣もある。
お面をつけた人々は、このお城の中に吸い込まれるように入っていった。
「いったい何のためにこんなことを……。」
そして、この中でいったい何が行われているのだろうか。
きっといい事なんて行われてはいないのだろうけど、中に入った人が無事なのを祈るばかりである。
「じゃあ、入りますよ、僕達も。」
「…ハ、ハイ。」
この人には恐怖心とかないのかなぁ。
城の入口へとずんすん進んでいく御堂くんに茉莉花も慌ててついて行こうとした、その時…
「あれ、面をつけてない奴がいんな。どういうことだ?」
不思議そうにこちらの様子を伺いながら、青年が近づいてきた。
髪を後ろで結い、藍色の袴を着ており、歳はおそらく茉莉花達と同じくらいだと思われる。
「!!!」
茉莉花と御堂はすぐに距離をとり、警戒した。
「……その様子を見ると、お前ら洗脳かかってねーんだな。」
謎の青年はボソッとそう言った後、腰に携えた木刀を取り出した。
……やばい!これは襲われるパターンだ。
「ハク!………………ハク?おーい、ハクー。」
いつものように困った時はハクを呼ぼうとしたのだが、一向に召喚されない。
「この世界は、僕らが今までいた世界と完璧に遮断されていると考えた方がいいでしょうね。おそらく何度試みても、召喚されないんじゃないですか。」
御堂くんは冷静に分析しつつ、躊躇なく弓を構えた。
「え。射抜いちゃうの!?」
さすがに、いきなり事情も知らずに殺しちゃうのは可哀想なのでは…?
そう言いたげな、茉莉花の表情を見て、御堂ははぁ、と息を吐いた。
「……わかりましたよ。」
そう言いつつ、すぐにオレンジに光る矢を発射した。
う、嘘つき…!と一瞬茉莉花は思ったが、御堂の放った矢は青年の木刀にクリーンヒットし、彼の手からするりと抜けてしまった。
『な…!』
青年と茉莉花は同じようなリアクションになる。
なんて、コントロール力だ。やっぱり、御堂くんってすごい陰陽師なんだなぁ。
「チッ、!くそ。」
安心したのもつかの間、慌てた青年は木刀で戦うのを諦め、素手でこちらに向かって来た。
「危害を加えるな、って言ったのはあなたなんですから、次はナントカしてくださいよ。」
御堂くんはひょいっと茉莉花の後ろに隠れた。
「え!ちょっ、私!?」
「弓で戦うにはある程度距離がないとダメなんです。接近戦、僕不得意なんでー。」
ど、どうしよう?相手はどんどんこちらに近づいてくる。
ハクを呼べないとなると、瑠璃の目しか…!
まあ、とりあえずやってみるしかないか。
茉莉花は瑠璃の目を発現させ、自分の周りに漂う黒いオーラを見た。
これを上手く動かして、彼の動きを封じ込めなくては…。できれば殺さずに!
黒いオーラをロープのように数本細く伸ばしていき、彼を拘束するイメージをする。
「……なんだこれ?う、うわっ!」
彼の体に禍々しいエネルギーがぐるぐると巻きついた。
陰の気のコントロールが上手くいったようだ。
「うわぁ。もう、瑠璃の目の扱い上達したんですね。さすが、鬼門院。」
御堂くんから最上級の皮肉がこもった褒め言葉を頂いた。…胃が痛い。
「んもー。感謝くらいしたらどうなの?……っ、いたたたた…。」
ジンジンとした頭痛がする。
やっぱり、こんな力使うもんじゃない。
御堂は頭をかかえる茉莉花に対して全く心配をする素振りを見せず、黒いオーラに拘束された青年に近づいた。
「……んで、コイツをどう処理しましょうかね。」
御堂の不気味なうすら笑みに、青年も茉莉花も身震いした。




