終わらない夏祭り⑤
「あ、あのぉ……。御堂クン。どこから聞いてた?」
とりあえず瑠璃の目を解除し、茉莉花はピクピクと表情をひきつらせて聞く。
「最初からですよ。逆に聞きますけど、なんで僕が聞いてないと思ってたんです?」
そりゃあさ、あんな苦しそうだったんだから、意識なんて無いと思うじゃないか…。
焦る茉莉花の耳元でヤマトがこっそり囁く。
「茉莉花ちゃん、お望みなら彼に寄生させてる桜を急成長させて、顔を潰しましょうか?」
「えっ!?そんな、ダメですよ!」
茉莉花はギョッとした。
優しそうな妖怪だと思っていたけど、考えることはさすが鬼だな。
「ホント、信用ならないですよね。妖怪ってのは。」
そして、彼は地獄耳のようで、しっかり聞こえている。
「……耳いいよね。御堂くんって。」
ここから御堂くんまでけっこう距離あるのに。
「腫れで目が見えなかったぶん、ほかの感覚が敏感になったんです。……ってか、重いんでこの枝取ってくれません?」
確かに、桜の枝は成長して、1メートルくらいの長さになっており、すごく重そうだ。
「ヤマトさん。枝、取ってもらえる?」
茉莉花が頼むと、ヤマトは少し心配そうな表情をしていたが、しぶしぶ頷いた。
「……わかったわぁ。」
ヤマトがパチン、と指を鳴らすと御堂くんの顔に根を張っていた枝は桜の花びらに変わり、散っていった。
「…………え。ええええええ!!」
茉莉花とヤマトは急に顔を引きつらせた。
「なんですか。……僕の顔、変ですか。」
「いやいや、変っていうか……!」
クリクリした目、長いまつげに、ぽってりとした唇。腫れがひいた彼の顔は一言で言うと美少年。
「めっちゃ可愛……」
「それ以上言ったら殺します。」
多分、彼に可愛いは地雷らしい。
茉莉花は慌てて口を塞いだ。
御堂くんは再び長い前髪をおろし、顔の半分を覆った。
「ええー。もったいなぁい…。」
ヤマトは残念そうに肩を落とした。
「……。」
御堂くんはそれをしっかりと無視。
「んー、でも、やっぱその髪じゃ、なんも見えないでしょ?」
茉莉花は御堂理斗に聞く。
「別に?今までだって視覚なんてなくても生活できてましたし。」
「……はぁ。」
「ちょ、ちょっと何するんですか!」
茉莉花は自分のヘアピンを外し、御堂理斗の前髪を上げてとめた。
「でも、見えないよりも見えた方がいいでしょ?ヘアピンはあげるよ。」
「…………フン、どーも。」
彼は全く目を合わせようとはしないが、一応、お礼はいってくれた。
茉莉花は苦笑した後、ヤマトを見た。
「……じゃあ、話を戻すんですけど、瑠璃の目って使うリスクとかあるんですかね。実は瑠璃の目を使ってから頭が地味に痛くて。」
「あ、そうなのよ。陰の気とは、本来生者が扱うことのできない力。だから、瑠璃の目が有れど、もちろん使うだけ跳ね返りが来る。申し訳ないのだけど、茉莉花ちゃんに瑠璃の目の力を使わせたのは、痛みを実際に感じてもらうため。あまり力を使いすぎないようにするためにね。」
うう。こんな力使うもんじゃないな。
ちょっと使うだけで、少し体調が悪い時くらいの頭痛がするもの。
「なるべく使わないように心がけます。色々と教えていただき、ありがとうございました。」
「あら、もう質問は無いの?」
「はい。」
とりあえず、気になったことは聞けてスッキリした。
「じゃあ、僕の方から質問させていただきますね。」
「ええ。いいわよ。」
ヤマトは快く承諾した。
「あんた達のような、“鬼“って一体何者なんですか。」
……鬼。御堂くんの言う通り、謎が多い。
言われてみれば、煙丸やヤマト、そして天音輪道鬼は”鬼”である訳だが、いったいどんな関係があるのだろうか。
ヤマトは少し黙った後に、こう言った。
「そうねぇ。…………私たち、一本角の鬼たちはみんなアマネ様の失敗作よ。」




