終わらない夏祭り⑥
「失敗作……?」
そういえば、天音輪道鬼が夢の中で言ってたなぁ。
己を殺すために生み出した妖怪がいる…。とかなんとか。
それが”鬼”ってわけか。……ってことは煙丸も!?
「そもそも……アマネ様って誰なんですか。」
御堂くんが聞いてくる。
そういえば、陰陽師って鬼に関する情報、ほとんど持っていないんだっけ?
「これ、言っちゃっても大丈夫系?」
茉莉花は一応、ヤマトに確かめる。
「ええ。アマネ様、なんて呼んでるけど、別にあの方に仕えている訳では無いし、あの方の味方でもないから。私。」
意外と、神のように崇めてはいないんだなぁ。
……それもそうか。彼らは妖怪にならされた挙句、失敗作なんて呼ばれているんだから。
よく分からないが、鬼たちと天音輪道鬼には複雑な関係性が築かれているのだろう。
許可をもらったので、茉莉花は御堂に説明する。
「アマネ様っていうのは、二本角のめっちゃ強い鬼なの。……あと、見た目が中性的!……あとは、、……。」
そういえば、考えてみると、全くあの鬼の情報ないんだよなぁ。
「……。強いってこと以外、よく分からないってことが分かりました。」
「あはは…。」
彼は無能な部下を見る上司の目をしている。……怖い。
「私もよくわからないわ。あの方は私達にほとんど私的な話をしないもの。わかっていることは、強すぎる自分を殺してくれる妖怪を生み出そうとしている、ってことだけかなぁ。」
「…そうですか。だったら、これから家に帰ってその妖怪について調べてきます。なんだか嫌な予感がするので。……では。」
御堂くんはそう言うと、さっさと鳥居をくぐって家に帰ろうとする。
「あ!ちょっと待って!」
ヤマトが慌ててとめる。
「……。はい?」
苛立った感じで彼は振り返る。
「ほらぁ、私あなたの呪い、解いたでしょ〜?……恩は返してちょうだい。」
ずっとニコニコしていたヤマトの顔が急に真面目になった。
「……嫌だと言ったら?」
「別に、だからといって苦しめることはしないわ。あなたがその程度の人間だったと思うだけ。」
御堂くんは少し考えた後、再び鳥居をくぐり戻ってきた。
「……はぁ。話は聞きますよ。」
「ふふ。ありがとう。」
ヤマトはすこし微笑んだ。
ヤマトは本殿の前に座り、改めて話しだした。
「……私、今まで、面倒を見ていた子がいたの。剣人っていう子でね、明治時代の生まれで、1番新しい”失敗作”よ。」
「新人の鬼、ってわけですね。」
茉莉花が言うと、ヤマトは頷いた。
「そう。彼も鬼となって、いろいろ戸惑っていたから、様々なことを教えたり、お話相手になったりして弟のように可愛がっていたの。……だけど、最近パッタリと姿を見なくなって、ちょっと心配なのよねぇ……。」
「最近とは、いつ頃ですか?」
「3年前よ〜。」
「……。」
こ、この鬼、時間の感覚がバグりすぎている。
「それのどこが最近なんですか!」
「あ、あらぁ?最近、ではないのかしら…?なにしろ1000年生きてるものですから。」
「……しかし、3年も経っているとなると、もう手がかりも無さそうですね。」
御堂くんは冷静に対応する。
「そうなのだけど、、、実は彼が姿を消した時期にこんな噂を聞いたの。『木瀬神社の縁日で、鳥居が人を食っている』ってね。」
「木瀬神社…。ここから近くの神社ですね。……木瀬神社の縁日は有名で、普段は参拝客なんてほとんどいないのに、この日だけは1万人近くの人がそこを訪れるんです。」
御堂くんが説明する。
「へぇ。でも、鳥居が人を食う、ってどういうことですか?」
「どうやら、みんな行きの人数よりも、帰りの人数のほうが少ない気がするらしいの。でも、誰もいなくなってないみたいだけどね。」
「それって、七不思議とか都市伝説とかそういう類の奴では…?」
人ってそういう話、大好きだからね。
「でもね、鬼っていうのはみんな術を使えるの。私は草木を操ることができて、剣人の場合は空間を生み出す術を持っていたわ。彼の作り出した空間に入った人間は、こちらの世界の人間から忘れられる、っていう特性があってねぇ。
昔彼に、誘拐にはもってこいね〜なんて冗談を言ったものだけど……。」
「……間違いなく、その噂、ソイツのせいじゃないですか。」
御堂くんの言葉に茉莉花も大きく頷く。
「私もそう思います。ヤマトさんは、なぜこの問題を放置していたんです?」
「……私、ここから出られないの。この神社は私を封じ込めるために陰陽師によって作られたものだから。今は木桜神社なんて表記だけど、元々は”鬼”桜神社だったのよ。」
「……なるほど。この件を調べてくれる人間をずっと待っていたわけですね。」
御堂くんは立って、鳥居の方へ歩きだした。
「ちょ、御堂くん!?」
急に動きだした御堂に茉莉花は慌てて声をかけた。
すると、彼はボソッと呟いた。
「偶然か必然か……。気持ち悪いですが、今日がその、木瀬神社の縁日の日なんですよ。」




